ライブハウスは、音楽好きの社会人サークルだ! 【下北沢BASEMENTBAR】
アンダーグラウンドな音楽カルチャーの聖地とも言える下北沢に構えるライブハウス「BASEMENTBAR」は、今の邦楽バンドのカルチャーの最先端にいる。さまざまなバンド、音楽フリークから愛され続けるこのライブハウスで、ブッキングを手がけるスタッフたちによる座談会を行った。「東京中のライブハウスを探したって、こんなに初心者向けなライブハウスはないんじゃないか?」と、彼らは口を揃える。6月某日、昼間のBASEMENTBARのブッキングたちが一同に介した!
4人を見ていて思ったのは、彼らの仲の良さである。仲間であり、売上を競うライバルでもあるブッキングが4人集まって、こんなに楽しそうにしているライブハウスは、他になのではないだろうか。早速彼らに音楽のこととBASEMENTBARについて聞いてみた。
ーー今、東京や下北沢で「流行している」音楽って、どんなジャンルの音楽なんでしょう?
こっけ:流行は…下北のシーンで言うと、ないと思います。ストリーミング世代の独特さだと思うけど、今は音楽のジャンルがすごく細かくて、いろいろな物をミックスしてやってるバンドが多いよね。
クック:それでいうとあれだわ、俺らが流行。BASEMENTに出てもらって、俺らが目をつけたバンドってみんな売れるもん。例えばTENDOUJIとか。
高木:あとはsunny car washとかね。嬉しくも、どっちのバンドもBASEMENTをホームグラウンドって言ってくれてるしね。
ーーそれらのバンドに共通点って、あるのでしょうか?
かたしょ:ないですね!!
クック:強いて言うなら酒が好きで打ち上げに残るバンド(笑)。
こっけ:俺たちと仲良くなってくれた人たちだよね(笑)。
ーーということは、BASEMENTのブッキングさんは「バンドを育てる人」とも言えるのでしょうか?
高木:それが真髄だよね。いいバンドを見つけて、「このイベントに出れば、お前らが仲良くしたいような奴らに出会えると思う!」っていう場所に招待してあげたり。
こっけ:BASEMENTでのイベントががたたき台になって、大きくなっていったバンドってたくさんいるもんね。KANABOONとかも、初期の頃はずっとうちに出ててくれたり。
クック:そういう先見の明みたいなものは、うちらは持ってますよ。それが多分俺らの仕事ですから。
かたしょ:俺らが好きで推してるバンド見ててくれてたら、「バズリズム出るバンド」とか予想できるようになるんじゃないですかね。
ーーみなさんはどうしてライブハウスに行くようになったんですか?
かたしょ:僕は田舎出身だったので、音楽が大好きだった高校生時代からライブハウスにめちゃめちゃ憧れていて、関東に来た瞬間ライブハウスに遊びに行きました。
クック:それでハマっちゃったの?
かたしょ:ですね…初めて行ったライブハウスで「一般流通してない自作CD」を買いましたからね…。
こっけ:俺は最初に演奏する側として行っちゃったんだけど、「ライブハウスにかっこいいバンドが出てる」って認識がなくて、夏フェスに出れるようなバンドがかっこいいの頂点だと思ってたから、出演はしてても休日に遊びに行くことは全然なかった。
でも、実際BASEMENTで働くようになってから、「ええ!?全然有名じゃないのにこんなにかっこいいバンドいるの!?」ってびっくりしたんですよね。
高木:「有名になる素質がある人に有名になる前に知り合える」っていう感覚も、小さいライブハウスにはあると思う。
ーーみなさんの中で、ライブに来ることのメリットってなんだと思いますか?
かたしょ:音がでかいことじゃないですかね?クラブと同じノリだけど、大音量で音楽にノるのって楽しいじゃないですか。小さい箱だと、よりその音量の大きさは味わえるんじゃないかと思います。
高木:あとはBASEMENTくらいの小さなライブハウスに行く時は、大物アーティストを見る時とは違ってバンドマンとの距離が物理的にも近いです。どうやって演奏してるのか、指一本一本の動きを確認できるくらいの近さ。俺は昔、そういうものの研究のためにライブハウスに通ったこともあったな。
クック:BASEMENTでは、バンドマンやスタッフと遊びに来る人との距離ってすごく近いと思う。演者もお客さんも同じような音楽が好きな友達っていう感覚で、壁もなくみんな集まってるよ。
下手したら終演後に飲みにくるだけの人とかいるもん。ライブハウスに行ってみたいけど、ちょっと怖いなって思ってる人はうちにライブハウス童貞を捧げて欲しい。
ーー初めましての人でも、入りやすいライブハウスということですか?
クック:BASEMENTは「一人でも初めてでも来れるライブハウス」だって言い切れるし、それを目指してます。
イヤホンで音楽聞いてるだけの人、それは「ディズニーランドが大好きでマップをめちゃめちゃ見てて、回り方とか楽しみ方を超研究してるのに、ディズニーランドに行ったことがない」っていうのと同じことですよ!
こっけ:めっちゃ力説するじゃないですか(笑)でも確かに。滝の映像みてマイナスイオン浴びた気になってる感じですね。
かたしょ:とにかくうちは「サブカル系の人って根暗とかクールな人が多いんでしょ?」っていう固定観念からは全く想像できないくらい、スタッフがみんなフレンドリーでキャッチーですよね。
高木:一人で来た子とか、寂しいならどんどん話しかけて来てくれ!って感じ。というか、こっちからもけっこう話しかけたりするしね。
かたしょ:まずはうちらとから仲良くなってもらって、好きな音楽とかの話をたくさんして欲しい。そしたら、「この日のイベントなら、君が好きそうだよ!」とか教えてあげられるし、出演してたバンドのメンバーに話しかけたい!とか、全然つなげるし。
こっけ:あそこにいる彼と仲良くすると、もっとかっこいい音楽たくさん知れるよ!とか言って、すぐ人と人繋げちゃうよね。
高木:大人の音楽同好会みたいな、社会人も学生も入れる、ちょっとオールラウンドなサークル的な感覚で、ライブハウス初心者の子たちにも遊びに来て欲しいな。それか、近所の居酒屋みたいな。飯も出すし。カレーとか。
クック:最初ってなんでも緊張するもんだと思うけどさ。最初から楽しい経験になれば、きっと大好きになれるんだと思うんだよ。だから、初めてのライブハウスがBASEMENTBARだったら、絶対にライブハウスが大好きになると思う。
かたしょ:出会いの場だと思って、いろんな人に訪れてもらえたらいいな。趣味の合う友達もできるし、恋人ができる人もいるし。
こっけ:ひょうきんなライブハウススタッフとも仲良くなれます。駅からは遠いけどみんな遊びに来てみてください。
インタビューをしている2時間、ブッキングたちは本当に楽しそうに音楽のことを話してくれた。ライブハウスとはそういう場所なのだ。好きなことが一緒の人々が集う空間。趣味の友達はネットでも探せるが、ライブハウスというある意味「サークル」のような場では、一つのコミュニティに所属し、その中で友達を探すことができる。
最近は渋谷でもギャルサークルが再熱するなど、あえてリアルで集まる集団が再注目されている。
イヤホンで音楽を聞いていただけのあなたも、ぜひ一度、下北沢BASEMENTBARに訪れて見てほしい。
(取材と文・ミクニシオリ)
【住所】東京都世田谷区代沢5-18-1 カラバッシュビル B1F
【電話】03-5481-6366(16時~)
【FAX】03-5204-9120
【E-mail】basement@toos.co.jp
【URL】http://toos.co.jp/basementbar/