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vol.364(2008.06/30-07/06)

「風が吹けば桶屋が儲かる」をシニカルな視点で描いてみると…
ペンギンプルペイルパイルズ『審判員は来なかった』

 5月にプロデュース公演に新作を書き下ろしたばかりと思いきや、今度は劇団公演と最近大忙しの倉持裕。なのに今回も新作。
 今回はここ最近の夫婦物から一転してちょっとシニカル度高し!? ある架空の小国の誕生からの10年間を通じて、人間の、強者から受ける精神的呪縛を描くという。
 長年に渡る闘争の末、ついに大国「マリム」からの独立を果たした新生国家「パリエロ」。大統領官邸に集う権力者、とある農家の平凡な家族、怪しげな大司教、新しい国技を考えようと体育館に集まった審判団とその選手たち。まるで無縁な場所に生活する人々が、当人たちの知らないところで影響し合い、個人のささやかな私利私欲を求める行動が、巡り巡って国家を繁栄させたり衰退させたりしながら展開する、言わば「風が吹けば桶屋が儲かる」方式の物語。
 持ち前のシニカルな視点で描かれる物語は、どこかの国のことのようでもあり、日常暮らす中で“強者”から精神的な影響を受けまくっている我々のことのようでもあり…。観劇後、「痛いところ突かれたな〜」なんて気分になる人が多そう。

【日時】7月10日(木)〜20日(日)(開演は平日19時、土14時/19時、日14時。水は14時の回あり。開場は開演30分前。当日券は開演1時間より発売)
【会場】シアタートラム(三軒茶屋)
【料金】全席指定 前売4300円/当日4500円
【問い合わせ】ペンギンプルペイルパイルズ(TEL 03-5499-2739〔HP〕http://www.penguinppp.com/
【作・演出】倉持裕
【出演】小林高鹿、ぼくもとさきこ、玉置孝匡、近藤智行、吉川純広/安藤聖/片桐仁


この話のどこが…面白いじゃないか
殿様ランチ『空気正常』

 必要以上に「コメディー」にこだわることなく、日常どこにでもあるシチュエーションとそこで繰り広げられる会話などとの関係性に着目し、その場の勢いや視覚的な笑いではない、ちょっとばかり「考える」笑いが展開される。単独で見るとそう特別面白いことではないのに、場所との不釣り合いに代表される“リズムの乱れ”による面白さ。例えばお葬式のような厳かな場でしでかしてしまった失敗は大したことでなくても変に笑いを誘ったりするように…。ゲラゲラ笑うような類ではなくニヤニヤ笑えるお芝居。今回はそんな彼らの特性がもっとも発揮されそう。
 とある怪しげな鉱山に働く者たちがいた。彼らはごく普通の一般に暮らしている人々と比べると明らかに、なにかしら「異常」な存在だった。しかし彼らにはそんな自覚はなかった。なぜなら物心がついたときからそうだったし、特に不便を感じたこともなかったから。つまり異常だと感じる理由がなかったし、「正常」とはなんなのか知らなかったから。
 今まで空気のように受け入れていた「正常」が、さりげなくひっくり返ることによって起こる、ほんの少し異常な物語。

【日時】7月11日(金)〜20日(日)(開演は月火木19時30分、水金土14時/19時30分、日14時/18時。※11日(金)は19時30分の回のみ。開場は開演30分前。当日券は開演1時間より発売)
【会場】サンモールスタジオ(新宿御苑前)
【料金】日時指定・全席自由 前売2800円 当日3000円。※11日〜13日の全公演および16日14時と 18日14時の回は前売・当日共2500円
【問い合わせ】殿様ランチ(TEL 090-1319−1648〔HP〕http://www.tonosamalunch.com/
【脚本・演出】板垣雄亮
【出演】杉岡阿希子、竹内礼美、平塚正信、南あゆ美、藤堂敦、小久保剛志、板垣雄亮/服部弘敏、柳さおり/瀧川英次

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vol.363(2008.06/23-06/29)

過激な見た目の裏で繰り広げられる緻密でリアルな会話劇
smartball『Kiss me, deadly』

「セックス&ドラッグ&ロックンロール」を掲げ、過激なストーリーを展開することから、見た目の派手さに目がいきがちだが、実はそれに留まらない緻密な脚本によるリアルな会話劇が繰り広げられる。昨年は第2回公演にして三鷹市芸術文化センターの名物企画「MITAKA “Next”Selection」に抜擢されるなど、作・演出を務める名執健太郎への期待値は相当高い。
 両親を失くした三人姉妹が暮らす湘南の海の近くの一軒家。そこのガレージに出入りするのは長女の取引相手、近所の幼なじみ、三女の彼氏たち、女ヤクザ、ジャンキー、ギタリスト…。ちょっとした揉め事はありながらも、それなりに平穏な日常だったのだが、最近少しまずいことになってきて…。
 これまでは「恋する切ないオトコ心」を描いてきたが、今回は一転、清らかで後ろ向きで、でも愛すべき女たちのお話を描く。

【日時】7月4日(金)〜14日(月)(開演は平日19時30分、土日14時/19時。水は14時の回あり。14日(月)は19時開演。開場は開演30分前。当日券は開演1時間より発売)
【会場】王子小劇場(王子)
【料金】日時指定・整理番号付・全席自由席 前売2800円/当日3000円/高校生以下 2500円(劇団のみ・前売・当日共・当日要学生証)
【問い合わせ】YeP(TEL 03-3338-1575)
【劇団HP】http://smartball.yep-web.com/
【作・演出】名執健太郎
【出演】白神美央、遠藤留奈、宮嶋美子(風琴工房)、深谷由梨香(柿喰う客)、石井舞、石澤彩美、大塚麻央、富田恭史(jorro)、河西裕介(国分寺大人倶楽部)、尾倉ケント(アイサツ)、後藤剛範(害獣芝居)


なんだか分からないけど面白い
あひるなんちゃら『父親がずっと新聞を読んでいる家庭の風景』

「ユルい」とか「脱力系」とか言葉にするのは簡単だが、実際にやってみるのはとても大変。なんかあるかな〜と思わせといてホントになにもないというのはもっと大変。人は何かと意味を求めたがるから。ここまで16回もこういうスタンスで公演を続けていると、それ自体に意味が出てきそうなものだが、そういう気配もなし。本人たちに「第○回公演」という認識もない。
 定年して家で新聞ばかり読んでいる父親、ニートな長男、長女は自称大学生(はたから見ると限りなくニート)、家計は唯一働いている二女が支えている。ちなみに母親は後妻で子供たちより若いのだが、そこそこうまくやっている…。そんな家庭のリビングにある日、見たこともない人が平然と座っている。しかし一家は一向に動じることもなく、危機感ゼロで…。
 この現代では考えられない家庭のたたずまいは、古きよき日本の家庭の姿なのか、はたまた極端に他人への興味を失った超現代の家庭の姿なのか…。なんて家族論的な話は一切なしに、家族の日常を定点観測的に描く作品。
 なんだか分からないけど面白かった、という読後感が心地よい。

【日時】7月3日(木)〜8日(火)(開演は木金月19時30分、土日火15時/19時。開場は開演30分前。当日券は開演45分前より発売)
【会場】サンモールスタジオ(新宿御苑前)
【料金】日時指定 予約あり 2000円/予約なし 2500円
【問い合わせ】あひるなんちゃら(TEL 03-5945-3533〔HP〕http://www.ahirunanchara.com/
【脚本・演出】関村俊介
【出演】黒岩三佳、根津茂尚、関村俊介、青木十三雄(ヒューマンスカイ) 、異儀田夏葉(ヨシロォの夏は夢叶え冒険団) 、篠本美帆(チーム下剋上) 、佐藤達(劇団桃唄309) 、宮本拓也(MCR) 、日栄洋祐

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vol.362(2008.06/16-06/22)

毎年恒例!!三鷹市芸術文化センターの太宰治企画
東京タンバリン『華燭』

 今年で生誕99年、没後60年を迎える太宰治。晩年を過ごしたこともあり、三鷹は太宰とは縁の深い地だ。太宰は三鷹市芸術文化センターの近くにある「禅林寺」に眠っており、命日であり生誕日でもある6月19日の桜桃忌近辺にはいまだに墓参者の姿が後を絶たない。
 三鷹市芸術文化センターは2000年から「太宰治朗読会」を、2004年からは「太宰作品をモチーフにした演劇公演」という企画公演を続けている。
 そして今年は東京タンバリンが公演を行う。主宰の高井浩子は「何が本当で何が嘘なのか」とか「意識と無意識の中で揺れ動く人間の闇」を描くことにこだわり続けている。片や太宰の作品は、日本人の精神に必ず抱合されている「弱さ」を否定的でないものとして、表現しているところに魅力があるといわれる。
 リアルな現代口語演劇のスタイルを取るタンバリンは、そういった「人間の闇」といった部分をごく自然にサラリと表現する。その点、太宰は殊更堂々と「人間の弱さ」を描き続けた。
 この対極にある存在によって太宰は今年も再確認される。そして同時に、この相反する2つの個性を丸ごと飲み込む演劇の多様性をも確認する作品となる。

2006年三鷹公演「立待月」より。撮影:青木司

【日時】6月27日(金)〜7月6日(日)(開演は平日19時30分、土15時/19時、日15時。水は15時の回あり。月曜休演。開場は開演30分前。当日券は開演1時間より発売)
【会場】三鷹市芸術文化センター 星のホール(三鷹)
【料金】全席指定 前売3000円/当日3500円/高校生以下:前売り、当日とも1000円
【問い合わせ】東京タンバリン(TEL 03-3397-0193〔HP〕http://tanbarin.sunnyday.jp/#
【作・演出】高井浩子
【出演】今井朋彦(文学座)、井上幸太郎、佐藤誠(青年団)、瓜生和成、森啓一郎、坂田恭子、島野温枝、ミギタ明日香、遠藤弘章、大湯純一、大田景子、塩入美喜子、田島冴香


1年間の渡英を控えた長塚圭史の新作
パルコ・プロデュース『SISTERS』

“家族”をテーマに3年ごとにパルコ劇場で新作を発表している長塚圭史。今回は親子、姉妹、夫婦とさまざまな角度からこのテーマを深く抉り出す。
 ホテルとレストランを切り盛りしていた女主人が亡くなった。代わりに夫であるシェフの優治がホテルを経営していたが、客は遠のき、料理の評判もいまひとつ。そこで優治の従兄弟で、東京でシェフをしている信助にレストランの新メニューを作ってもらうよう依頼する。新婚の信助は妻の馨とホテルにやってくる。ホテルには女主人の兄で小説家の神城が娘の美鳥とひっそりと暮らしていたのだが、美鳥が馨に近づくにつれ馨の封印された過去が徐々にあらわになってくる――。
 9月から文化庁・新進芸術家海外留学制度で渡英する長塚。少なくとも向こう1年間は彼の作品は見られないわけだから、ここは万難を排して駆けつけたいところ。

【日時】7月5日(土)〜8月3日(日)(開演は月水金19時、木土14時/19時、日14時。※6日(日)は19時、21日(月)は14時開演。火曜休演。開場は開演30分前)
【会場】PARCO劇場(渋谷)
【料金】全席指定 8400円/プレヴュー公演(7月5、6日)7500円
【問い合わせ】PARCO劇場(TEL 03-3477-5858 〔HP〕http://www.parco-play.com/
【作・演出】長塚圭史
【出演】松たか子、鈴木杏、田中哲司、中村まこと、梅沢昌代、吉田鋼太郎

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vol.361(2008.06/09-06/15)

新世代の作家とベテラン演出家の刺激的な出会い
シリーズ・同時代Vol.1『鳥瞰図−ちょうかんず−』/Vol.2『混じりあうこと、消えること』/Vol.3『まほろば』

 新国立劇場による新世代の作家と豊富な経験を持つ演出家とのコラボレーション企画〈シリーズ・同時代〉が幕を開ける。
 こういう企画でなければなかなか顔をあわせないだろうと思われるジャンルと世代のギャップから生じる化学反応が興味深いが、その期待を裏切らない組み合わせが揃った。
 先陣を切るのは劇団サスペンデッズを主宰する早船聡の作品を文学座の松本祐子が演出する『鳥瞰図』。早船の独特の言葉遣いや笑いのセンスを松本がどう料理するのかはもとより、ベテラン女優の渡辺美佐子の出演も目を引く。
 27日からの第2弾は今春の岸田戯曲賞を受賞した五反田団の前田司郎の新作を白井晃が演出する『混じりあうこと、消えること』。ミクロの世界を丹念に作り上げていく印象の強い前田とストレートプレイから音楽劇まで、ジャンルを越えてあらゆる意味でダイナミックな演出を見せる白井の組み合わせは特に激しい化学反応を期待させる。
 第3弾には蓬莱竜太と栗山民也による『まほろば』。“男芝居”に定評のある蓬莱が初めて女性のみの作品を書き下ろす。

〈鳥瞰図〉
【日時】6月11日(水)〜22日(日)(開演は平日19時、土13時/18時、日13時。月曜休演。※18・19日は14時開演)
【作】早船聡
【演出】松本祐子
【出演】渡辺美佐子、浅野和之、野村佑香、八十田勇一、弘中麻紀 浅野雅博、佐藤銀平、品川徹
〈混じりあうこと――〉
【日時】6月27日(金)〜7月6日(日)(開演は平日19時、土13時/18時、日13時。月曜休演。※2日は14時/19時開演)
【作】前田司郎
【演出】白井晃
【出演】國村隼、橋爪遼、初音映莉子、南果歩
〈まほろば〉
【日時】7月14日(月)〜21日(月・祝)(開演は月火金19時、水木14時/19時。土13時/18時、日13時。※21日(月)は13時開演)
【作】蓬莱竜太
【演出】栗山民也
【出演】秋山菜津子、中村たつ、魏涼子、前田亜季、黒沢ともよ、三田和代
【会場】新国立劇場 小劇場(初台)
【料金】A席5250円、B席3150円
【問い合わせ】新国立劇場ボックスオフィス(TEL03-5352-9999〔HP〕 http://www.nntt.jac.go.jp/

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vol.360(2008.06/02-06/08)

ついに!! という力みもなく駅前劇場に初登場
ハイバイ『て』

 本人たちの意思に反して、昨年から大忙しのハイバイと岩井秀人。ついに!! という力みも特になく、駅前劇場での公演となる。
 今回は「ある家族の再生チャレンジ」の物語。今までは「16〜20歳まで引きこもっていた」という実体験が生かされていたと思われる作品が多かった。家族ものにしても、ひきこもりの矯正プログラムを題材に描いた作品のように、「子供」からの目線を主とした「対母」「対子供」という直列の関係の作品。または、突然失跡した天才アーティストの成れの果てを描いた、岩井の分身としてとらえても差し支えなかろうと思われる作品など。
 しかし、今回は結婚、第一子の誕生という経緯を経て「育てる側の都合」を知りつつある岩井が「育てる側」の視点を取り入れて描く。今までが個人戦だとすると今回は団体戦のイメージか。
 現在、「家族」という単位で生活している人は年々減っている。「家族」のあり方もひと昔前とは全然違っている。そんななかで、ここ数年テレビで見かける家族ドラマは、大概はウソくさい。妙に熱かったり、綺麗事ばかりだったり、もしくは押し付けがましかったりというものばかり。ここではそういうドラマチックという名の「こっ恥ずかしい」家族ドラマにはならないだろうからご安心を。

青年団自主企画Vol.37 「おいでおいでぷす」より 撮影:岩井泉

【日時】6月18日(水)〜23日(月)(開演は水〜金19時30分、土日19時、月18時30分。金〜日14時30分の回あり。開場は開演30分前。当日券は開演1時間前から発売)
【会場】駅前劇場(下北沢)
【料金】全席整理番号付自由席 前売2800円、当日3200円
【問い合わせ】キナダ(TEL 090-9393-0809
【劇団HP】 http://hi-bye.net/
【作・演出】岩井秀人
【出演】金子岳憲、永井若葉、岩井秀人/能島瑞穂(青年団)、町田水城(はえぎわ)、平原テツ、吉田亮、高橋周平、折原アキラ、上田遥、猪股俊明、古舘寛治(青年団・サンプル) 


笑って泣いて…昭和のニオイが心地良い
動物電気『すすめ!! 観光バス』

 ただひたすらに「オモシロ」を追求していたら、あっという間の結成15年。各役者のキャラクター、主宰の政岡泰志の作り出すゆるく温かな雰囲気などをみると、動物電気はすでに“ジャンル”になった感すらある。なかなか真似のできない世界。
 今回の題材は世の中の縮図としての「現代の家族」。年老いた両親と30過ぎて独身の息子が、すたれたリゾート地を訪れる。あんまり楽しいことが起きなさそうなそんな家族旅行にも、出掛けてみると、お互いに思いもよらぬ発見をするのであった。この先、そんなにいい事が起きそうにない人たちの、今だけは、幸せな風景を描く。
 いつもの「お約束ギャグ」はもちろん、初日の幕が開くまで彼らの「オモシロ」追求の旅は続く。昭和のニオイが心地よく、今回も笑って泣けるお話。

【日時】6月6日(金)〜15日(日)(開演は月〜金19時30分、土日14時30分/19時。8日(日)は14時30分の回のみ。開場は開演30分前。当日券は開演1時間前から発売)
【会場】駅前劇場(下北沢)
【料金】自由席 前売3000円、当日3300円(整理番号付)/指定席 前売3500円、当日3800円
【問い合わせ】動物電気(TEL 090-1734-4403 〔HP〕http://www.doubutsu-denki.com/
【作・演出】政岡泰志
【出演】小林健一、辻修、森戸宏明、伊藤美穂、鬼頭真也、松下幸史、森山夕子、姫野洋志、政岡泰志、田中あつこ(バジリコFバジオ)、谷部聖子ほか

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