今週のTOKYO HEADLINE
vol.369
(2008.08/04-08/10)
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INTERVIEW vol.369

ドラマ「白と黒」主題歌を歌う 宮古島出身のニューカマー

砂川恵理歌

ジャンルを問わず、“いい歌”や“いい歌を歌う歌い手”たちを
輩出している沖縄から、また新しいアーティストが登場した。
宮古島出身の砂川恵理歌がその人だ。「歌が好きだから」という理由で、
歌手を目指すも、挫折。その夢をあきらめた時、今度は歌のほうから
彼女のもとにやってきたというエピソードを持つ。いうなれば
“歌”に選ばれたシンガーなのだ。
先日、セカンドシングル「ひかり」をリリースした。
歌劇「トゥーランドット」の名アリアをカバーした大作で、
ドラマ「白と黒」の主題歌にも抜擢。注目の彼女にインタビューした。

元気になっていくおじいとおばあから
歌の力のすごさを改めて感じた

砂川恵理歌メイン
 歌に選ばれた人──。砂川恵理歌が歌い手になった経緯を聞くと、そう思わずにはいられない。歌が大好きで、「のど自慢大会あらしだった」という両親の元に生まれた。演歌が中心とはいえ、幼いころから自分の身の周りにはいつも音楽があって、テレビで八代亜紀の「雨の慕情」が流れれば、一緒に手振りをしながら歌っていたという。そんな彼女は、高校卒業後、歌手を目指したことがあった。

「島を出たい!そんな理由で上京して、歌が好きだから歌手になれたらいいななんて思っていました。ただ、どうすればいいかとかまったく分からなかったので、音楽に関係ある場所だからもしかしたら情報が入るかもしれないって(笑)、CDショップで働いてました。でもどうにもならなくて、歌はとりあえず横において沖縄に帰ったんですよ。そしたら、歌がやってきたんです。びっくりしましたね」

砂川恵理歌サブ1
Profile 砂川恵理歌(すなかわ・えりか)…沖縄県宮古島市出身。2006年に「Heart Drops」でメジャーデビュー。民謡からソウルまで歌いこなす豊かな歌声を持つシンガー。地元沖縄では実力派シンガーとして知られており、県内のCM曲を多数担当。デビュー以前の2005年には「NHKのど自慢嘉手納町大会」でチャンピオンになった経歴もある。リリースなど最新情報はオフィシャルウエブサイト
「自然な流れというか、あの時は導かれている感じだった」と、歌が彼女のもとにやってきたときのことを懐かしそうに振り返る。

「そのとき私は介護の仕事をしていたんです。リハビリを担当するセクションにいて、もともと歌が好きというのもありますけど、発生や呼吸の練習になるという実践的な目的で、おじいさんおばあさんと一緒に歌をうたっていたんです。最初は、私が歌うんですが、なじみの曲になると、普段は感情の動きが分かりずらい人たちの顔に表情が出てきたり、一緒になって歌いだしたりして。そういうのを見ながら歌の力ってすごいなって改めて感じました。それに、歌をうたうことで何かためになることができたのかもしれないと思うととてもうれしかったです。ただ、もう一度歌手になりたいという夢を意識することになるのはもう少しあとになってからになりますけど。

 ある時、院内でインフルエンザが流行したことがあったんです。みんな高齢の方ですからかかってしまった本人は大変だし、それを介護するスタッフ、もちろん私も含めてなんですが、緊張感もあるし、どんどん追い詰められていく。そんな状態が2カ月ぐらい続いて、ふと気づいたら、1人として笑っている人がいなかったんです。これって、良くないよなって思って、私にできることは何かないかな、みんなが元気になる方法はないかって考えていたら、NHKのど自慢大会への参加者募集の告知がやけに目に飛び込んできたんですよ。あまり意識していなかったんですけど、何度も見るし、よく分からないけどもしかしたらこれが解決法かもしれない!と思って出場しました。テレビに出たらみんな喜ぶかなって、そんな軽い気持ちだったのに、予想以上に喜んでくれて。それがきっかけになって、おじいさんやおばあさんとその家族の方だとか、スタッフにしてもみんなコミュニケーションがうまく行くようになってきて、雰囲気が変わったんです。それを見たときに、私が歌うことで何かできることがあるのかもしれないって思えました。あれがなかったら、今の私はありえないですね」

 歌を歌うことに再び向かい合った彼女は、オーディション番組「歌スタ!」にも出演。そしてメジャーデビューのチャンスをつかんだ。2006年にデビューシングル「Heart Drops」をリリース、昨年10月にはミニアルバム『笑』を発表した。民謡やポップス、R&Bまでジャンルにとらわれずに歌いこなしてしまう豊かな歌声で、メディアにも注目されるシンガーになった。彼女を取り巻く状況はいい。

  先日、セカンドシングル「ひかり」を発表した。この作品は、彼女にとって飛躍の作品。今ではたいていの人が口ずさむことができるであろう、プッチーニの歌劇「トゥーランドット」のなかの名アリア「誰も寝てはならぬ」を大胆にも日本語でカバー。この曲はドラマ「白と黒」(フジテレビ系 月〜金13時30分〜)の主題歌としてオンエアされている。
「ドラマの主題歌として『トゥーランドット』をカバーすることは決まっていたそうなんです。ただ、歌のレンジが広い曲なので、それを歌えるアーティストさんを探されていたそうで、候補に加えていただいて…光栄にも私を選んでいただきました(笑)。

 この曲を歌うに当たって、DVDや舞台などで『トゥーランドット』を見たりしたんですが、ストーリーはさておき、最後まで分からなかったのは、トゥーランドット姫の気持ちでした。……自分と結婚しようと言ってくれる人たちにどうして死を与えなければならなかったのか、そういった凝り固まった心がどうやって解けていったのかとか、理解の範囲を超えていたので。自分のこれまでの恋愛から引き出せる部分もないですからね(笑)。なので、『白と黒』の台本もいただいて、2つのストーリーを照らし合わせながら女性の心の動きを追っていきました」

 自分自身と「トゥーランドット」、そしてシングル「ひかり」を近づけて行く作業のなかで、愛や恋についても考えた。

砂川恵理歌サブ2

「愛って何だろう、恋ってなんだろう、愛と恋の違いはなんだろうとか。恋人と愛人っていうのも違うし。恋しいとか、愛しいとか、1つ違うだけで意味も印象も違うんだなって。それと同時に、自分の恋愛観というか、自分のなかにどういう願望があるんだろうっていうのも考えていって、結局は運命の人を探してるんだろう、自分のことをすべて分かってくれるそんな人に出会いたいんだって理解できました。『トゥーランドット』でも、『白と黒』でも、この『ひかり』でもその運命の人は恋愛の対象ですが、突き詰めていくと、一個の人間に行き着くのかもしれないなとも思ったり。そうしたときに、それぞれの世界がつながりました。いい曲に出会えたなって思います。今は彼氏がいないので(笑)、私が探し求めているのはそういう男性、そういった関係にあこがれを持ちながら、そういう人に会える日を楽しみにしながら歌っていますが、これからこの歌を何度も歌っていくなかで、歌うほどに経験が追いついていって、歌も私も育っていくんだろうなって思います」

 インタビューを進めていくなかで、「歌をうたいたいだとか、歌い手になりたいだとか、歌をうたってみんなの喜ぶ顔が見たい──そういうふうな生き方をしたいと声に出せるまでに時間がかかりました」と、砂川は言った。他のアーティストたちと比べれば、ここに至るまで時間はかかったかもしれないが、それゆえに彼女はどんなニューカマーよりも歌の持つ力や歌えることのありがたみを知っている。




(本紙・酒井紫野)

New Single 「ひかり」
カップリング「十九の春」は沖縄・八重山、奄美地方を中心に歌いつがれている歌謡曲。「介護の仕事をしているときに、この曲が大好きなおばあがいて、歌うと少女の顔に戻るんです。あの表情を思い出しながら、おばあになった気持ちで歌っています」。ライブでも人気の曲。

よしもと アール・アンド・シー 発売中1050円(税込)


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