今週のTOKYO HEADLINE
vol.369
(2008.08/04-08/10)
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INTERVIEW vol.369

ポップ&キュート、そしてサイケデリック〜中毒者続出のダンスカンパニー

珍しいキノコ舞踊団

ダンスカンパニー「珍しいキノコ舞踊団」が公演「珍しいキノコ大図鑑」を行う。 キノコと言えば、おいしいのにダイエットにいいだとか、キャラクターになっちゃうほど見た目がカワイイのにも関わらず毒を持っているとか、矛盾を孕んだ魅力があるが、踊るキノコもまた同様。おもしろいけどカッコよくて、ポップでキュートだけれど陰もあって……。主宰・伊藤千枝からその魅力を探った。

キノコベストな“大図鑑”

珍しいキノコ舞踊団
主宰の伊藤千枝。稽古場にて。写真・加藤大毅
 横浜にある、急な坂スタジオ。ダンスカンパニー「珍しいキノコ舞踊団」のメンバーは、来る本番に備えて追い込みの真っ最中だ。入念なウオーミングアップをしてから、通しリハーサル。床を這ったり、足の間をくぐってみたり、急に歌いだしたり……。殺風景なスタジオが、彼らのアクションで、みるみるカラフルで“珍しい”世界になっていく。キノコこと、「珍しいキノコ舞踊団」の独特の世界観が作り上げられていく瞬間だ。

  いわゆるコンテンポラリーダンス。現在、数え切れないほどのカンパニーがあって、同じ数のスタイルがあるなかで、キノコのダンスは少し“珍しい”。

「始めてからしばらくはダンスと認めてもらえなかったです」と、主宰の伊藤千枝は振り返る。「コンテンポラリーダンスって、スタイリッシュでカッコよくてっていうのがあるじゃないですか。私たちも黒い衣装で…ま、衣装の色かよって話ですけど(笑)…カッコいいとされるコンテンポラリーダンスという意味での黒い衣装だとか、暗い照明とカッコいい音楽で踊ってたりもしていたんですけど、もともと竹中直人さんとか、ラジカル(ラジカル・ガジベリビンバ・システム)が好きだったので、そういう要素を入れていきたかったんです。そしたら、踊りが下手だったのでそっちの要素が目立ってしまった(笑)。でも、長いことやってればいいことがあるもんで、“どうやらあの人たちずっとダンスだって言ってるし、ダンスでいいんじゃないか”って、やっと入れてもらえました」

  スタートは18年前。伊藤がまだ大学在学中に結成した。周りが就職活動を始めるなか「好きだからやりたい!」という、シンプルな理由で始まった。

「立ち上げ当初はいろいろなことが大変でした。何も知らなくて、チラシ1枚作るのも一苦労。劇場の取り方も分からなくて……(笑)。それでも、やりたいんだっていう気持ちだけは強かったから、無駄にけんかしたり、疲れたりすることも多かったです。18年が経って、昔のビデオを見たりすると、甘くなってきてるなと思うところはあります。もっとやんちゃだった!って」 伊藤はそういうが、現在の作品を見ても、「好きなものをやりたい」「好きだからやる」といった初期衝動は作品からにじみ出ている。

  8日から10日まで、「珍しいキノコ大図鑑」をル テアトル銀座 by PARCOで公演する。18周年を迎えるキノコの集大成といい、これまでの作品のなかから選りすぐりのシーンを集めたベスト版的な内容だ。「ずっとこれをやりたかった」と、伊藤。

「私たちを含めて、国内のダンスカンパニーの状況を見てみると、1時間ぐらいの大作で公演するチャンスはあっても、15分ぐらいの小品の場合、発表する機会ってほとんどないんですよね。大きなテーマがあって、そこに則ってシーンを創る大きな作品と違って、小品は音楽が好きだから振りをつけたいだとか、こういう動きをしたい!っていうスポットでできる魅力がある。それを発表できる場所がないなら、自分で作っちゃえ、と。同時に、これまでの作品のなかで、あのシーンだけやりたいって気持ちがあったり、周りからもあれをもう一回見たいねっていう声があったりして、(ベスト的なものも)いいかなって。作品ごとにいろいろなキャラクターが登場しているので、例えば宇宙服着たりとか(笑)、舞台上ではそういったキャラクターの同窓会が開かれています。ただ、最近様子が変わってきていて、まずおもしろくないといけないような方向になってきていて、おなかいっぱいになりすぎやしないかと心配です(笑)」

  違う時代に作られた作品を同じステージにのせる作業もまた心配の種。

珍しいキノコ舞踊団サブ
「20シーンぐらいあるんですが、ベースは同じ自分のダンスではあるんですけど、若かった私、今の私って、もののとらえ方が違うんですよね。大事な部分は残しつつ、みなさんに提供できるように手直しをしながら、今の私が昔の私に“本当はこれがやりたかったんでしょ”ってことを教えてあげるっていう、そんな状態です。だから、実のところ、オリジナルのままでやるのはほとんどないかも。でも、原型はとどめているので、前に見ていただいた方には“あのシーン!あの曲!”って楽しんで見てもらえると思います。おなかを抱えて笑いながらやってますので、ぜひたくさんの人に見てもらえたらいいですね」

  笑いながら作りあげたステージは、好きなものをやること、そして継続することの大切さを教えてくれる。




(本紙・酒井紫野)



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