今週のTOKYO HEADLINE
vol.371
(2008.08/18-08/24)
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INTERVIEW vol.371

『20世紀少年』

香川照之

約300人のオールスターキャストを揃え、日本映画界初のシリーズ3部作構成というモンスタープロジェクト『20世紀少年』第1章がついに幕を開ける! オールスター、豪華キャストという以上、この俳優は欠かせない――香川照之。『20世紀少年』のキーワードを軸に、その魅力に迫る!

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キャストが決まってから読んだから、どうしてもヨシツネに注目しながら読んでました。自分がヨシツネ役をすることを知らなかったら、また違うんでしょうけどね。その前に読んでいたら…神様役なんておもしろそう。あとは万丈目とか…放っておくとなぜか爺キャラに走るんですよ(笑)
撮影・加藤大毅
Keyword(1) 「20世紀→21世紀」
  デビューは1989年の国民的大河ドラマ「春日局」。当時の“若手俳優”香川照之は…。
「生意気でしたね、間違いなく(笑)。もし僕が先輩だったら話しもしないでしょうね、“実力も無いのにダメだな、コイツ”って。当時の先輩や監督に、そう思われていた自信が、確実にありますから(笑)」

  そんな“生意気な若手”は、着実にその才能を開花させていった。しかし、そこには大きな転機があったという。それはチアン・ウェン監督の中国映画『鬼が来た!』で主演したときのこと。

「あの作品と出会ったのは、まさに20世紀から21世紀へ移り変わろうとするころで、僕の役者としての転機にもなりました。あの作品で、俳優という仕事への見方が変わった。映画の現場では、いかに俳優を楽にさせるかという方向になりがちなんです。“涼しいところに行ってください”とか“ちょっと休んでて”とか。でも、そういうものを全部跳ねのけて、自ら苦に飛び込むことによってこそ、芝居は生まれるんじゃないか…あの作品でそう思わせてもらったんです。というのも中国の現場では、日本のような俳優の扱い方を一切しない。それを初めて経験して、大変だけど演じるのにはこのほうが楽だ、と思ったんですよ。もちろん、苦労すればいいというのが俳優の絶対的な定義だとは思いません。僕の場合はそれを楽に感じたということです。僕は、苦しくもないのに苦しい気持ちを絞りだし、疲れてないのにハアハアいったりすることの不自然さを、ずっと感じていた。だったら、本当に疲れているほうが演じるのは楽でしょう、フリをしなくていいんだから」

“フリを本当に見せるのが演技だ”などという大上段を構えない。

「芝居は難しい。観客はそれがウソだと分かっているんですから。ただ、そこにもいいウソと悪いウソとがあって、作品の中で前者をいかに多くするかが、プロの俳優の仕事だと思うんです。ウソの芝居なら、幼児でもやっていますよ。“お腹痛いー、抱っこしてー”って(笑)。もともと人間はそういうことを日常的にやっているんです。そこをプロならどうするか」

Keyword(2) 「神様」
  ときに現場では“神様が降りて”くる…奇跡的な完成度に至ることがある。“映画の神様”を呼ぶ方法とは…。

「それは、僕のなかではハッキリしていることなんです。例えば、イチロー選手に“野球の神様の定義”を尋ねたらきっとおもしろいと思いますよ。つまり“野球の神様”を問うことは、つきつめていくと“野球とは何なのか”ということになるんだと思う。僕のなかで、映画とは何なのか…。改めて考えると、映画とは地球の営みに対して無駄なものですよね。たくさんの照明を使ったり、食べもしないご飯を作ったり…全部“フリ”。もし政治が無くなれば国が立ち行かなくなるし、農業や漁業が無くなれば食べるものが無くなる。でも映画が無くなっても人は生きていけるでしょう。そういう意味では、映画って無駄なものですよね。そうすると、いかに無駄なことを真剣にやるかということにかかってくるのだと、僕は思う。カメラに映らない部分でも、水に浸かる場面なら本当に浸かる。寒い中で薄着をしている場面なら本当に薄着をする。そういう無駄を1つでも多くやっていると、神様が“お前、そんな無駄なことをやってるのか、じゃあちょっと与えてやろう”って降りてくるような気がする。つまり、効率の良いことを一切しないということなんです。でも日本人は、頭が良くて何千年も昔から効率を求めてきた民族ですから…なかなかね。でも一人バカをやるヤツがいると、次の一人に飛び火するんです。“うわ、あんなバカなことを真剣にやってる、俺もやろう!”って(笑)。例えば汗をかくというシーンのために、照明を調節している間に僕がえんえんと走っていたりすると、照明係の人も“俺ももっと違う何かをやってみよう!”って。役者というのは、現場でも絶えず人から見られている存在。それがバカなことを一生懸命やっていると、みんなに伝染していくものなんですよ。しまいには“バカ勝負”みたいになったりしてね(笑)」

  苦と楽、どんな仕事でもつねに選択肢があるもの。苦に挑み続ければ、いつか“神様”が降りてくる…

「降りてこなくてもそれでいい。そのこと自体が十分美しいんだから、本当は神様に頼ることはない。そこに美学があるんじゃないかな」

Keywor(3) 「よげん」
  これまでにも共に仕事をしてきた堤幸彦監督。香川から見ると “未来を見ている人”だという。

「堤監督は、まさに“21世紀の人”。無駄なことを全部省いていこうという、僕とは正反対の人ですね(笑)。でも堤さんは無駄を省いた時間で、もっと大きな無駄をしよう、という人なんです。監督と仕事をするのは『明日の記憶』から3年ぶりなんですけど、わずか3年の間に、監督が技術的にも大きく進化しているのがはっきりと分かる。監督は21世紀どころか22〜23世紀まで見ているような気もします。でも、進み過ぎてぐるっと一周しちゃって、正反対のところにいた僕と堤さんが同じ目線になることがあるんです。おもしろいですよね」

  数多くの監督から大きな信頼を寄せられる。その理由の一端を、感じることができた。


(本紙・秋吉布由子)

『20世紀少年』
監督:堤幸彦 出演:唐沢寿明、豊川悦司、常盤貴子、香川照之他 東宝配給/2時間22分/8月30日(土)より全国東宝系にてロードショー  http://www.20thboys.com/
©1999, 2006 浦沢直樹 スタジオナッツ/小学館
©2008 映画「20世紀少年」製作委員会



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