今週のTOKYO HEADLINE
vol.374
(2008.09/08-09/14)
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INTERVIEW vol.374

WOWOWドラマ 『シリウスの道』 主演

内野聖陽

 藤原伊織原作の『シリウスの道』が、WOWOWでドラマ化された。大手広告代理店を舞台に、降ってわいた大規模な仕事と向き合う中、ひとりの男が封印した自分の過去へと導かれていく。企業ハードボイルドの傑作として名高い同作で、主人公の辰村祐介を演じたのは内野聖陽。原作の魅力、役の魅力、そして演技者としての取り組みなどを語る言葉に、プロフェッショナルの奥深さが見えた――。

「無言で台本と向き合う時間が、一番クリエイティブで豊かな瞬間なんです」

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profile
うちの・まさあき 1968年9月16日 神奈川県生まれ。文学座所属。
10月3〜31日までは、舞台『私生活』(共演:寺島しのぶ 中嶋朋子 橋本じゅん【会場】シアタークリエ【料金】全席指定1万500円・税込)に出演。映画『252 生存者あり』(共演:伊藤英明)が12月6日に公開される。
撮影・加藤大毅
  約1カ月半前に行われた制作会見の席。内野は原作と台本の素晴らしさにふれ、「力作になる予感がする」と話していた。9月14日にWOWOWで放送される『シリウスの道』は、2時間半の大作。ドラマというより映画の世界観がすでにそこにはある。

「主人公の辰村がいる広告業界をまったく知らなかったせいもあるんですけど、巨大な広告代理店という世界で、同じ会社の人間が足の引っ張り合いをしているという図が非常に興味深かったというか、かなりショックも受けて、どんどん小説の世界に引き込まれていきましたね。それと同時に、戦う相手が内部にいるところで頑張る人間というのが非常に新鮮であり、そんな中で結果を求められながらも、人間を愛し、部下を愛し、同僚を愛するという、人間の思いを大事にしながら生きてる辰村という男に惹かれましたね」

  意外にもハードボイルド作品への出演は初だが、内野が演じた主人公の辰村は、他の役者が演じることをまったく考えられないほどのハマリ役だ。

「(共演した)真矢みきさんも“原作から出てきたみたい”とおっしゃってくださったけど、うれしいですね。まあ、どこか昔かたぎの男というか、古き良き時代の男っぽいところが俺にハマっちゃったのかなって(笑)。部下に“誇りを持って生きろ”みたいなことを言うセリフもありますけど、一本気で、間違ってると思ったら徹底的にこびずに、殴り合いになっても真正面から戦う男って今はあまりいないと思うんですよ。もっと頭脳派で、もっとスマートな男性が多くなった中で、辰村の破れかぶれな潔さみたいな生き方がとても俺にはヒットしていて、こういうジャンルももっとやってみたいという気になりましたね。俺自身も、スマートに頭脳で生きてる男より、不器用でも大切なものを自身がわかっている男って好きですから」

  サスペンスの要素も強い同作では、物語が進むにつれ、主人公の少年時代の友達との絆が今に深くかかわってくる。友情とは、自分が思っているほど永遠にピュアなものではなかったと知った時の辰村の表情がいい。悲しそうで、傷つきやすさをはらんだ無防備さ。

「ある意味、このドラマは辰村の心の追憶劇なんですね。こんなに乾いた男なのに、過去の友情という目に見えない絆に必死にすがろうとする純粋さとか、非常にせつない感じも好きでしたね。だから、(幼なじみを演じた)寺島(進)さんや(大塚)寧々さんとのシーンはすごく、心がむき身の卵みたいな、つるつるの少年のままの気持ちでできたんですよ」

  それにしても、内野の役柄とのフィット感は尋常ではない。同作だけでなく、過去に演じたすべての役柄において、内野が演じれば見事にハマル。「全然難しいことは考えてないんですけどね」と照れたような笑顔を見せながら、内野は、役作りへの思いを聞かせてくれた。

「役者の一番大事なことのひとつと自分が思っているのは、どれだけその人間に真実を込められるか。セリフにしても行動にしても、これは俺、分からないなと思って演じたら、そこでお客さんは引いてしまうんですよね。だから、それが分かるまで台本と七転八倒しながら、虚像を本物にしていく。演じる職業の人に会って、その人にとって人生で一番すれすれな瞬間は何?とか、一番煌めいている時間は?とか、いろんな問いかけをして、それをノートに書いてイメージをふくらませたりもしますね。それは刑事でも、レスキューものでも、豆腐屋をやっても同じで、その人は何と戦ってるのか、何が勝負時なのか、ということにすごく興味がある。お豆腐屋さんにいろいろ聞いたことがあるんだけど、さっきまで話していても、ニガリを入れる瞬間はもう口をきかなくなる。じっと樽の中を見つめて、職人の勘の世界でやってる。そういう瞬間を見ると取り組み方も変わってくるんですよ。大河ドラマで(山本)勘助をやった時も、実際に勘助が命を落とした場所に行ってみると、その土地の歴史が持っているパワーというか磁場のようなものが自分を奮い立たせてくれる。フィクションをやっているけど、これはフィクションじゃないんだという感覚。虚像の中にどんな真実を込めていくかが勝負の気がしてるんです」

  最初は深い話をしない相手でも、知りたい思いを真摯にぶつけていくと、「ぽつりぽつりと話してくださる」そうだ。出会ったエピソードを語る時の楽しげな表情が印象的だった。

「現場で演じてる瞬間もその場のひらめきはあるけど、俺の中では、異業種の人と話して異文化交流があった瞬間とか、無言で台本と向き合って、“こんな言葉を言うのってどういう心境なんだろう”ってイメージをふくらます時間が一番クリエイティブで豊かな気がするんですよ。まあ、自分の本当の弱さとかにも対面する作業になったりするから、時として非常にきつい時間でもあるんですけどね」

  どんな役でもリアルに光を放つ瞬間を見せてくれる希有な役者。内野聖陽の演じることへの渇望は、すべての生を愛するところにある気がした。


(本紙・幸野敦子)

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WOWOW ドラマW 『シリウスの道』(9月14日午後10時〜)
原作:藤原伊織/監督:石橋冠/脚本:吉本昌弘/出演:内野聖陽、寺島進、大塚寧々、 栗山千明、黄川田将也、田中健、本田博太郎、白竜、夏八木勲、真矢みき他
*ドラマWでは、同作に続き、横山秀夫原作の『ルパンの消息』(9月21日放送、主演:上川隆也)、高野和明原作の『6時間後に君は死ぬ』(9月28日放送、主演:塚本高史)を放送する。


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