今週のTOKYO HEADLINE
vol.374
(2008.09/08-09/14)
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INTERVIEW vol.374

“スコットランドの良心” がニューアルバムをリリース

TRAVIS

有名になりたいから、リッチになりたいから、モテたいから。そして何よりも、音楽が好きだから。音楽を生業とする人たちにはそれぞれの理由がある。その理由を、トラヴィスに尋ねるのなら、いい音楽を作り、いい歌を歌うためだというだろう。先日、待望のニューアルバム『オード・トゥ・ジェイ・スミス』を発表した。最新作に込めた思いとは? メンバーのダギー・ペインとニール・プリムローズに聞いた。

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photo by Kazumichi Kokei 左から、フラン・ヒーリィ、ダギー・ペイン、アンディー・ダンロップ、ニール・プリムローズ
  トラヴィスはとてもまじめなロックバンドだ。良い楽曲を作ることにまっすぐに向き合って、結成してからずっと10年以上にわたり、自分たちのペースで活動を続けている。残念ながら後発のコールドプレイほどバカ売れはしていないものの、誰の人生にも自然に寄りそう温かい音楽を生み出し続け、多くのファンを集めている。

  スコットランドはグラスゴー出身。90年代中ごろにアートスクールに通っていた、ボーカルのフラン・ヒーリィとアンディ・ダンロップを中心に結成。粗削りなロックでシーンに現れ、オアシスの前座に抜てきされ、大ブレーク。楽曲のパワーもさることながら、人懐っこい性格や、パーティーに必ず顔を出すセレブバンドが増えていくなかでそうした派手な生活からは離れたところで、真摯に音楽に向かうアティチュードもまた、リスペクトされている。彼らがスコットランドの良心とも呼ばれるのもそうした理由からだ。「トラヴィス? あいつらは俺たちのヒーローでさぁ」。いつだったか、スコットランドを旅したとき、タクシーの運転手が言っていた。

「ALL I WANT TO IS ROCK」(ただ、ロックをやりたいんだ!)と叫んでシーンに現れ、セカンドアルバム『THE MAN WHO』ではザラザラしたロックを捨て去ってクリアで美しいサウンドを打ち立てた。サードアルバム『インヴィジヴル・バンド』では、いい歌さえ残っていけばいいとバンドを透明な存在と言ってのけた。メロディアスでメランコリックで、それゆえにちょっとうじうじした雰囲気もある楽曲が彼らのカラー。しかし、最新アルバム『オード・トゥ・ジェイ・スミス』では、その印象を変えている。

  タイトルを直訳すると、ジェイ・スミスに捧ぐ。ジェイ・スミスとは、イギリスで最も多い名前であることから、いわゆる普通の人を指し示すときにも使うフレーズだ。

「特にこれといったアイデアが制作前にあったわけじゃないんだ。まず『J.Smith』という曲があってそこから他の曲にふくらんでいった。このアルバムに収録されている曲にはいろいろな登場人物が出てくる。そうした人たち、もちろん曲に出てこないすべての人も含めて、みんながジェイ・スミス。とくに、これといったモデルがいるわけでもなくてフィクションの人物だよ。これまでいろんなことを歌ってきたけれど(特に、前作はボーカルのフランが父親になったことが大きく影響している)、僕ら自身の興味がそういうところに向かっているんじゃないかな。それ以上はあんまり考えていないんだ(笑)。ごめんね」(ダギー)

  サウンド面では、得意とする美メロはそのままに、全体的にロック度が上昇。さらに、ブルースなどの要素も注入されている。そのためか、これまでの作品と比べるとよりライブ感がある。フロントマンでボーカルのフランは、このアルバムを自分たちがライブバンドであることの証明ともいっている。

「短期間で仕上げようっていう話がまずあって、実際ほぼ2週間で仕上げたよ。BBCの『サージェント・ペパーズ』セッションで、ジェフ・エメリックと作業をしたことの影響? それももちろんあると思う。とにかく今回は、スタジオに入る前に曲を作ろうっていうのがあったから、それが短期間で制作できた一番の理由だと思うよ。ただ、こうしたスタイルは僕らにとって新しいってことじゃなくて、前にもやっていたんだけどね」(ダギー)

「ここのところアルバムづくりに時間をかけすぎたってことさ。だって、前作なんて2年かかってる。あれはかかりすぎだよ(笑)」(ニール)

  いい意味で裏切りのあるサウンド、ちょっぴりダークなリリックなど、制作プロセスだけでなく、音を聞いただけでもこれまでのファンを驚かす要素がある。そうできたのも、このアルバムから自ら作品のコントロールをとるようになったからだ。『オード〜』は、バンドのプライベートレーベル「Red Telephone Box」から発売された。

「契約が終了したからね。もちろん、他のレーベルとのディールを結ぶ選択もあったと思うけど、これまでいろんなことをやってきて、今は自分たちでやることがしっくりくると思ったんだ。音楽以外でもそれぞれ長けているところがあるし」(ニール)

「僕らは、アートスクール出身なこともあって、ジャケットもできるし、フランもビデオもできるし。制作に関してほとんどのことを自分たちでやってる。そりゃ忙しいっていえば忙しいけれど、何よりも自分たちがやりたいことを自分たちの手でやることができるのが楽しいんだ」(ダギー)

  また新しいスタートを切ったトラヴィス。これからもまた、音楽で多くの感動を届けてくれるだろう。


(本紙・酒井紫野)

New Album 『オード・トゥ・ジェイ・スミス』
Red Telephone Box / HOSTESS 発売中 2490円(税込)

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