賀来賢人 白目で人気爆発! 次はミュージカルでフランケンシュタイン博士の相棒

Kento Kaku Special Interview

 賀来賢人から目が離せなくなった。二枚目俳優であることはもちろんだが、話題を集めたドラマ『スーパーサラリーマン左江内氏』で、これまで舞台の上に留められていた感のあるコメディアン要素が爆発。そのさまは「変顔最高!」「キャラ崩壊!!」とネット上をざわつかせ、今も余韻が残っている。この夏、ドラマを手掛けた福田雄一によるミュージカル『ヤングフランケンシュタイン』に出演。これがまた「ヤバい」役どころで……。

撮影・蔦野裕 ヘアメイク・新宮利彦 スタイリスト・荒木大輔 衣装協力:ブルゾン¥38,000、スラックス¥36,000/ともにAURALEE(CLIP CLOP)その他スタイリスト私物

同年代でここまでコメディーをやる人はいない
まずは、ここで一番になりたいと思います

「賀来賢人」を検索窓に打ち込むとワクワクが止まらない。公式サイトや出演作品タイトルを併記したページはもちろんだが、「変顔」だとか「キャラ崩壊」だとかが「魅力」とコンビになって現れる。原因は、福田雄一が脚本・演出を務めたドラマ『スーパーサラリーマン左江内氏』で演じた主人公の部下、池杉。白目の変顔に、奇声、変なリアクション……。彼の一挙手一投足に大多数の人が口をあんぐりさせ、魅了されてしまった。

「舞台ではずっとコメディーをやらせていただいていたんですが、映像ではそういった機会はあまりありませんでした。そういう意味では、映像でコメディーをやれたらいいなと思っていたので、『スーパーサラリーマン左江内氏』でようやくコメディーをやる自分が世の中の人に知っていただいたのかなって。これでやっとかって感じはあるんですよね(笑)」 

 舞台デビューは『スマートモテリーマン講座 vol.2』(2011年)。福田が脚本と演出を担当した作品だ。その次も福田とモンティ・パイソン…。翻って、映像作品群を見てみると、ずいぶんとタッグを組んでいる。

 この夏、福田は、最新ミュージカル『ヤングフランケンシュタイン』を上演する。小栗旬がミュージカルに初挑戦することで話題の作品だが、もちろん賀来もキャスティングされている。

「ご飯に連れて行っていただいたとき、福田さんに誘われたんです、出ない?って(笑)。小栗さんが主演でミュージカル。小栗さんはフランケンシュタイン博士で、僕はその相棒で……よく分からなかったのですが、すごくおもしろそうだったので、はぁ、やります!と」

『ヤングフランケンシュタイン』は、喜劇の天才とされるメル・ブルックスが公開した映画『ヤング・フランケンシュタイン』(1974)を、のちに彼自身がミュージカル化した爆笑コメディーミュージカル。いくつかのフランケンシュタイン映画を徹底的にパロディー化した作品で、トニー賞12部門受賞の最多受賞記録を持つ『プロデューサーズ』のスタッフが集結し創り上げた作品だ。

 これまでにもミュージカルには挑戦してきた賀来。前作は人気ミュージカルの『RENT』(2012年)だった。

「ミュージカルには何回か出させていただいているんですが、ミュージカルの勉強をスルスルッっとやってこなかったんです。『RENT』の時は、演出家から練習するなって、“歌う”ことを意識するなという意味だったんですけど、そう言われて歌のトレーニングをしなかったんです。だから今回はちょっと違うテクニック、ミュージカルの基礎を身につけられたらと思っています」

 さて、賀来が演じる助手のアイゴールだが、かなりのクセ者だ。

「なかなかヤバいキャラクターですよね。それを自分がどうするのか、まだ想像がつかないです。映画自体はすごく面白くて、福田さんが日本人に伝わるような、得意の感じで作っていくんだろうなと大体は想像できます(笑)。ブロードウェイで上演された時の楽曲も聴きましたけど、ステキでしたね。キーは低そうなんで安心していますが、福田さんは間にいろいろ挟んでくるんだろうな…。福田さんはミュージカルをとにかく愛しているしリスペクトがある方ですから、おもしろいミュージカルになると思います」

 稽古が始まるのはまだ少し先になるが、期待は膨らみっぱなしだ。というのも、本作への出演を決めた理由は「初舞台が福田さんでした。ある意味きつい稽古をまた経験したいと思った」からだそう。

「ある場面をやってみるとします。1回目、福田さんは結構大きな声で笑ってくれるんですが、2回目に同じことをするとキョトンとした顔をするんです。同じことをしちゃダメなんて言ってないと本人は言うんですけど、福田さんは謎のメモを書き出すんですよね。僕はいつかそのメモを取り上げたいと思ってます(笑)。たいていの芝居の場合、稽古をしながら固めていって通して演じてみるんですが、福田さんの場合はすぐに通し稽古を始める。最終的に本番が近くなると呼び寄せられて、これまでやったものからベストなチョイスを選んで芝居を固めるんです。そうするまでは違うことを試してほしい、いろんな球を見たい、それが福田さん。だから常に、次に何をやるかって宿題を出されている感じなんですよね」

 稽古場では、以前から共演したいと思っていたという小栗旬にも会える!

「小栗さんは、真ん中にずっと立っている人。いま日本で一番真ん中の人だと思います……僕の勝手なイメージですけど。だからちょっと近くで見てみたいんです(笑)。そもそも仕事をする機会がなかなかないので、舞台ですし、いろいろ盗みたい。なぜ、この人は真ん中にいるのか、解き明かしたいと思っています」

 ドラマ、そしてこのミュージカル。コメディーにも長けたイケメン役者という賀来のイメージは、この作品によってさらに強まっていきそうだ。

「シリアスな演技、賞を取る人たちの芝居を見ながら、いろいろ考えていた時があって、その時に福田さんに言われたんです。同年代でコメディーをここまでやってる人はいないから、一番になりなさいって。それで僕、“はいっ、なります”って(笑)。……僕だって、かっこいいの、二枚目もやりたいですよ(笑)。でもそれは、なんでもやってみたいっていうものの延長なんです。ただ、コメディーは、得意分野をやれるだけやる、生かすといった考え方です。すごい人たちとコメディーの経験をたくさんさせてもらってきて、それを生かさないのはもったいない。福田さんが一番になれっていうんだから、その得意分野を伸ばしていこうかなって思うんです。だから……僕は福田さんを離さない(笑)」

 そのためにも福田作品のなかに「賀来賢人流派」を作ることが急務だという。

「福田さんの作品は、やっぱりムロツヨシさんと佐藤二朗さんだと思うんです。ムロさんなんて何度も何度も福田さんの作品に出ていて、どんどん福田さんのハードルが高くなっていっているのに、それでも簡単に超えていく。OKを取っていくんです。それって、すごいことなんですよ。やってることは本当にくだらないですけど(笑)。だからかな、その印象がすごくて、福田さんの演出がそっちのほうに寄って行っちゃってるんです。それで僕、ムロさんにはクレームをいれたんですけど(笑)、その流派を取り払うのが大変になってきている。だから、自分の流派を作らないとって思うんです」

 ムロとの攻防がどうなったのか。それもまた、舞台の上でうかがうことができるだろう。幕は、8月11日に上がる。

「この間、阿部サダヲさんと話していたんですけど、舞台をやらない年は体がうまくいかないねっておっしゃっていて。発散の場っていうのか、板の上でお客さんにドカンとぶつける感じが気持ちがいいんですよね。お客さんから反応が返ってくるのもいい。稽古をして、完成させて、それを見せて。そういうのっていい」

 ドカン、上がるモチベーション、そして、新しい刺激。さらに進化していく賀来に注目だ。
(本紙・酒井紫野)

ミュージカル『ヤングフランケンシュタイン』

【日時】8月11日(金・祝)〜9月3日(日)15、21、28日は休演。19日昼と25日は貸切公演のみ。
【会場】東京国際フォーラム ホールC(有楽町)
【料金】S席1万2000円、A席9000円、B席7000円
【公式サイト】http://www.youngfranken2017.jp/http://www.youngfranken2017.jp/
【チケットの購入および問い合わせ】キョードー東京 0570-050-799(オペレーター受付/平日11〜18時、土日祝10〜18時)

 フランケンシュタイン家の末裔であることを隠しながらニューヨークで過ごしていたフレデリック(小栗旬)は、怪物を生み出したマッドサイエンティストであり祖父のヴィクター・フォン・フランケンシュタイン博士(宮川浩)の遺産を継ぐために、しぶしぶトランシルバニアに行くことなった。そこには少し変わった風貌のアイゴール(賀来賢人)とセクシーな地元の女の子インガ(瀧本美織)がいた。最初は“しぶしぶ”だったフレデリックだが、祖父のようにモンスター(吉田メタル)を作りだしてしまう…。他出演に、ムロツヨシ、保坂知寿、瀬奈じゅんら。作詞・作曲・脚本はメル・ブルックス、脚本はトーマス・ミーハン。演出と上演台本は福田雄一。