忽那汐里 ハリウッド映画では英語で芝居! 最新出演作『ねこあつめの家』はまったりねこあつめ!?
人気ゲームアプリ「ねこあつめ」を実写映画化した話題の映画がいよいよ公開。伊藤淳史演じるスランプ中の小説家を支える若手編集者役を演じるのは『女が眠る時』や『キセキ −あの日のソビト−』など国内外の作品で存在感を見せる忽那汐里。共演したアイドル猫たちにメロメロに!?
東京に来てノラ猫に目覚めた!?
「一人暮らしで忙しい今の状況だとペットを飼うのはなかなか難しいですね。もし飼えるなら猫と犬、両方飼いたいかな。本当は、いつかすごい数の動物たちと一緒に暮らしてみたいなと思っているんです(笑)」と、動物好きを明かす忽那汐里。
「猫もけっこう好きですね。日本に来てから猫好きになったんです。オーストラリアにいたころ、近所で飼われているのはほとんど大型犬で、ノラ猫もあまり見かけなかったんです。トイプードルやチワワのような小型犬もまず見ませんでしたね」
オーストラリアといえば…まさかノラカンガルーと遭遇したり?
「さすがに家の近くにはいませんでした(笑)。かなり郊外のほうに行かないと野生のカンガルーはいないんです。ただブルータングリザードという爬虫類が勝手に庭に住みついていたことはありました。割と大きいんですけど草食でおとなしいトカゲで。飼っていたわけじゃなかったんですけど、ときどき餌をあげたりしていました。かわいかったです(笑)」
猫派か犬派かと聞かれたら…?
「やっぱり今は、猫派と答えてしまうかも(笑)。もともとは犬派というか、あまり猫を見かけることが無いので関心が無かったんです。それが、東京で暮らし始めたら、近所にやたらノラ猫が多くて。駅から家までの道に必ず見かける猫が何匹かいたんですが毎日、顔を合わせているとやっぱり愛着がわいてきますね。ときどき撫でたり声をかけたりするようになったら、向こうもなついてしまって(笑)。特に覚えているのが、まんまるのおデブちゃんな猫だったんですけど、本当にかわいい子だったんです。目もクリクリしていて、この映画に出ているアイドル猫たちにも負けないくらいかわいい顔をしているんです。太っているせいか動いているところをほとんど見たことが無かったんですけど、顔なじみになったら私を見るとニャーニャー鳴きながらついてくるようになってしまって。もう、それですっかり猫全般がかわいくなってしまったんです。そうなると普段でも猫を意識するようになり、気づいたらすっかり猫好きになっていました(笑)」
では今回、出演を決めた理由も、もしかして猫…?
「それも無くはないですけど(笑)、やりたいと思ったのは、伊藤さんとしっかりお芝居ができそうだと思ったからです。伊藤さんとは以前から何度も一緒にお仕事をさせていただいていて、すごく信頼できる役者さんだということは分かっているので、今回の共演シーンも楽しみでした。それに、伊藤さんは普段からすごく楽しい方なんですよ。俳優としても人としても大先輩なんですけど、あまりそれを感じさせないというか(笑)、とても気さくな方なんです。現場でも居心地の良い空間を作ってくださるんです。今回は、カメラが回っていないときによく一緒に畳でゴロゴロしながら過ごしていました(笑)」
猫映画ではなく、猫がきっかけになる映画
そんな伊藤が演じるのは新人賞を受賞したものの、その後すっかり落ち目になった作家・佐久本。忽那演じる編集者・十和田ミチルは佐久本の担当編集としてスランプから脱出させようとするのだが、落ち込むところまで落ち込んだ佐久本は、田舎の一軒家に引きこもってしまう。
「その家に猫が集まってくるんですが、猫だけに焦点が当たっている映画ではなく、登場人物が少ないながらも一人一人の人生のストーリーが描かれている作品です。そんな物語にも魅力を感じましたね」
一見クールなしっかり者のようでいて、上司からの“打ち切り”指示に葛藤するミチルをリアルに、自然体で演じている。
「ミチルは、情熱はあるんだけど経験が無く、やりたいことができなくて葛藤を抱えている新米編集者。ときには出しゃばってしまうこともあったりするんですけど、そこはあまり押しつけがましく演じないようにしました。世間知らずすぎて理想を押し付けてしまっているわけではなく、純粋に佐久本先生をサポートしたいと思っている。実は佐久本先生の作品に、これまでの人生の分岐点で影響を与えてもらっていた…という背景が伝わるように演じたいなとは思っていました」
しっかり者のミチルと、一見ブレまくりでダメダメな佐久本とのギャップが、いい味を出している。
「でも私は、佐久本先生が取った行動や感じていること、例えば評価を気にしたり、少し燃え尽きちゃったりして、世間から1回離れたくなる気持ちとか、度合いや深刻さは違えど、誰しも同じような気持ちを持ったことがあると思うんです。特に、めまぐるしい日々を送っていると、どこかでひっそり暮らしたいという彼の気持ちも分かる気がする。どうやってそういう気持ちと向き合っていくか。そして、自分がそういう状況になったとき支えてくれるものがあるかは、その人それぞれ。佐久本先生の場合は、すぐには思いつかず田舎に引っ込んで猫を集め出してしまった、と…(笑)。でもそれが結果的に良かったわけですから」
もし忽那がそんな“つまずき”を感じたら…?
「私の場合は、立ち止まって1回考えてみる、かな。答えが出ないと極限までどーんと落ち込んでしまうこともあるんですけど(笑)。そしてやっぱり、周りの人と話して、その言葉に耳を傾けることができる状況であれば、そこにヒントがあることが多いですよね」
この物語も猫に癒されるだけではなく、人と人の交流の中で前に進むヒントを見つけ出していく物語。
「猫に癒されるだけだと、佐久本先生はそのまま猫の飼育員で終わっちゃいますからね(笑)」
とはいえ“猫要素”が本作の大きなパワーになっているのは確か。
「私も現場ではよく猫たちと遊んでいました。カメラが回ってないときは基本的にみんな、バンの中に置かれたケージでお休みしているんですけど、のぞきに行くと皆こっちを見て鳴いてくるんです(笑)」
お気に入り猫はいましたか?
「シナモンかな。基本的には落ち着いている子が多いんですけど、シナモンはとくに落着きがすごくて、1回そこに座らせたらずっとそこにいるような子なんです。そばに座ったり撫でたりしても動じない(笑)」
劇中、猫をかまうしぐさが自然。動物に好かれるタイプでは。
「どうでしょうね(笑)。でもやっぱり、どんな動物でもガツガツ行かないことがポイントかなと思います。さりげなく様子を見ながら、時間をかけて距離を縮めていく(笑)」
動物との撮影は俳優も大変だと聞くけれど…。
「以前CMで、ミニブタとかお猿さんとか、いろいろな動物と一緒に撮影したことがあったんです。お祭りの屋台の列に動物と一緒に並んでいるという設定だったんですが、お猿さんが、他の人が持っているビニール袋に入った金魚に釘づけで、全然お芝居をしてくれなくて、なかなか撮影が進まなかったことがありました。その光景は面白かったんですが(笑)、やっぱり動物と一緒の撮影というのは、スタッフさんも本当に大変だなと思いましたね。でも今回の現場は、そういうことがまったく無くて、全然大変じゃなかったんです。むしろ猫ちゃんたちに癒してもらっていましたから」
挑戦しない理由はない。だから先へ進む
猫からもらった癒しは、あくまできっかけ。
「やっぱり、自分が何をしたいのか、どんな夢を持っているのか、漠然とでも意識していることが大事じゃないかな。一度、立ち止まったとしても、それが頭のどこかにあることで、自然とそちらに向けて自分から行動できるようになると思うんです。結局は自分がやろうと思うか、思わないか。それをミチルもよく分かっていたから、佐久本先生が自分から動き出すのを待っていたんだと思います」
忽那自身は、女優としてどんな思いで歩んできたのか。
「もともと私は、女優になるなんて夢見たこともなかったんです。ひょんなきっかけで、ある作品のオーディションを勧められて受かったことが始まりでした。それまで、女優になることも、生まれ育ったオーストラリアを離れて日本で暮らすことも、考えもしませんでした。ですけど、受かった瞬間、これから日本で女優をやるんだということにまったくためらいは無かったんです」
慣れ親しんできた地を離れ、女優という未知の世界に一歩、踏み出す勇気をためらいも無く持つことができた理由とは。
「一つは、そのとき明確に目指していたものが特に無かったということもあると思います。かつ私の場合は、嫌だと思ってないなら挑戦しない理由が見つからない、というか。それで後先考えずに。勢いですね(笑)」
そのとき踏み出した一歩が、今ではハリウッドにまで届いた。近年、日本とトルコの合作『海難1890』や、ウェイン・ワン監督の『女が眠る時』など国際的な作品にも積極的に挑戦。そして、オスカー俳優のジャレッド・レト主演の映画『ジ・アウトサイダー(原題・2017年全米公開予定)』でハリウッドデビューを果たす。
「海外の作品にも挑戦していきたいとずっと思っていて、ちょうどいいタイミングでオーディションの話があったので、チャレンジしてみよう、と。舞台は50年代の大阪の裏社会で、ジャレッド・レトさん演じる主人公が日本の裏社会に踏み込んでいく物語です。けっこうバイオレンスやアクションも多い作品になっていますね。私はやっていませんけど(笑)」
忽那にとって日本だけでなく海外作品にも挑むことのメリットとは?
「ほとんど英語で芝居をするということがこれまで無かったので、それも今回は大きな経験になったと思います。英語は話せますけど、英語で芝居をするというのはまた違ってきますし、海外の監督が求める芝居は、日本の作品とはまた違うんです。どちらかというと、ものすごく強い女性像を求めてくる気がします。なので役を作っていく感覚も違いますし、海外作品ならではの現場の雰囲気も、また違う。今思うと、よく無事に演じ終えたと思うほど、別世界な体験をした気がします(笑)」
苦笑しながら振り返る忽那だが、その別世界での経験こそ“挑戦しない理由はない”ものだったのだろう。
「現状、まだ海外作品でアジア系の女優に与えられる役の幅は限られているとは思うんですけど、それでもやってみたいと思う作品でチャンスがあるなら、これからも挑戦していきたいですね。英語は世界共通言語だから一見、近い感覚でできるように思いますけど、実際は国や文化によってまったく異なったりする。いろいろな表現で芝居できるというのは役者にとってはメリットになると思います。それに、日本ではあまり扱わないようなテーマの作品に参加することもできるかもしれないし、珍しい作品を多くの人に紹介できるかもしれませんし」
逆に、忽那が出演する日本映画を海外の映画ファンに楽しんでもらえるようになるかもしれない。海外にもユーザーのいるアプリが元になっている本作だけに、海外の猫好き、映画好きも楽しんでくれそう。
「猫好きの方はもちろん、何か新しいことに挑戦したいとか、前に一歩進みたいときに、少し背中を押してくれる作品になっていますので、ぜひ楽しんでください」
これからの道のり、ときに立ち止まって考えるときがあっても、この映画のように猫の手に背中を押してもらえばいいのだ。(本紙・秋吉布由子)
監督:蔵方政俊 出演:伊藤淳史、忽那汐里、木村多江、田口トモロヲ、大久保佳代子他/1時間32分/AMGエンタテインメント配給/4月8日より新宿武蔵野館他にて公開 http://nekoatsume-movie.com/http://nekoatsume-movie.com/