橋本環奈 最新主演映画『ハルチカ』で“卒業”そして、新たな一歩へ!
フルート習得は負けず嫌いのおかげ!?
高校生ということに加えて“負けず嫌い”な性格もチカとの共通項。その負けず嫌いな一面が、今回の役作りで重要な役割を果たすことになった。フルートという難易度の高い楽器に初挑戦したのだ。
「初めて手に持ったときに思ったのは…“長い!”(笑)。私の中でフルートのイメージがピッコロくらいの長さだったんですけど、実際はそれよりずっと長くて。上腕二頭筋が痛くなるくらい(笑)。でも、すごくキラキラしていて、これが吹けるようになったら絶対にかっこいいなと思って、ワクワクしました」
ところがフルートは想像以上に難しい楽器だった。
「最初はまったく音が出なかったんです。指や息の使い方を覚えるのも大変でした。息の速さで音の高さが変わったりするんですよ。それと肺活量。フルートって、息の量の半分が外に出る楽器なんです。肺活量もすごく鍛えられました。フルートの練習だけで腹筋が付くんじゃないかと思います(笑)。ピアノは習っていましたけど、それ以外の楽器になじみがなかったので、フルートってこんなに難しいものなんだ、とつくづく思いました。でも難しいからこそ、やりがいも感じました。そういう楽器に出会えたことも財産になったと思います」
劇中、家に帰ってもフルートの練習に励むチカは、フルートに初挑戦した橋本の姿そのもの。
「学校から帰ったチカが(騒音対策で)家の車の中で練習するシーンがあるんですけど、あれはチカでもあり橋本環奈そのままでもあるかなと思います。あの撮影のとき、私もカメラが回る直前まで車の中でずっと練習していました。やっぱり音が出るものなので、仕事から帰って夜に家で練習することがなかなかできないんですよね。だから私も常にフルートを持ち歩いて、少しでもタイミングがあれば吹いていました。毎日練習することが本当に大事で、1日吹かないとそれだけ遅れをとってしまう。ソロパートは本当に難しかったんですけど、絶対にきちんと吹けるようになりたかった。そういう、変に負けず嫌いなところはチカとよく似ているかなと思います」
一歩一歩、フルートの腕前も上達。
「1曲、2曲とできるようになって、楽しさが分かってきました。最初に完璧に1曲吹けたのは『きらきら星』。私が主旋律を吹き、先生が副旋律を吹いてくれて、すごく素敵な演奏になったんです。こんなにきれいな音になるんだ、吹けるようになるとこんなに楽しいんだと思いましたね。個人練習だけでなく、吹奏楽部みんなでの練習もあったんですが、きれいに音が合ったときは本当に気持ち良くて感動しました。自分一人のときはフルートの音色だけだったのが、いろんな音が聞こえてきて、それが一つになって。劇中で演奏する『春の光、夏の風』というオリジナル曲もすごくいいんです。演奏シーン以外でも効果的に使われていて、映画自体が一つの曲になっているような、聞いていて見ていて、本当に心地良くなる映画になったと思います」
初めてチカがソロパートを成功させるシーンの撮影の裏側は?
「本当に難しいので、できるときもあればできないときもあって、あの撮影当日は“今日は初めて完璧に吹けるシーンだから失敗できない”と思い、直前まで猛練習していたら腱鞘炎気味になってしまって、ちゃんと吹けるかどうかドキドキだったんです。別角度から撮影していたときに1度ミスしてしまい“吹けた!”というセリフをつい“吹け…てない!”と言って、皆の笑いを誘ってしまいました(笑)。でもその後、いざ演奏シーンでは完璧に吹くことができて。あのシーンの喜びは本物です(笑)。吹けるようになるのかなという不安も、吹けたときの喜びも、チカとのシンクロ率は100%でした。撮影が終わった今でも、フルートは続けているんです。映画の公開に合わせてフルートを吹くイベントなどもあるので、それに向けてテーマ曲を再度、練習しています」
また一つ、成長して一歩前へ
役作りへの熱意もさることながら、女優としても急速な成長ぶり。
「ありがたいことに成長しているねと言っていただくことが増えたんですが、自分では何が変わったのかピンときていなくて(笑)。ただ今回、主演を務めさせていただいたのが2作目で、佐藤さんとのW主演ということもあって『セーラー服—』のときと比べるといくらか肩の力を抜いて撮影に臨むことができた気がします。それもやはり、現場でお会いする方々から学ぶことができるおかげですね。どんな現場でも学ぶことは本当に多いです。今回の現場では年上の方だけでなく同年代の共演の方々からも刺激をもらいました。なかでも佐藤さんの存在は本当に頼りになりました。佐藤さんは、現場にいるだけでみんなをまとめ上げてくれるんです。ハルタが真ん中にいて、みんながその中心に寄っていくようなイメージ。みんなが自然とついていきたくなるような方で、私も頼りにさせていただいていました」
今でも印象に残っているエピソードがあるという。
「最後のシーンの撮影が終わり、クランクアップしたんですけど、何となくまだみんな、別れたくない、終わりたくないという雰囲気が漂っていたんです。それを察した佐藤さんがみんなの気持ちを代表して、プロデューサーさんたちに“最後にもう一度みんなで演奏させてください”と言ってくれたんです。それで、撮影無しで、監督やスタッフさん、音楽指導していただいた先生方の前で演奏したんです。もうみんな号泣しながらしていました(笑)。泣きながらだったから少し演奏がずれていたりもしたけれど、一番私たちの思いが伝わった演奏だったかも。監督もすごく感動したそうで“泣かせることするよね”と言ってました(笑)。今でもそのときの記録映像をときどき見返しているそうです。私も、この先また主演を務める機会をいただけたら、そんなふうに現場の中心にいる存在でいられたらな、と思います」
成長するということはそれまでの自分を卒業するということ。
「映画が一つ終わると、その役に別れを告げる、卒業のようなものかもしれないですね。毎回、クランクインのときはワクワクしているんですけど、クランクアップのときには、もう終わっちゃうんだ、と思います。まあ私は引きずったり悩んだりしないタイプなんですけど(笑)。春は卒業や進学の季節。高校の友人たちも、みんな離れ離れになります。この先会えなくなるわけではないけど、毎日当たり前のように学校で会っていたのがもう会えなくなるのはやっぱり寂しいですし悲しい気持ちはあります。でもその分、みんなが夢や目標に向かって頑張っていたり、大学でやりたいことを探そうと勉強に励んでいたり、そんな姿に私もすごく刺激を受けていました。私も負けていられないな、お互い頑張りたいなという気持ちのほうが大きいですね。お互いに成長してまた会おうねと約束したので、今からそのときが楽しみです」
高校卒業、東京を拠点に新たな一歩を踏み出す。
「東京にはまだまだ行ったことのない場所もたくさんあるので、早く東京になじみたいです。気になるのはやっぱり渋谷! 東京には最先端のものが集まるので、人から聞いたりするだけじゃなく自分でいろいろ発見するのも楽しみです。もしも将来1人暮らしをしたら、自分の部屋で女子会もしてみたいし、料理も頑張りたいですね。ただでさえ声が低いのでのどを痛めないように(笑)、加湿器や空気清浄器もちゃんと置いて。もちろん撮影でもずっと使っていたマイフルートも置く…というより吹きます(笑)」
高校最後にこの作品に会えて良かった、と振り返る。
「意外に思われるかもしれませんけど、学校にいる間は普通の高校生活を送っていたんです。私にとって安心して素でいられる場所でしたね。学校行事に参加できなかったり、時間が無くて大変なこともあったけど、その倍、楽しいこともありました。この映画でも、キラキラする瞬間もあれば部員同士が衝突する場面もあって、そういうのすべてひっくるめて青春なんだなと思います」
橋本環奈本人の“青春”もぎゅっとつまった一本となった。(THL・秋吉布由子)