福島原発が「レベル7」に引き上げ
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東京電力福島第1原子力発電所事故について、経済産業省原子力安全・保安院は12日、国際原子力事象評価尺度(INES)の暫定評価を3月18日に公表した「レベル5」から最悪の「レベル7」に引き上げると発表した。国際原子力機関(IAEA)が定めた0〜7の8段階で最も深刻な事故で、1986年の旧ソ連チェルノブイリ原発事故と同レベルとなった。
事故で大気中に放出された放射性物質(放射能)の累積量について保安院は37万テラベクレル(テラは1兆)、原子力安全委員会は63万テラベクレルと推計。「レベル7」の基準である「数万テラベクレル相当以上」に該当した。
保安院の西山英彦審議官は会見で、「放出量はチェルノブイリ事故の1割程度で、事態は相当異なる」と強調。枝野幸男官房長官も同日夜、「(放出は)低減傾向にある。状況は悪化していない」との認識を示した。東電の武藤栄副社長は「原子炉冷却や放射性物質飛散防止の方策を早期に提示したい」と述べた。
菅直人首相は12日夕、官邸で記者会見し「まだ予断を許すところまで来ていないが、原子炉は一歩一歩安定化に向かっている。放射性物質の放出も減少傾向にある。これ以上の被害拡大を押しとどめるため、全力を挙げて対策を進めていく」と述べた。評価見直しが遅かったとの指摘に対しては「原子力安全・保安院と原子力安全委員会が専門家の立場で調査・分析して結論を出したのを受け止めた。遅れたとか軽く見たことはない」と反論。周辺の農作物などが出荷停止など影響を受けたことには「政府を代表して深くおわびする」と陳謝。補償については「最後の最後まで支援することを約束する。一義的には東電だが、適切な補償が行われるよう政府が持たないといけない」と述べた。
また13日には東京電力の清水正孝社長が1カ月ぶりに、事故以来2回目の記者会見を行い、事故について「改めて心より深くおわびする」と述べた。
原発事故の影響で避難生活を送る人の生活資金を補償するため、正式に賠償金額が決まる前に仮払いしたい考えを示した。時期や金額については明確にしなかった。事故収束についても「一日も早く」を繰り返した。事故収束に向けた作業については、「行程表の内容を詰めている。一日も早く示したい」とだけ述べ、収束時期のめどは明示しなかった。経営責任については「原子炉冷却の安定化などに取り組んだ段階でないと申し上げられない。出処進退については、そのときの判断があるかもしれない」と言及。日本経団連の副会長、電気事業連合会の会長職は「辞任したい」と述べた。