“肝入り”で起用したはずの小佐古官房参与の辞任で問われる任命責任
小佐古敏荘(こさこ・としそう)内閣官房参与(東京大大学院教授)が29日、官邸を訪ね菅直人首相宛てに辞表を提出した。小佐古氏は同日夕記者会見し、東京電力福島第1原子力発電所事故への政府の取り組みに関し「その場限りの対応で事態の収束を遅らせた」と激しく批判した。
小佐古氏は放射線安全学の専門家。首相は原発事故で外部から助言をもらうため、6人の内閣官房参与を起用した。最も早い3月16日に就任した同氏が、公然と政権批判して辞意を表明したことは、首相の原発対応の稚拙さを改めて浮き彫りにした。
27日に今後の原子力対策について報告書を提出した小佐古氏は、「提言の一部は実現したが、対策が講じられていないのもある。何を言っても無意味だというなら、参与にとどまる意味がない」と述べた。
福島県内の小学校や幼稚園などの利用基準で、被曝(ひばく)限度を年間20ミリシーベルトと設定していることを「とても許すことができない」と非難。同県内の小学校などの校庭の利用に、この基準を使用することを問題視し、見直しを求めた。さらに「(小学生らに)無用な被曝をさせてはいけないと官邸に何度も言った。(このままだと)私の学者としての生命が終わる」と述べた。
菅首相は原発事故発生後、原子力安全委員会や原子力安全・保安院と衝突を繰り返した末、小佐古氏ら専門家6人を次々に内閣官房参与に起用。「セカンドオピニオン」としての機能を期待したようだが、徐々に安全委の助言を受け入れるようになったという。
首相はこの「20ミリシーベルト」と設定したことについて、30日の衆院予算委で「安全委の助言を得ながら最終的な判断をした」とあっさりと認め、小佐古氏の「何を言っても無意味ならば参与にとどまる意味はない」という発言を裏付ける格好となった。