海水注入中断問題迷走 結局注水していたって…!?

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 東京電力福島第1原子力発電所1号機への海水注入が、菅直人首相の言動を受け55分間中断したとされる問題が迷走している。政局絡みで23日から国会で論戦が繰り広げられたのだが、26日に東京電力が「注入中断はなく、継続していた」と発表するという大どんでん返しの展開に。

 23日から国会では論戦が繰り広げられた。菅直人首相は同日の衆院東日本大震災復興特別委員会で、自民党の谷垣禎一総裁から注水が中断した経緯を追及されると「報告はなかった。報告が上がっていないものを『止めろ』とか言うはずがない。私が止めたことは全くない」と関与を否定した。首相答弁の「報告がなかった」とは、東電が3月12日午後7時4分に海水による「試験注入」を始め、同25分に停止したことを指す。首相は、注水が行われていたこと自体を知らされていなかったので、「聞いていない」と激怒することはありえないとした。

 首相の「聞いていない」発言は複数の政府関係者らが証言している。ある政府関係者は「首相発言を不快感の表明と受け取った東電幹部が本店に連絡し、注入の中断につながった」と述べ、政府と東電の意思疎通に問題があったと指摘していた。

 一方、内閣府原子力安全委員会の班目(まだらめ)春樹委員長の件でも政府は右往左往する。21日には政府・東電統合対策室が「班目氏が首相に『海水注入の場合、再臨界の危険がある』と述べた」と発表したが、班目氏はこれに反発。福山哲郎官房副長官に文言の訂正を求めた。政府は班目氏の発言は「そういう(再臨界の)可能性はゼロではない」だったと訂正した。班目氏は22日、内閣府で記者団に「そんなことを言ったら私の原子力専門家の生命は終わりだ。名誉毀損で冗談ではない」と強調。さらに「(真水を)海水に替えたら不純物が混ざるから、むしろ臨界の可能性は下がる」と説明。24日の衆院特別委では、海水注入中断について「『再臨界の可能性があるから注水はやめたほうがいい』とは絶対に言っていない。『再臨界の可能性がゼロではない』という発言は『事実上のゼロ』という意味だ」と改めて強調。

 そして24日には東京電力が、海水投入の3時間以上前の3月12日午後3時20分ごろ、経済産業省原子力安全・保安院に海水注入する旨を事前報告していたことが発覚する。首相らが海水注入の協議を始める2時間40分前にあたる。これは、東電が3月12日正午ごろに海水注入の準備を決め、午後2時50分ごろに注入実施を決定。原子力緊急事態でただちに首相に必要な情報を報告することを定めた原子力災害対策特別措置法15条に基づき、午後3時20分ごろ、原子力安全・保安院に「準備が整い次第、炉内に海水を注入する予定である」と記したファクスで報告し、午後7時4分に注入を開始したというもの。

 首相は関与を否定しているものの首相が3月12日午後6時から首相官邸で開いた海水注入に関する会議には保安院幹部も出席しており、首相らが東電からの通報を知らなかったとする説明は不自然と思われた。

 しかも首相官邸は原発事故直後から「対応策は政府の指示という形で出すように」と命じるなど指揮系統の一元化を徹底。3月15日には政府と東電の事故対策統合本部を設置していただけに、首相が保安院から東電の通報を伝えられていなかったとすれば、首相官邸の危機管理体制は全く機能していなかったことになり、どちらにしても政府にとっては具合のよくない状態だった。

 そんななかでの東電の26日の発表。同原発の吉田昌郎所長が、事態の悪化を阻止するためには注水継続が必要と判断し、中断を見送っていたという。

 じゃあ週明けからの国会審議はいったいなんだったのか…。