穏やかな雰囲気のなかで…トクマルシューゴらがトノフォンフェス

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写真・佛坂和之

 国境を越えて支持されるアーティスト、トクマルシューゴが主催する野外フェス「トノフォンフェスティバル2011」が12日、所沢・航空記念公園で行われた。レーベルメイトのSAKEROCK、アコースティックオーケストラのパスカルズらが出演し、美しく穏やかなサウンドでオーディエンスを魅了した。

■笑みがこぼれる美しいオケ、パスカルズ

 トップバッターを務めたのは、パスカルズ。ロケット・マツ率いる14人編成の“アコースティックオーケストラ的なグループ”で、メンバーのなかには、かつてバンド「たま」で活躍していたメンバーもいる。
 あくまでも“的”であるのは、彼らの奏でる音楽、彼らの存在そのものが一定の型にはまらないから。この日も、アコーディオン、トイピアノ、ウクレレにバンジョー、ピアニカなどいろいろな楽器が同じステージの上に乗り、和洋折衷でエキゾチックな音楽を鳴らした。さまざまな要素がごちゃまぜなのに、混沌に陥るのではなく美しい音楽になるのはパスカルズだから。パーカッションの石川浩司がアリーナに下り演奏するパフォーマンスもあり、観客を沸かせていた。

■淡々としたソウルフルな歌声に会場はため息、シンガーソングライターの王舟

「初めましての人もいると思いますが…」と登場したのが、王舟(おうしゅう)。上海出身のシンガーソングライターだ。本人も言ったように、一般的な認知度は高いとはいえないものの、八丁堀のアートスペース「七針」が主催するレーベルからリリースした作品が、CRJ-tokyoのチャートで初登場1位を獲得するなど、各方面から熱い注目を集めている。
 トノフォンフェスのステージでは、電気グルーヴの名曲「虹」を優しさにあふれたアレンジで歌って聞かせ、オーディエンスを魅了。セットが終わると客席から「王舟〜」と大きな歓声が飛んでいた。

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写真・佛坂和之

■物販エリアは閑古鳥? SAKEROCKが堂々ライブ!?

 バジルや香辛料の香りに引き寄せられた人たちでにぎわっていた出店の前から人が消えた。人気インストバンドのSAKEROCK(サケロック)がステージにあがったからだ。
 バンドとして乗りに乗っている彼らは、いつもどおりにマイペースにセットを進めていたかのように見えたが、途中「開放的な場所になればなるほど、ハマケン(浜野謙太)が硬くなっていく」と、星野源が暴露。さらに「シャツのボタンを上まで閉めている。それが(ハマケンが)閉じてることを反映してる」とMCを続け、笑いを誘った。
 ライブバンドとしての実力も認められているだけに、演奏は隣の野球場での掛け声やアナウンスもかき消し、SAKEROCKワールドを作り上げていた。この夏にはフジロックにも出演が決まっている。苗場ではハマケンのボタンにも注目!?

■山本精一&PHEWのライブはまるで森林浴

 SAKEROCKの和やかな雰囲気から一転、山本精一&PHEWのステージは神秘的。イベントでは、サウンドチェックからそのままセットがスタートするのだが、いつ始まったのかも分からないようなオーガニックな流れだった。
 PHEWの芯の歌声やバックにたゆたうようなギター音のひとつひとつが水面に波紋が広がっていくように会場を包み込むと、針を落としても聞こえそうなほどの静けさが広がった。その静けさたるや野外ステージという場所も手伝って森林浴をしているよう。出番が終わり客席に現れたPHEWにはファンが駆け寄って声をかけていた。

■「本当にいいです!」トクマルシューゴは感激

「本当に…いいです。ここにこんなにたくさんの人が来てくれて…いろんな人がいると思うんだけれど、いろんな人がいてくれていいと思う」。とつとつとしたトクマルシューゴのMCに、歓声やら拍手やらエールやらが飛ぶ。数え切れないほどあるフェスティバルのどれともかぶらないオリジナルなフェスを、会場いっぱいの観客が堪能した証拠だ。
 ステージでは、アルバム『PORT ENTROPY 』の曲が中心で、「Lahaha」「Drive-thru」などをプレー。アンコールでは「Rum Hee」も披露した。


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■所沢・航空記念公園という絶好のロケーション

 トノフォンフェスティバルの会場となったのは埼玉県所沢市にある航空記念公園だ。日本の航空発祥の地であることに由来する公園で、東京ドーム約11個分の広さという園内には、航空機の原理や航空技術、歴史などを楽しく知ることができる所沢航空発祥記念館があるほか、航空機をモチーフにしたオブジェや旅客機などが配置。自然も豊かで、フェスティバルの当日も家族連れでいっぱい。フェスティバルは園内にある野外ステージで行われた。