イタリア国民投票で94%が原発再開に「反対」

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 イタリアで12日から2日間にわたり、原子力発電再開の是非を問う国民投票が行われた。13日に即日開票され、反原発票は94.05%に上った。投票率は54.79%だった。原発再開を目指していたベルルスコーニ首相は同日、記者会見し、「イタリアは原発にさよならを言わなければならない」と述べ、敗北を認めた。

 3月の福島第1原発事故以降、原発をめぐる国民投票は世界で初めて。

 今回の国民投票に当たり、「原発再開」反対の世論を覆すのは難しいと判断したベルルスコーニ首相は、反原発の勢いが収まった後で改めて原発の復活を狙う方針に転換、投票を棄権するよう支持者に呼びかけていた。

 イタリアは旧ソ連のチェルノブイリ原発事故後の1987年に国民投票で原発廃止を決め、90年までに全4基の原発を閉鎖した。ベルルスコーニ政権は2008年、電力の不足分を隣国フランスなどからの輸入に頼っている現状を憂慮し原発再開を表明。しかし反対する野党側が署名を集めて国民投票に持ち込んだ。

 欧州では福島原発事故後、ドイツとスイスが将来の原発停止を決めている。

 計約140基の原発を抱える欧州において、脱原発を決めた国はまだ少数にとどまるが、反原発票が9割を超えた今回の投票結果が各国世論に影響を与える可能性はある。電力需要の8割近くを原発に頼る仏でも最近、仏紙の世論調査結果で、脱原発を求める世論が77%に急伸している。

 ただし、独やイタリアは脱原発に伴う電力の不足分を、仏などの原発大国からの輸入に頼ることになる。産業用の電気料金高騰も不可避で、欧州経済への影響も懸念されている。

 なお今回のイタリアの国民投票では首相や閣僚に裁判出廷義務を免除する特権を与えた法律の是非なども問われ、いずれも首相の主張が拒否された。野党、中道左派の各党は首相の辞任を一斉に要求しており、2008年の現政権誕生以来、首相は最大の危機に陥っている。

 国民投票は50%以上の投票率がないと成立しないため、首相は支持者に「棄権」を呼びかけたほか、首相が所有するテレビ局も国民投票の報道を控えるなど、投票率が下がるよう“画策”した。しかし、こうした手段に国民は反発を強めたようだ。