被災地応援ファンド、さらに充実。東京での説明会3回目
説明会の第二部では、事業者の商品を参加者にも試してもらう交流会も行われた
都内で23日夜、被災地支援のためのマイクロファンド「セキュリテ被災地応援ファンド」の説明会が開催され、80名を越える一般参加者の前で、ファンドを募集する被災地の事業者の面々が事業計画などの説明を行った。都内での説明会はこれが3回目となり、今回新たに3事業者が加わり、現在11社がファンドを募集している。
説明会の冒頭でマイクロファンドを運営しているミュージックセキュリティー(株)の取締役・猪尾愛隆氏がこのファンドについて説明した。以前も弊紙にて紹介したが、このファンドは(1)中小企業に対し即効性のある資金注入ができる、(2)一般の募金と異なり、お金を提供する側が、どこにどうお金が使われるのか明らかになる、(3)出資者と事業者の関係が長くなるため、今後の復興にも役立つ、などのメリットがある。また、事業者側にしても、直接顔の見える支援者からの出資となるため、「しっかりやらなきゃ、がんばろうと前向きな気持ちになれる」(丸光食品株式会社・熊谷敬子さん)という、精神的な被災者支援にもなるという作用もある。
この日は東京に来ることのできた7事業者がそれぞれ説明。ニュースや特番でも取り上げられることの多い陸前高田・八木澤商店の社長・河野通洋さんは、津波で倉庫などの建屋、製造機械などがすべてなくなり、2億数千万の被害で債務超過であることを明らかにしたうえで、さらに、「頭がおかしいと思われる方もいると思いますが、中小企業基盤機構が仮設工場を無償貸与すると言っていますが、その仮設工事を陸前高田の地元企業に発注しない限り、それを受けるつもりはない」、また債務超過の企業ではあり得ないことと断りを入れつつ、それでも「来年度は地元から2名の新規採用者をとる。もしかしたら3名になるかもしれない。でも、家族も家も流された高校生たちに、外へ出て働けなんて、そんな残酷なことができますか? 陸前高田を復興させることでしか、この敵討ちはできない。私は、彼らに敵討ちをさせてやりたい」と、投資に付きもののリスクが、さらに高いということを明言。そして「米ビツが空になっても前のめりでやります。それでもいいという方、ご協力を」と堂々と語った。
また、いち早く目標額に達し、事業再開に向けて着実に動き始めている斉吉商店の専務取締役・斉藤和枝さんは、全国の食品工場と手を取り合って生産に向けて動けたらと話し、「震災で“当たり前”のことができなくなったと以前お話ししたが、それが正しい“当たり前”だったのかと考えています。そして、被災地だからこそ、自分たちが何か大切な役割を負っていると思って、仕事をしていきたい」と、復興がマイナスから現状への復帰ではなく、新しいアプローチで新しいステップアップを目指すべきであるとの考えを示した。さらに追善供養で「熱心な仏教徒じゃないんですが、“無一物中無尽蔵”という考え方を知った。何もない、ということは無限にあると同じことだと。和尚さんから、『何もなくても、堂々と生きなさい』と言われました」と被災してなお、逆に一般参加者に生きる勇気を与えてくれた。
現在ファンドを募集しているのは、丸光食品株式会社(気仙沼・製麺業)、株式会社八木澤商店(陸前高田・醤油、味噌などの醸造業)、株式会社斉吉商店(気仙沼・水産加工、販売)、株式会社オノデラコーポレーション(気仙沼・コーヒーショップ)、株式会社ヤマウチ(南三陸町・水産加工、販売)、株式会社石渡商店(気仙沼、フカヒレ加工)、津田鮮魚店(石巻・鮮魚卸売業)、有限会社タツミ食品(南三陸町・ワカメなどの生産加工販売)、株式会社及善商店(南三陸町・かまぼこ製造)、星のり屋(七ヶ浜・海苔生産)、合名会社寒梅酒造(大崎市古川・酒造業)の11社。セキュリテ被災地応援ファンドのサイトはhttp://oen.securite.jp/。