通常国会70日間延長も野党の協力は絶望的

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 会期末を迎え延長問題ですったもんだしていた国会だったが、22日の衆院本会議で、通常国会を8月31日まで70日間延長することを、民主、共産、社民、みんな、国民新など各党の賛成多数で議決した。自民、公明、たちあがれ日本の3党は菅直人首相の延命につながるとして反対した。自民党の河野太郎、岩屋毅両衆院議員は党の反対方針に造反して賛成した。

 これに先立ち、民主、自民、公明3党は、特例公債法案などの成立と引き換えの首相退陣を水面下で模索したが、首相の抵抗により交渉は決裂していた。

 民自公3党幹事長は21日には50日間延長した上で重要法案を早急に成立させ、平成23年度第3次補正予算案編成は「新首相のもとで検討を本格化させる」と明記した確認書を交わすことで大筋合意していた。しかし首相は70日間の延長で譲らず、3次補正の扱いも「新体制のもとで」と修正するよう要求。22日朝、岡田氏は首相に言われるまま修正した確認書を自公幹事長に示したが、自公両党は「『新体制』では退陣の確約にならない」と反発、合意は破綻した。

 首相は残り70日間で、特例公債法案や第2次補正予算案に加え、再生エネルギー特措法案を成立させた上で、本格復興のための平成23年度第3次補正予算案編成も自らの手でやり遂げたいようだが、野党の協力は絶望的。8月下旬には「菅降ろし」が再燃することは避けられない見通しとなった。

 第2次補正予算案と東京電力福島第1原発の被害者に対する仮払金支払いを可能とする原発事故賠償仮払い法案は早急にメドがつく可能性が大きい。

 ところが、ほかの法案については膠着状態に陥ることは避けられない。

 事故の賠償を円滑に進めるための原子力損害賠償支援機構法案は、電気料金値上げの形で国民に負担を強いる上、電力各社の負担額が明確になっていないことなどから財界なども反対しており、政府案を野党がすんなりのむとは思えない。

 首相がこだわる再生エネルギー特措法案はさらに難しい。太陽光パネルの普及につながるため、野党にも賛成勢力がいるが、太陽光パネルを購入できる人が得し、そうでない人が電気料金値上げの形で負担増を強いられる。「金持ち優遇」との批判が強まれば棚上げされる可能性がある。

 そして野党側が政府・与党を揺さぶるための最大のテコとみるのが特例公債法案だ。23年度予算執行に伴う国債発行に不可欠な法案で9月までに成立させなければ国債市場への影響も大きいが、野党はこの法案の成立と引き換えに首相退陣を迫る公算が大きい。

 野党はもとより民主党の渡部恒三最高顧問からも「党の幹部が『辞めないでくれ』と言っている時、首相がパッと『辞める』と言ったら美談なんだが、逆に本人だけが『辞めない』って言っている姿を国民のみなさんに見られるのは残念だ」と言われてしまっているようでは、正常な国会運営は全く期待できない。