保安院独立問題で細野氏が「8月に試案」
細野豪志原発事故担当相は17日のNHK番組などで、東京電力福島第1原子力発電所事故を受けた原子力規制の新組織について「原子力安全・保安院を経済産業省から独立させて新しくスタートする形をとりたい」とした上で、「(新組織発足は)来年4月が望ましい。8月上旬には試案を出したい」と述べた。
今回の事故を契機とした原子力規制のあり方をめぐっては「(原発の規制・監督を担う)保安院が原発推進側の経産省と同居し、保安院は安全側に立てるのかとの声が強い」(細野氏)。このため、菅直人首相や細野氏らは、経産省からの保安院分離を軸に、原子力規制行政を抜本的に見直す考えを示している。
細野氏は番組で、文部科学省所管の放射線量モニタリング機能も新組織に組み込む考えを示した。
新組織の形態を政府から独立した「委員会形式」にするか、行政として一体性の高い「行政庁」にするかは明言せず、「行政組織としてしっかりしたもので、自由に発言も言えるセカンドオピニオンとしての役割も担える、両者のいい面を両立できる方法はないかと考えている」と述べるにとどめた。
この前倒しは菅直人首相の意向なのは明らか。東日本大震災後の3月30日には社民党の福島瑞穂党首に、保安院の経産省からの分離を示唆。7月13日の記者会見では「保安院が原子力政策を進める経産省にあることでチェックが不十分になった」と、事故拡大の原因の一つとして保安院を名指ししている。
一方、経産省は、将来の保安院分離は「やむを得ない」(経産省幹部)とするが、「菅内閣ではいじられたくない」(同)という思いが強く「なんとか次の政権で」と先送りを模索している。
海江田万里経産相は1日の記者会見で、保安院の分離・独立には理解を示しつつも「経産省に任せておくと独立できないとの誤解があるが、そんなことはない。内閣官房と協議しながら、経産省自身の手で独立性を高めていく」と、組織改編の主導権を握ろうと躍起。海江田氏と細野氏の権限争いも激しくなりそうだ。与党内からは「首相は経産省を悪者にして、8月政局を乗り切ろうとしている」との臆測も出ており、原発規制行政の組織改編論議は政局的な色彩を強めている。