原田芳雄さん、最後まで心優しき無頼派俳優
アウトローから味わい深い中年男まで圧倒的な存在感で演じ分けた俳優、原田芳雄(はらだ・よしお)さんが19日午前9時35分、上行結腸がんから併発する肺炎のため都内の病院で死去した。71歳だった。今月11日に主演映画「大鹿村騒動記」のプレミア試写会で行った舞台あいさつが公の場で見せた最後の姿に。同作は16日に公開され、最後の主演作公開を見届けるように息を引き取った。
高校を卒業後、モーター農機具の販売会社に勤めたが、日本人形の職人だった父親と衝突して家出。バーのボーイや日雇い労働など職を転々として俳優座養成所に入った。
70年の『反逆のメロディー』で演じた長髪にジーンズの一匹おおかみのヤクザ役は、映画の様式美を破壊するようなエネルギーにあふれ、若者が体制にあらがっていた時代の空気を吸い込んで撮影された作品。“アウトロー”を印象づけるきっかけとなった。74年の主演映画『竜馬暗殺』で共演した故松田優作さん(享年40)は原田さんに影響を受け、発声やしぐさを参考にしたといい、“男が惚れる男”だった。独立プロや若手監督の作品にも積極的に参加。「いい映画ができればそれでいい」とノーギャラでの出演も多く、出演作の9割は独立系だった。
2000年以降はホームドラマにも登場。無口で不器用だが心根は温かい父親を演じ、新境地を開いた。一方でアウトローの情熱も燃やし続け、遺作となった主演作『大鹿村騒動記』ではサングラスにテンガロンハットをかぶった武骨な主人公を志願して演じた。今月11日の舞台あいさつには車いすで現れ、今の自分の姿をありのままにさらし、最後までアウトローの生きざまを貫いた。