三鷹市芸術文化センターの名物企画開幕
「MITAKA“Next”Selection 12th」の季節がやってきた
芸術監督に野田秀樹氏が就任するや、日本の若い劇団をクローズアップした企画や海外作品の招へいなどでラインアップが大きく変わった池袋の東京芸術劇場。2011年1月に開館した神奈川芸術劇場は宮本亜門芸術監督のもと「文学」を劇場のカラーとし、独自の取り組みを見せる。
最近、公共ホールが活発に活動中なのだが、そんななかで忘れちゃいけないのが、三鷹市芸術文化センター。ここでは2001年から「MITAKA“Next”Selection」という企画で、若く才能のある劇団を発掘してきた。
12回目を迎える今年は7月29日から開幕。個性にあふれた粒ぞろいの3劇団が揃った。
また同センターでは三鷹にゆかりのある太宰治にちなんだ「太宰を聴く」いう朗読企画や「太宰治作品をモチーフにした演劇」という演劇公演など地域に密着した“ならでは”な企画も盛りだくさんだ。
そんなあらゆる企画にプロデューサー的な立場でかかわるのが三鷹市芸術文化振興財団の演劇企画員の森元隆樹氏。
「MITAKA “Next”Selection」は森元氏が立ち上げた企画で、過去のラインアップを振り返ると、その後、大きく飛躍した劇団名が目につく。また岸田戯曲賞を受賞した作家も5人輩出。ちなみに2010年の受賞者である柴幸男は、この企画で上演された作品で受賞している。
三鷹は平日に足を運ぶとなると、会社勤めの人にはちょっと遠く感じる場所かもしれないが、新宿からは中央線の快速ならたったの17分。間違いのない作品を見ることができると思えば、「三鷹で観劇」、悪くない。
青年団リンク 青☆組 vol.13 『忘却曲線』(撮影:Dragon Ya)
青☆組『パール食堂のマリア』
〈上演期間〉7月29日(金)〜8月7日(日)「主宰の吉田小夏さんは、そこに、いつものように人が立ち続けることの重さや業といったものをしっかりと書き綴る。ここ数作は演出力が飛躍的に伸びてくるとともに、脚本の奥行きが深くなり、持ち前の叙情性がほどよい具合に作品に盛り込まれるようになった」(森元氏談) 【劇団HP】http://aogumi.org/
青年団若手自主企画vol.47『不機嫌な子猫ちゃん』@アトリエ春風舎
水素74%『謎の球体X』
〈上演期間〉9月2日(金)〜11日(日)「何気なく交わされる会話が積み重なっていくうちに、いつしか人間関係の隙間という隙間に軋みをあげて放たれていくセリフの角度が素晴らしい劇団。人間の弱さや狡さや能天気さを独特のユーモアを持った視線で見つめ続ける。癖があり、そして癖になる脚本」(森元氏談) 【劇団HP】http://hydrogen74.com/
第4回東京・大阪ツアー公演『恋2』(撮影:たばたまみ)
ろりえ『三鷹の化け物』
〈上演期間〉9月30日(金)〜10月10日(月・祝)「面白さへの嗅覚は抜群。切れ味のあるセリフで魅せてくれるのだが、演出力や構成力が散漫で、やや大味になる嫌いがあった。しかしここ数作の脚本・演出力の向上は目を見張るものがあり、まさに何かをつかんだよう。三鷹で何を見せてくれるか、期待したい」(森元氏談) 【劇団HP】http://rorie.jp/