政府債務上限引き上げ法案も米に「日本化リスク」

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 米議会下院は1日、連邦債務の上限引き上げをめぐる法案を賛成269、反対161で可決した。2日には上院でも74対26で可決。オバマ大統領が同法案に署名し、成立した。大統領に対し、債務上限を段階的に2兆1000億ドル(約160兆円)引き上げる権限を与え、2013年までの財源を確保できる。

 果たして、今後米経済はどう推移していくのか――。

 今の米経済は経済が長期低迷する「日本化リスク」状態。ウォール街では「ジャパニフィケーション」と呼ばれている成長欠乏症だ。

 米失業率は9%以上で高止まりし、過去1年間の国内総生産(GDP)成長率は1.6%と事前予想を大幅に下回った。製造業者の景況感を示す7月のISM製造業部門景気指数も2年ぶりの低水準だ。

 二番底リスクを回避したくても、債務上限で米政府は兵糧不足。だからこそ、民主党と共和党が財政赤字削減で大筋合意した1日の株価は7日続落となった。

 家計にとって、08年来の金融緩和は貯蓄率の上昇につながっただけだった。08年の金融危機前は0〜1%だった貯蓄率は、09年以降は5〜6%で推移している。雇用不安と住宅価格の低迷という逆資産効果により、これまで米国の成長を支えてきた個人消費にマネーが回っていない。

 リスク回避志向は、企業も同じ。ミクロ経済の体温計ともいえる企業決算は好調だが、稼いだ現金が設備投資に向かわず、自社株買いに集中した。

 過去200年の金融危機を研究したロゴフ・ハーバード大教授らによると、政府債務がGDPの90%を超えた国の経済成長率は約1%落ち込むという。米政府債務は、昨年末でGDPの93%。足元の低成長を見る限り、この法則に当てはまる。民間の過剰債務を政府に付け替え、景気回復による税収増を当て込む−というのが典型的なサイクルだったが、破裂したバブルの規模が大きすぎた。何もかもが日本とうり二つなのだ。