日本メーカーには脅威となるグーグルの米モトローラ買収
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米インターネット検索大手グーグルは15日、米携帯電話端末大手モトローラ・モビリティ・ホールディングスを125億ドル(約9600億円)で買収することで合意したと発表した。グーグルはスマートフォン(多機能携帯電話)向けの基本ソフト(OS)「アンドロイド」を携帯メーカーに提供してきたが、モトローラ買収で端末事業に自ら本格参入する。
この背景には、米アップルなどライバル陣営との間で激化の一途をたどる特許紛争がある。グーグルは今回の買収で優位に立ちたい考えだが、グーグルの基本ソフト(OS)に依存する日本メーカーにも余波が及ぶ可能性がある。
グーグルは、買収によって膨大な特許を手に入れるのに加え、独自端末の開発に乗り出す可能性がある。そうなれば、日本メーカーとの競合は避けられず、競争激化は必至だ。
グーグルの端末事業進出による不安は、パソコン事業の現状から予測できる。
パソコンではほとんどの製品がOSに米マイクロソフトの「ウィンドウズ」を採用し、心臓部分の半導体に米インテルの製品を使っている。パソコンメーカーに独自開発の余地は乏しく、開発速度もMSやインテルへの情報収集力が左右する。日本メーカーには事実上、主導権がない。
スマートフォンも同様だ。開発・製造する日本の携帯端末メーカーはすべて、グーグルのOS「アンドロイド」を採用している。独自開発の範囲は限られる。
そんな中、グーグルが端末開発に乗り出せば、日本メーカーの立場はさらに不利になる。
もともと高機能端末は日本市場でいち早く普及した。海外進出ももくろんだが、当時は通話機能中心の低価格品が主流だったため普及しなかった。その結果、日本の高機能端末は国内で独自に進化した。「ガラパゴス」と揶揄された背景でもある。
スマートフォン市場の世界的な拡大は、本来なら、「日本の技術を生かし海外に再進出するチャンス」(NECカシオモバイルコミュニケーションズの田村義晴社長)だ。しかしグーグルの出方次第では、国内市場すら奪われかねない。
すでに米アップルや韓国サムスン電子に国内市場を荒らされており、これ以上の“黒船来航”は死活問題となる。