東電が賠償金算定基準示すも根拠はあいまい

 東京電力は21日、福島第1原子力発電所事故で被害を受けた農漁業者や個人事業者、法人に対する賠償金の算定基準を発表した。出荷停止や営業停止、風評被害による減収を対象に逸失した利益を補償する。福島、茨城、栃木、群馬4県の観光業の風評被害では、原発事故以外の震災による影響もあるとして一律で減収の20%分を補償の対象外とすることを盛り込んだ。

 賠償基準は、政府の原子力損害賠償紛争審査会の中間指針に基づき作成した。(1)避難指示による休業(2)政府や自治体などによる出荷停止(3)風評被害−などに分類。前年の売上高に比べた減収分を対象に、事故がなければ得られたはずの利益を補償する。

 今回の算定基準は、休業や風評被害などケースごとに多岐にわたり計算式も複雑だ。観光業の減収分の20%除外など根拠があいまいな部分もあり、今後、東電と被災者の間で行われる交渉で紛争の火種となり、長期化する恐れがある。賠償の期間や土地・建物といった資産も対象になるのかなど未確定の要素が多く、被災者の不安は解消されないまま。

 東電本店で21日会見した広瀬直己常務は「20%」の根拠を問われると「満足してもらえないかもしれないが、これがこちらの考えだ」と語った。阪神・淡路大震災を参考にした「合理的な水準」としているが、説得力は乏しい。