松田美由紀インタビュー 大森南朋を撮る!
月刊MENで大森南朋を撮りおろし!
女優、写真家、さまざまな作品制作やディレクションも手掛ける表現者・松田美由紀。そのパワフルな行動力、鮮烈な才能は世代・性別を超えて多くのファンを生んでいる。そんな彼女が写真家として選んだ被写体は俳優・大森南朋。発売前から話題を集める写真集の撮影秘話とは?
撮影・宮上晃一 ヘアメイク・中村兼也(BERONICA)
「月刊さんから“次は誰を撮りたい?”という話になったとき、ふと大森南朋さんが浮かんだんです。それで即、自分で大森さんに電話をしたんです(笑)」
そのとき、大人を撮りたいと思っていたのだという。
「若い世代だと、バーチャル的なことが魅力になったりもするでしょう。“王子様”みたいな。でも大人って、対面してコミュニケーションできる存在感、リアル感に魅力があるというか。そばにいてくれる、体温を感じる良さがある。そういう意味でも、まさに大森さんだったんです」
映像作品を見て、その男性的な存在感や、無邪気な笑顔、官能的な魅力を感じていたファンは多いだろう。
「彼は映像畑の人だから、静止画の印象があまり無いと思うんですよね。でも、すごくかっこいい表情をしても映像だとすぐ流れちゃうでしょう。写真なら、それをじっくり見ることができるんですよ!(笑)」
ページをめくるたび、大森南朋の体温や、くゆらせる紫煙の香りすら感じとれそう。これでドキドキしない女子なんていないはず。
「写真家・松田美由紀の自信作です。 どれも“ひゃー”ってなるくらいカッコいいですよ。我ながらいい仕事をしたなあ(笑)」
撮影はすべて台北で行われた。
「アジアの混沌とした熱気とか、路地裏が似合うなと思ったんですよね。設定としては、刑事にも見えたり、マフィアにも見えたりする男」
確かに、そこには“撮影のために日本から来た俳優”はいない。いるのは、台北の路地裏に生きる男だったり、高級ホテルを根城にする大物だったり…。どのショットも、アジアンノワール映画のワンシーンかポスターのよう。それなのに、他人には見せない素の大森南朋を垣間見ているような、リアル感。
「それが私の作品の醍醐味としたいところなんですよね。ドキュメンタリー感をすごく大事にしています。映像のような写真を撮る、というのが一番の持ち味かなと思っているんですが、今回はそこが強く出たので良かったな、と」
バスタブで、ベッドで…ホテル室内で撮影された写真は、ささいなしぐさや視線がとても官能的。
「この表情が撮りたくて、スタッフ全員、部屋から出して撮影したんです。大森さんと密室で2人きり。“2人でセクシーな感じになろうね!”って(笑)。最初はクスクス笑っちゃって、なかなか撮れなかったんですけど、彼も私も俳優なので、スイッチの入るタイミングが瞬時に伝わり合うというか。そのあたりはやりやすかったですよね」
写真家・松田美由紀の、こだわりの部分とは?
「光の使い方ですね。とくに自然光の使い方には、かなりこだわります。ロケハンのときも光の具合を見ながらポイントを探すんですよ。スタッフは大変ですよね。光の状況に合わせて私が動くから、今からお昼というときに “今だ!撮るよ!”なんてことはしょっちゅう(笑)」
女優、写真家、映像やアートのディレクター…さまざまなジャンルで活動する松田のルールは「まずいラーメンは作らない」こと。同じものばかり作り続けて気づけばまずくなっている…そんな作り手にはなりたくないという。
「“飽きる”ということが嫌なんです。いつも新鮮に感じていたい。それは仕事でも人との付き合いでも一緒。なあなあになったり、慣れきってしまうのは嫌。まったく別のことに挑戦して、後でまた帰ってくるとすごく新鮮な感動を覚えるんですよね。いつも新人みたいな気持ち。その代わり、今やっていることに対しては完全に没頭しますね。集中力がハンパ無いのか他のことを一切気にかけなくなってしまうんです。普通は、1日が終わったら、自分のことでも家庭のことでも他に考えなきゃいけないことってあるでしょ。でも私は全部忘れちゃう(笑)。いつも全力投球だから、その時々でまったく別人になれる。女優のときと裏方のときなんて完全に別人ですよ(笑)」
この秋は『MADE IN JAPANこらっ!』『恋谷橋』など出演映画も続くが、ぜひ本書で写真家・松田美由紀のインパクトを感じてほしい。
(本紙・秋吉布由子)
「月刊MEN 大森南朋」撮影:松田美由紀 発売中 価格:2625円 http://www.gekkan.jp/★主演映画『MADE IN JAPANこらっ!』公開中/『恋谷橋』11月12日公開★初のエッセイ集「好き好き大好き!」(講談社)が11月24日に発売予定。 |