仲里依紗インタビュー 妊婦ヒーローになる!

気鋭・石井裕也監督最新作で“妊婦ヒーロー”役! 『ハラがコレなんで』

判断基準は粋か粋じゃないか。自分のことより他人のことを優先させる“妊婦ヒーロー”登場! この個性的すぎるキャラクターも、彼女が演じれば愛すべき主人公になる。注目の実力派女優・仲里依紗を直撃!

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ヘアメイク:宮澤譲 スタイリスト:栗田泰臣(エトレンヌ) 撮影:神谷渚

 思えば『ゼブラーマン ーゼブラシティの逆襲ー』をはじめ個性的なキャラクターを演じることが多いような…。「お話を頂いて脚本を読んでみると“今度もユニークな人物だなあ”って思うことが本当に多いんですよ。そういう役が求められる何かがあるのかな(笑)」

 本作で演じるのは、さまざまな人を勇気づける妊婦という役どころだ。

「何しろ“妊婦ヒーロー”ですからね。最初にその言葉を監督から聞いたときに“え?”って思いましたよ(笑)。でも演じていくうちに、どんどん分かってきて面白くなっていきました。光子ってすごいんですよ。自分も大変な状況なのにそんなこと全く見せないで人のことばかり心配するし、思い切りの良さとかもハンパないし。そんな自分のペースに、どんどん周りを巻き込んでいくんです」

 光子は、金無し、家無し、ダンナ無しの妊婦。“粋”に生きることを信条とし、少しのことでは動じない。かなり個性的な人物だが、仲が演じる光子は観客の心にすんなりと入り込んでしまう。

「確かにかなり強烈な人物なんですけど、実はちゃんと“女の子”の部分もあって、私はそこがすごく好きなんですよね。ラスト、産気づいた光子が陽一に支えられながら“一人じゃなくてよかった”と言うところがあるんですが、私はそこで、ヒーローじゃない光子の人間性を感じたというか。誰かに支えられてほっとする姿に、安心したんですよね。ただ、光子は一方的にワーッとしゃべるし、自分の妄想でいきなりもらい泣きするし(笑)、相手の人と芝居を作っていくというより、一人芝居状態になりがちだったので、そのあたりが難しかったですね」

 かつて住んでいた長屋に戻った光子は、その“粋”な行動力で長屋の人々に変化をもたらしていく。旬な若手俳優・中村蒼が不器用な青年・陽一を好演。

「蒼くんとは何年かぶりの共演だったんですけど、すごく大人になられていて。この作品が、10代最後の作品だったんですよね。撮影中に20歳の誕生日を迎えたんですよ。大人になっていく姿を見ることができたなあ、と勝手にお姉さん目線で見ていました(笑)。蒼くんて、いわゆる“イケメン”という役が多いイメージがあったので、最初は陽一を蒼くんが演じると聞いてすごく意外に思ったんですよ。だけど、現場に入ったら“陽一”がいましたね。あの、もさっとした感じとか、ぜんぜん蒼くんじゃない(笑)」

 陽一の叔父・次郎役はベテラン・石橋凌。

「石橋さんて、悪役とか重厚な役のイメージがありましたけど、今回は全然違っていて、さすがだなと思いましたね。光子にすごい勢いで一方的に説教されてオロオロして、あげくに頭叩かれて(笑)。石橋さんを叩くってすごい経験ですよね、二度と無いですよ(笑)」

 不器用すぎて幸せをつかめない人々の中に飛び込んだ妊婦ヒーロー・光子の珍妙な活躍に大笑い間違いなし。

「いろんなことがハチャメチャなんですけど、実はすごく大きなメッセージが込められている作品なんです。少しだけでも、自分より誰かのために行動できたら世界は変わるんじゃないか…そんなことを、おもしろおかしく伝えるのも、この映画のいいところだと思います」

 今こそ、求められるメッセージ。そう思わずにはいられない。

「今私が思うのは、自分にできること、目の前にあることをきちんとやろう、ということですね。光子って、とりあえず目の前で困っている人に精いっぱいの手助けをするんですよ。リストラされたサラリーマンになけなしの小銭をあげたり(笑)。後先のこと考えて何もしないくらいなら、小さなことでも目の前のことを片付けていくほうがいい。そうしたらいつかゴールが見えるかもしれない。で、ちょっと道に迷ったら光子のように昼寝して風向きが変わるのを待つ、と(笑)」

 光子を通して女優・仲里依紗の“粋”が伝わる、おススメ映画!

(本紙・秋吉布由子)

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『ハラがコレなんで』

監督:石井裕也 出演:仲里依紗、中村蒼他/1時間49分/ショウゲート配給/11月5日より渋谷シネクイント他にて公開 http://harakore.com/
©2011『ハラがコレなんで』製作委員会