特別背任容疑で大王製紙前会長を逮捕
大王製紙前会長による巨額借り入れ事件で、東京地検特捜部は22日、子会社4社に損害を与えたとして、会社法違反(特別背任)容疑で前会長、井川意高(もとたか)容疑者(47)を逮捕、東京都内の自宅や愛媛県四国中央市の実家など関係先を家宅捜索した。創業家3代目によるグループ企業の私物化は刑事事件に発展した。
逮捕容疑は今年7〜9月、井川容疑者自身が代表取締役会長を務めるいわき大王製紙など子会社4社から、取締役会の承認決議も担保もないまま、7回に分けて総額32億円の融資資金を自分名義の口座に振り込ませ、4社に損害を与えたとしている。
井川容疑者は容疑を認め、「多くはマカオやシンガポールのカジノで使った」と供述。同容疑者が22日に弁護人を通じて発表した文書では、「株式の先物取引などで多大な損失を出した後にたまたま訪れたカジノでもうけ、深みにはまってしまった」などと説明している。
関係者によると、井川容疑者は9月1日から6日にかけ、土曜と日曜をのぞく4日連続で子会社4社に貸し付けを指示。融資総額は10億5000万円に達した。直後の7日、このうちの一部子会社から貸し付けを疑問視するメールが本社に届き、問題が社内で広く知れ渡る端緒になったという。
同社の特別調査委員会によると、一連の融資は井川容疑者が指示。昨年5月に関連会社を迂回させて約5億円を借り入れて以降、今年9月までに子会社7社から26回にわたり総額106億8000万円の融資を得た。大王製紙は、井川容疑者が現金で返済した21億円をのぞく85億8000万円分について刑事告発した。