オリンパスが2月にも役員総退陣 旧経営陣の刑事告発も
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オリンパスの損失隠し問題を調査してきた第三者委員会(委員長、甲斐中辰夫元最高裁判所判事)は6日、調査報告書を発表。下山敏郎、岸本正寿、菊川剛の歴代3社長が、含み損を抱えた金融商品を海外の投資ファンドなどに移す「飛ばし」を認識していたと認定。損失飛ばしと企業買収資金を還流させ、穴埋めした行為について、「金融商品取引法や会社法に違反する行為」と指摘し、関係者の法的責任の追及や関与・認識していた旧経営陣の一掃を求めた。
不正行為は、山田秀雄前監査役と森久志前副社長の2人が主導する形で行っていたとした。当時社長だった岸本、菊川両氏は報告を受け、了承していた。会見で、甲斐中委員長は、岸本、菊川両氏が飛ばしに関連する裏契約書に署名していたことを明らかにし、「共謀していたといえる」と述べた。下山氏は、損失隠しへの関与はなかったが、最高顧問だった平成13年以降に報告を受けた。
損失は、22年3月期までに解消され、新たな損失は確認されなかったとした。不正が10年以上明るみに出なかったことについて、「経営トップ主導の処理・隠蔽」や「長期間にわたるワンマン体制」などを挙げた。また、大手証券会社OBら外部関係者の関与も認定し、「(損失隠しの)手段が巧妙だった」とした。
第三者委の報告を受け、オリンパスの高山修一社長は7日、都内で記者会見し、「現在の役員は、決算訂正など当面の危機対応にめどをつけた上で交代する」と述べ、早ければ2月後半に開く臨時株主総会で、現経営陣は総退陣する方針を表明した。また不正に関わった菊川剛前会長兼社長ら旧経営陣に対しては「刑事告発を検討している」と述べ、法的措置に踏み切る考えを示した。調査委員会を設置し、旧経営陣に損害賠償を求めていく方針も明らかにした。
現経営陣の辞任時期について、高山社長は「(臨時株主総会で辞任する)可能性がかなり高い」との認識を示した。臨時株主総会は、大株主である米投資会社などが開催を要求している。ただ、開催の手続きには2カ月ほどかかるため、早くても2月後半になる見通しだ。
また第三者委の報告に基づいて、外部の弁護士からなる2つの「調査委員会」を設置。損失隠しが始まった1990年代後半以降の経営陣約70人を調査し、民法上の善管注意義務違反が確認できれば、損害賠償を請求する方針だ。企業統治(ガバナンス)の強化のため経営陣から独立した「経営改革委員会」も発足させる。今後は同委が経営改革の監視役となり、新経営陣の選任や事業計画策定などへの指導・勧告を行う。
損失隠しで失墜した信用の回復に向け経営陣の刷新を打ち出したオリンパスだが、社長復帰を目指し、一部の大株主が支持しているマイケル・ウッドフォード氏を迎え入れることは拒否する構えだ。しかし「委任状争奪戦(プロキシファイト)」による抗争が激化すれば、企業統治(ガバナンス)の強化などの社内改革や旧経営陣への責任追及など山積する課題が置き去りになり、再生が遠のく懸念は拭えない。