違法操業の中国船員が襲撃 韓国海洋警官2人死傷

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 韓国海洋警察庁によると12日午前7時ごろ、同国西方の韓国領海内の黄海で違法操業の中国漁船を取り締まっていた海洋警察官2人が中国側乗組員に襲撃され、1人が死亡、1人が重傷を負った。韓国側は漁船を拿捕(だほ)、乗組員9人を拘束した。

 海洋警察は同日午前5時半ごろ、黄海上で違法操業している中国漁船を確認した。特別取締隊員が漁船に乗り込み拿捕・捜索手続きに入ったが、操舵室にいた船長とみられる男が窓ガラスを割るなど激しく抵抗。隊員の2人が腹部に深い傷を負って病院へ運ばれ、1人が死亡した。

 黄海の韓国領海や排他的経済水域(EEZ)では近年、中国漁船の違法操業が多発し、韓国側が取り締まりを強化していた。韓国当局によると、EEZ内で拿捕された中国漁船は2006年からの4年間だけで1746隻に上る。

 13日には韓国海洋警察当局が、海洋警察官2人を殺傷した中国漁船の船長ら9人について、殺人容疑などで逮捕状を請求。同時に、殺傷に使われた凶器が刃渡り17センチの刃物だったことを明らかにした。船長は容疑を否認しているという。

 一方、韓国政府は同日、違法操業取り締まりと、人員や装備面などで海洋警察力を強化する方針を決めた。青瓦台(韓国大統領府)報道官によると、李明博大統領は閣議で「関係官庁が協議のうえ根本対策を講じるべきだ」とし、外交的なものは外交的に、海洋警察の問題は海洋警察で対策をとるよう指示。外交問題と刑事責任を整理し、事態に臨む姿勢を強調した。また、外交通商省報道官は会見で、中国政府に対し(1)漁業従事者に対する啓蒙(2)自国の違法漁獲活動に対する取り締まり強化−の2点を求めたことを明らかにした。ただ、謝罪要求など強硬な姿勢は取らず、再発防止に向け今後も中国側と協議していく構えを見せた。

 ソウル市中心部にある中国大使館前ではこの日、保守系団体の約300人が抗議集会を開き、中国政府に謝罪を要求した。

 一方、中国外務省の劉為民報道官は13日の定例会見で「不幸な事件であり、韓国海洋警察官が死傷したことを遺憾に思う」と述べ、事件後初めて遺憾の意を表明した。

 事件直後の12日の定例会見では、劉報道官は謝罪の言葉を口にせず、韓国メディアから厳しく批判されていた。