民間事故調が報告書 福島原発事故時の官邸の介入を批判

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 民間の有識者でつくる「福島原発事故独立検証委員会(民間事故調)」(委員長、北沢宏一前科学技術振興機構理事長)は2月27日、東京電力福島第1原発事故の調査報告書を発表した。報告書は、直接事故対応に乗り出した官邸の現場介入が「災害の拡大防止に役立ったかどうか明らかでなく、無用の混乱と事故がさらに発展するリスクを高めた可能性も否定できない」と批判。電力事業者、規制当局など「原子力ムラ」が生み出した原発の「安全神話」が、事故の遠因になったとも指摘した。事故調は、官邸で事故対応にあたった菅直人前首相ら政治家のほか、原子力安全委員会の班目(まだらめ)春樹委員長らから聴取した。東電は聴取に応じなかったという。

 報告書は、本来は事業者などが行う事故対応に、官邸が直接乗り出した経緯を分析し、地震・津波と原発事故という複合災害への備えを欠くマニュアル、危機対応に関する政治家の認識不足、首相のリーダーシップのあり方などに問題があったと指摘。「首相ほか官邸中枢は、異様な緊張状態と混乱に陥った」とした。

 有効活用されなかった放射性物質の拡散予測システム「SPEEDI」については、菅氏ら官邸トップがその存在すら知らなかったことを証言から裏付け、「宝の持ち腐れに終わった」と結論づけた。

 事故直後に東電が政府に「全面撤退」を申し入れたとされる問題では、東電の「必要な人員は残すことを予定していた」との主張を「信用するに足る十分な根拠がない」とした。

 事故の遠因とした原発の「安全神話」は、安全性への疑念を否定するために事業者などが「絶対的な安全性」を強調することで、広く受け入れられたとした。

 また、安全規制関係者が複合災害の可能性を低く見積もり過ぎていたとし、保安院の人材の脆弱さが、事故対応の遅れの直接原因になったとした上で、「東電に対しては、事故の進展の後追いをする形で報告を上げさせる、いわば『御用聞き』以上の役割を果たすことができなかった」と厳しく指弾した。

 政官業とは一線を画した立場からの報告は、菅直人前首相の行動を「混乱や摩擦のもとになった」と批判する一方、東電の事前対策の不備を「人災」と断罪。他の事故調が出した報告書とは異なり、当事者責任に深く踏み込んだ。

 東電に対しても、国際原子力機関(IAEA)の原則を引用して「第一義的な責任を負わなければいけない」として追及しており、過酷事故への備えがなく、冷却機能喪失に対応できなかったことを「『人災』の性格を色濃く帯びる。『人災』の本質は東京電力の過酷事故の備えの組織的怠慢にある」と言い切った。

 菅前首相は28日、民間事故調の報告書について、「今回の原発事故において最も深刻だったのは、3月15日未明からの『東電撤退』をめぐる動きだった」とした上で、菅氏が撤退を拒否したことを、事故調が「今回の危機対応における一つのターニングポイント」と結論付けたことなどについて「大変ありがたいと感じています」と評価するコメントを発表した。

 一方、東京電力は28日、事故調の聴取に応じなかった理由について、「基本的に民間の任意団体。事故収束に取り組むことを優先順位の第1とした」と釈明した。