平成24年春闘でボーナス前年割れ続々 シャープは定昇凍結も

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 平成24年春闘は14日、自動車や電機、鉄鋼などの主要企業の経営側が労働組合側に一斉回答を行った。東日本大震災や歴史的な円高による業績悪化を受け、シャープが定期昇給(定昇)の一時凍結に向けた協議を労組に申し入れたほか、年間一時金(ボーナス)は、軒並み前年実績を下回る回答となった。賃金水準を引き上げるベースアップ(ベア)は、要求そのものを見送った主要労組を含めゼロ回答で、サラリーマンの賃金環境は一段と厳しい状況となる。

 賃金が増えない一方で、消費税増税などの負担増や社会保障制度への将来不安から、家計が身を縮め、個人消費が冷え込む懸念が高まってきた。消費が低迷すれば、企業の業績は一段と悪化し、賃金もさらに減るという悪循環に陥り、経済規模がどんどん縮小していくデフレに拍車がかかる。悪循環を断ち切るには、企業の成長力を高める政策の総動員が急務となってきた。

 今春闘は、勤続年数や年齢など賃金体系に基づき基本給が上がる定昇を維持できるかが最大の焦点だった。自動車各社のほか、業績が大幅に悪化している電機でもパナソニックや日立製作所、東芝は維持を回答。一方で、24年3月期に2900億円の最終赤字に転落するシャープは維持を回答した上で、一時凍結の期間などについて協議を継続した。主要企業での定昇凍結は、リーマン・ショックで業績が悪化した21年以来3年ぶり。

 三菱重工業など造船重機の労組が要求したベアは経営側がゼロを回答した。

 ボーナスはトヨタ自動車が賃金5.0カ月分プラス3万円(平均178万円)の要求に満額回答したが、要求段階で昨年実績から3万円引き下げていた。ホンダも5.0カ月(同183万1000円)の満額回答だが、昨年実績から0.9カ月分のマイナス。日産自動車は、昨年実績と同じ5.5カ月の要求に対し、5.3カ月(同196万4000円)の減額回答となった。

 電機のボーナスも、日立が5.5カ月の要求に対し5.28カ月、三菱電機が6.04カ月に対し5.67カ月の減額回答。業績連動のパナソニックやシャープも含め昨年実績を下回る。

 経団連の米倉弘昌会長は14日、平成24年春闘について、記者団に対し「厳しい経営状況の中、企業の存続、発展と従業員の雇用維持を最優先にしながら、震災からの復旧、復興に向けた従業員の苦労に報いるために精いっぱいのことをやった結果だ」と述べ、主要企業の回答を評価した。

 一方、連合の古賀伸明会長は14日の会見で、「定昇維持かそうでないか、ぎりぎりの交渉の中で引き出した回答は重みがある」と、交渉の成果を強調。「今日までの回答をバネにしたい」と述べ、今後本格化する中小企業などの交渉に期待感を示した。