東京食道楽第82回

吉沢悠が欲する辛い韓国料理が食べられるお店。

代官山・李南河
撮影のため、1カ月以上韓国に滞在していた吉沢。「韓国は肌が合うんです」という言葉通り、韓国のキャストやスタッフとも打ち解け、食事も満喫してきた様子。また食べたくなるという味を求め、韓国料理店で話を聞いた。
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撮影協力:李南河/撮影:今井七生

 日本統治時代の朝鮮半島に渡り、山林の復元など、民族の壁を越え活躍した浅川巧。その生涯を描いた映画『道―白磁の人―』に主演の吉沢は、撮影のため1カ月以上韓国に滞在し、毎日韓国料理を食べていたという。そんな懐かしい料理を味わいながら、撮影を振り返る。 「今回の作品は、実在の人物の若い時から亡くなるまでを演じたのですが、ここまで一人の人間の生涯をやったのは初めてだったので、難しかったです。日本と韓国の教科書に載るほどの人ですが、彼のことを知らない人も多いと思うので、ぜひこの機会に知ってもらいたいですね。素晴らしい人だと共感はできますが、あの時代に敵も味方もなく人間は平等だということを行動で示すというのは、自分ならどうかと考えてしまいます」  映画の中では、ペ・スビン演じるイ・チョンリムとの国境を越えた友情が軸にストーリーが進んでいくが、実際はどうだったのか。 「高橋監督が制作発表で、僕が演じた浅川巧と、ペ・スビンが演じたイ・チョンリムが役を越えて、本当の友情を育めればこの映画は成功だっておっしゃったんですが、人種や言葉の壁を越え、彼とは本当に仲良くなれた。そんな雰囲気もスクリーンを通じ感じていただけたらうれしいですね。もちろん、今でも交流はあります。趣味もそうですし、普段の生活や仕事に関する考え方とか、人生観が似ていて、共感し合えたことがいっぱいありました。彼はメールをしないので、電話で連絡を取り合うんです。アナログがいいって言っていて、そういうところも彼らしいって納得できる(笑)」
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(1)「海鮮チヂミ」(1380円)。一度食べたらほとんどの人がリピートする人気メニュー。 (2)のり、チャンジャ、きゅうり、ニンニクの芽、大根、白菜、さきイカ、青菜・小松菜のキムチがきれいに盛りつけられた「李家キムチ」(1370円) (3)「特選黒毛和牛ハネシタ三種葱のナムル」(2940円)。サッと焼いたものを塩で食べると、肉の旨みがダイレクトに口に広がる。 (4)「豆富チゲ」(1100円)

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 撮影中はずっと韓国に滞在し、毎日韓国料理を食べていた吉沢。帰国してからもブームは続いているとか...。 「韓国料理は好きだったので、全然苦じゃなかったです。基本的に全部辛いんですけど、納豆チゲとか日本っぽい感じのあっさりしたものもありました。特に好きなのがサムゲタン。夏バテしないように家庭でも作るらしく、しょっちゅうではありませんが、何回か食べました。日本に帰ってきたら、和食が食べたくなるかと思ったら、すぐに新大久保に行って韓国料理を食べた(笑)。冷蔵庫には常にキムチが入っているし、辛い物を食べるのが習慣になったから、体が欲したのかも」  そんな懐かしい韓国料理を求めて訪れた店では、メニューを見ていて気になったという海鮮チヂミをオーダー。料理が運ばれてくると、その見た目に驚愕! 「何これ? 大きいし分厚くないですか?チヂミってこう、もっと薄いものだと...。(一口食べて)すごくふわふわしているんだけど、食べたらモチモチでおいしい! 人気があるの分かります。絶対僕もリピートしちゃいますね。このキムチの盛り付けもきれい。韓国ではキムチの味が作る人によって全然違うんです。家庭の味なのかな。ちょっと甘めのもあるんですけど、それは苦手なので、このお店のぐらい辛いのが、食べやすくていいですね。僕はチゲにはそうとうこだわりがあって、ひそかにナンバーワンって思っているお店が大阪にあるんですけど、このお店のチゲもそこに引けをとらないぐらい相当おいしい。辛さも効いているし、これはかなりレベルが高いですね」  運ばれてくる料理を楽しそうに食べる吉沢は、毎日キャストやスタッフと食べた韓国での日々を思い出しているのだろうか。自分の仕事に信念と情熱を持ち、真っ直ぐに突き進む映画の主人公の姿は、役者の道をしっかりと歩んでいる吉沢の姿と重なって見えた。
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李南河

【住所】渋谷区代官山20-20 モンシェリー代官山 B1F 【営業時間】17~翌1時(0時L.O.) 【定休日】無 【問い合わせ】03-5458-6300


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INFORMATION

日韓の歴史に秘められた感動のヒューマンストーリー

 日本が韓国を併合してから4年後の1914年、ひとりの日本人が京城(日本統治時代のソウル)にやって来た。林業技師として朝鮮の山々を緑に戻す使命を抱いたその青年が、吉沢演じる浅川巧だ。彼は、日本人の多くが朝鮮人を蔑視し、日本の風習や価値基準を押しつける中、朝鮮語を学び、白磁に代表される朝鮮の文化や工芸品の素晴らしさを見出していく。朝鮮語の先生でもある職場の同僚、イ・チョンリムと共に山を歩き、語り合い、多くの山々を緑に戻し、民族の壁を越えた友情を築いて行く中、チョンリムが抗日運動の罪で投獄されてしまう。  浅川と民族の壁を越え友情を育むイ・チョンリム役には、ドラマ『華麗なる遺産』などで人気のペ・スビン。そのほか石垣佑磨、塩谷瞬ら若手俳優に加え市川亀治郎、酒井若菜、田中要次、堀部圭亮、大杉漣。手塚理美らの実力派俳優陣が集結。監督の高橋伴明が、当時の日本人の姿と日韓関係、そして時代と国境の壁を越える友情の物語を丁寧に描く。

『道―白磁の人―』
6月9日、新宿バルト9、有楽町スバル座他にて全国ロードショー 【URL】http://hakujinohito.com