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野田佳彦首相は21日の衆院社会保障・税一体改革特別委員会で、一体改革関連法案に関して「『政治生命を懸ける』と言った言葉は重い」と述べた。さらに「先送りして決められない政治となったときのリスクが一番大きく心配だ」と述べ、増税法案が不成立となれば国際社会での評価低下を招きかねないとして、野党側の協力を求めた。衆院選挙制度改革に関し一票の格差是正が実現しなくても「解散権は縛られるものではない」と強調した。野党による質問が始まったこの日は、自民党が参院で問責決議を受けた田中直紀防衛相ら2閣僚の更迭「Xデー」と位置付けていたのだが、首相は「職責を果たしてもらいたい」と述べ、続投させる考えを改めて表明した。
首相は22日の衆院社会保障・税一体改革特別委員会では、会期末を6月21日に控え、消費税増税を柱とする一体改革関連法案の審議が遅れ気味になっていることについて「日程がタイトなのはひしひしと感じている」と述べ、会期延長に含みを持たせた。
首相は一体改革関連法案について「今国会中に成立を期すのが基本だ。衆院を通過するだけでなく当然参院でも採決してもらう」と強調した。
自民党の田村憲久衆院議員の質問に会期延長の言質は与えなかったが、野党は衆院特別委で100時間以上の審議を求めており、現時点で与野党合意している審議時間は24日までで28時間15分。連日審議を強行しても衆院通過は6月中旬となる。参院の審議時間は衆院の「7かけ」が慣例とされ、最低70時間は確保しなければならない。つまり法案の可決、成立は最短でも7月上旬となり、少なくとも1カ月の会期延長は不可避だ。
にもかかわらず、政府・民主党で会期延長についてまともな議論が進まないのは、輿石東幹事長らが一体改革関連法案を継続審議にして衆院採決を回避し、会期末で国会を閉じようと画策しているからだとされる。小沢一郎元代表のグループが造反すれば党分裂が避けられないからだ。
そんななか、野田首相と小沢氏が29日か30日にも会談する方向で調整が進められた。その場で小沢氏の協力を取り付けることができれば挙党態勢を確立できるが、決裂すれば党分裂は秒読み段階に突入する。首相は複数回にわたって会議し、説得する意向という。
もっとも衆参ねじれ下では、小沢氏の協力を取り付けたところで自民党の協力がなければ消費税法案は成立しない。そして自民党が協力の条件に掲げるのは小沢氏との決別。
その自民党は22日、国会内で役員会を開き、消費税増税関連法案の審議を通じ野田佳彦首相らを追及し、今国会で衆院解散に追い込む方針を確認した。自民党、小沢氏の双方に"色目"を使う首相の「二股戦術」に自民党が反発した形となった。
一方、衆院「一票の格差」是正など選挙制度改革に関する与野党幹事長会談が23日に開かれたのだが、輿石氏は先の与野党協議会で破談したはずの樽床伸二座長(同党幹事長代行)の私案を再度説明しただけで新提案はなく、物別れに終わった。幹事長レベルで協議を続け、6月21日までに合意することは確認したが、各党の距離が縮まることはなかった。
野田首相は解散阻止に動く小沢氏を牽制するためにも、選挙制度改革を早期に決着させ、解散権をフリーハンドにしたいところなのだが、「解散封じ」に向け与野党合意を遅らせる輿石氏の術中に、まんまとはまった形となっている。