マーケットを広げ、ダンスをビジネスに

JSDA 日本ストリートダンス協会を設立し、ダンスとビジネスを結びつけているエイベックス・プランニング&デベロップメント株式会社。同社の社長であり、JSDAの理事長をつとめる青木義人氏が設立の経緯と今後の展望を語る。
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撮影・蔦野裕

エイベックス・プランニング&デベロップメントについて

「夢をキーワードにアーティスト開発育成事業、コンテンツエージェント事業、空間開発事業の3つの事業を展開しています。まず、アーティスト開発育成事業は、全国展開するエイベックス・アーティストアカデミーを中心に、人材発掘の他、アーティストやダンサーを目指す人や、自社アーティストのスキルを高め、より質の高いエンタテイナーへの育成・支援をしています。次にコンテンツエージェント事業ですが、人や物、知財をグループ内外のコンテンツと結びつけ、新しい価値、ビジネスを創りだしていくという事業です。例えば、エイベックス・アーティストアカデミーで開発されたダンスカリキュラムをエイベックス・ダンスマスターという形でライセンス化し、現在全国140店舗で展開、今も成長を続けています。さらに、育成しているエンターテインメント人材をさまざまな企業にキャスティング・派遣を行う、エイベックス・プロワークスというサービスも展開しています。例えば急きょ100名以上のダンサーやエキストラが必要となった場合でも、現在1万4000名の人材がいるので全国規模で迅速に対応が可能です。これは受講生の活躍の場を創出すると同時に、満足度も高まるという利点もあり、ダンスマーケットの拡大と共に、今後の成長を支える事業となると考えています」

JSDA 日本ストリートダンス協会の設立経緯

「以前ダンス番組を手掛けた際、ダンスの仕事をしたい、ダンスで食べていきたいなど、多くの思いや、話をダンサーから聞きました。私たちは音楽とダンスでさまざまな恩恵を受けてきました。でも一方で好きなダンスでは食べていけない人たちが数多くいる。そんなダンサーたちの思いを何とかしたい、ダンスで食べていける、仕事としてダンスを確立するというのが、JSDA 日本ストリートダンス協会設立のきっかけです。しかし、ただ協会を作っただけでは、ダンサーとして食べていくことはできません。その実現のプロセスとして作ったのが実はエイベックス・アーティストアカデミーです。これは、弊社のアーティストスキルを高める必要性、新人発掘、育成など複合した目的がありました。そして、それを一般に開放すると同時に、ダンスにおいて、教育という形でインストラクターの仕事の創出をしたわけです。そして、今少しずつ形となり、次のステージに向かい始めたと感じています」

JSDAストリートダンス検定やJSDA会員について

「まず検定は、単なる試験ととらえると、目的とする本質は見えません。ダンスマーケットの拡大、ビジネス化を考えた時、その先に必要性を感じたからです。他のスポーツでも、より上を目指すには基礎、土台がしっかりしていなければいけません。それには、学ぶプロセスが明確で、整理・体系化された基準を作ること。より多くの人に受け入れられる環境を整えることが必要です。そして、それが実現することで、ダンスにおける全体的なレベル向上に加え、ビジネスニーズに的確に対応する事ができると思ったからです。例えば現在、ダンスワークのオファーが増えています。人気の高いものは何百人ものダンサーの応募があります。その都度オーディションをするのは現状、時間的、物理的にも困難な状況になっています。そこに明確なレベル把握あれば、企業からのニーズにも迅速に対応が可能となり、より機会を生かす事ができます。もちろん好きに、自由にダンスをする、という事を否定するものではありません。あくまでJSDA 日本ストリートダンス協会が目指すダンスを仕事にする、ダンスをビジネスとして成立させるためのひとつであると思っています。次にJSDA会員についてですが、多くのメリットを用意しています。個々のダンスライフを充実させる、各種イベントや舞台を見る機会、出演する機会、そして著名ダンサーによるワークショップ、会報誌などで情報提供を定期的に行っています。しかし、本質にあるのはダンスを共に成長、発展させるという考えの共感共有です。私たちはダンスバリューサイクルという考えを持っています。ダンスに貢献していく中で、もっとダンスが発展し、それがまたダンスに還元されて広がっていく。価値の連鎖を循環させ、成長していくということです。その中でもっとダンスのマーケットが広がれば、新しいダンスの仕事も生まれるだろうし、活躍の場も生まれる。それが実現される事が私たちの考えるダンスの未来です」

今後の展開

「今後はもっと企業や、他のダンススタジオとネットワークを広げていきたいと思っています。これからスタジオネットワークアライアンスという推奨スタジオ制度をスタートさせます。これはJSDA 日本ストリートダンス協会のサービスを全国のスタジオに開放し、共に発展していくという仕組みです。ダンスというのは言葉の壁もない、実はすごくグローバルなものです。そう考えるとこのネットワークは想像以上に大きくなる可能性があります。将来、日本から世界へより多くのエンターテインメントを発信していけたらと思っています。ダンスをビジネスに変えることは、まだ始まったばかりです。ダンスを趣味、遊びから事業、そして共に産業に発展させていけたらと思います」