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(Photo/AFLO)
社会保障・税一体改革関連法案は26日の衆院本会議で、民主、自民、公明の3党などの賛成多数で可決、参院に送付された。関連法案のうち消費税増税法案の採決では、民主党から小沢一郎元代表や鳩山由紀夫元首相ら57人が反対票を投じた。このほか民主党議員15人が採決を棄権し、造反議員は72人に上った。野田佳彦首相は厳正に処分する考えを表明。一方、小沢氏は新党結成の構えを崩していない。首相が「政治生命を懸ける」と宣言した消費税増税の是非をめぐり、民主党は事実上分裂した。
首相は記者会見で、小沢氏ら造反議員の処分について「輿石東幹事長と相談しながら党内の所定のルールにのっとって厳正に対応したい。一人一人よく精査しないといけない」と述べた。27日には民主党は国会内で臨時常任幹事会を開き、小沢氏らへの処分について協議を開始。処分内容の原案作成は、首相と輿石東幹事長に一任することになった。
小沢氏は26日、国会内で記者会見し「衆院選もかなり近い。近いうちにどうするかの決断をしないといけない」と述べ、離党・新党結成に近く踏み切る考えを示唆した。ただ、「参院の審議で何とか増税を阻止できるような努力をしたい」とも述べ、新党結成時期の言及は避けた。本会議後にはグループの衆参国会議員約60人を集め、今後の対応について一任を取り付けた。
鳩山氏は採決後、記者団に対し「党にとどまって、国民のためにしっかり戦う集団にもう一度変えていきたい」と離党を否定した。
関連法案はこの日の衆院通過で大きなヤマを越えたが、参院審議には波乱要素も残っている。自民党の谷垣禎一総裁は記者会見で、「参院の審議に協力する前提は、民主党内の体制を立て直す処分をきちっとすることだ」と述べ、首相に対し、造反者には除籍を含む厳しい処分を直ちに行うよう求めた。
衆院を通過した関連法案は計8本。このうち、消費税増税法案と、社会保障制度改革を「国民会議」で議論することを盛り込んだ社会保障制度改革推進法案、認定こども園法改正案の計3法案が記名採決された。
消費税率は平成26年4月に8%、27年10月に10%に引き上げられる見込み。実現すれば税率を3%から5%にした9年以来17年ぶりとなる。消費税は商品を購入したり、サービスの提供を受けたりする場合にかかり、増税が暮らしに与える影響は大きい。
第一生命経済研究所の試算では、夫婦のどちらかが働く子供2人の標準世帯で、年収が500万〜550万円だと、消費税率が8%になった段階で年7万2948円、10%だと11万9369円も現在より負担が増える。
消費税を導入した平成元年を含め、過去の消費税増税では、同時に所得税の減税などを行い、「重税感の緩和につながった」(財務省)。ただ、今回はそうした減税を伴わない"純粋な増税"だ。政府は税率を10%にした場合の税収増を年13兆5000億円と見込むが、裏返せば、それだけの負担が国民にのしかかる。
また、東日本大震災の復興財源を賄う増税も控える。所得税は来年1月から現在の納税額に2.1%分上乗せされる。社会保険料の上昇も家計を圧迫。高齢化を受け、サラリーマンらが払う厚生年金保険料は16年から29年まで毎年引き上げが続く。今年6月には、子育て世帯の負担軽減策だった住民税の年少扶養控除も廃止された。
大和総研はこうした消費税増税以外の負担も含めた影響を試算。年収500万円の世帯(40歳以上夫婦のいずれかが働き、小学生の子供2人)で、消費税増税後の28年は23年より年32万8900円の負担増となる。
厚生労働省の毎月勤労統計によると、現金給与総額(5人以上事業所の社員)はピークの9年に月42万2678円だったが、23年に40万3563円まで落ち込んだ。給料の上昇が期待できないなか、家計にとって負担だけが増えていく。