SPECIAL INTERVIEW 水原希子
デビュー作『ノルウェイの森』以降、着実に女優としての存在感を増している水原希子が、ナチュラルな魅力全開で、話題の最新作『ヘルタースケルター』を語る!
「もっと希子らしく」。今回、蜷川実花監督からよく言われたのがこの言葉だったという。本作で水原が演じるのは、沢尻エリカ扮する“全身整形のスター”りりこの人気を脅かす“天然美女”の新人・こずえ。飾らないナチュラルさや透明感あふれるオーラは、水原のイメージそのものだ。こずえ役に興味を抱いた理由もそこにあったようだ。
「原作を読んで、どんどんこずえに引かれていったんです。自分とすごく似ている部分があったんですよね。子供のころからモデルをやっていたというのもそうだし、何より彼女が言う一言ひと言が気持ち良かったんです。“私もそういうこと思ったことある!”って(笑)。自分がなんとなく抱いていた思いを、こずえが言葉にしてくれていたんですよね」。
蜷川監督が望んだのは水原にしか表現できない、こずえだった。
「監督からはよく“こずえだけど希子のままでやってほしい”と言われていました。以前、まったく別の仕事でご一緒したときに私が“(注目されても)人なんてすぐに忘れる”みたいなことを言ったんですが、それを監督が覚えていて、今回のこずえの台詞に使われているんです。今思うと、なんで私そんなこと言ったんだろうと思いますけど(笑)。そんな感じで、こずえの言葉はどれも私の中で納得できるものばかりだったので、演じるのが難しいといったことはありませんでした。ただ、こずえの言葉は本当に鋭いので、繰り返し台詞を言っているとしだいに重くなってしまって。監督に“希子、暗くなってるよ!”って言われました(笑)。やっぱり“人なんてすぐ忘れる”という台詞は、私たちにしてみればシビアな現実ですし(笑)」
時代が変われば人気も移り変わるし、若さも永遠では無い。「切ないけど、それが現実ですよね(笑)」とあっけらかんと笑う姿はまさにこずえだが、水原本人の場合はそこに“体温”がある。
「そういう変化を“失う”というふうに考えすぎないほうがいいと思うんです。いろいろあっても、自分が今一番したいことはなんなのか、それを大切にして、あまり流されないようにしたいな、と思っています」
大事なのは中身だから、と水原。
「りりこの美しさは人工的な美しさでできた“お人形”みたいなもの。だけど人工的でも美しいものがウケたりもするんですよね。皆、美しいものは好きだから。ただ、人形には中身が何も無いんです。私は、人の中身ってけっこう見えると思うんですよ。分かる人には分かる、というか。なので私もしょっちゅう、もっと中身を磨かなくっちゃって考えてます。勉強不足だし、ウオーキングももっと上達したいし、話も上手くなりたいし(笑)。いろいろなことをもっとしっかりしたい」
輝いている人と仕事をする度にそう思う、と水原。蜷川監督もその一人。
「フォトグラファーとしても映画監督としても一緒に仕事させて頂いて感じたのは、どちらがどうというより、監督は“蜷川実花ワールド”を持っていること。監督としても写真家としても核の部分は1つというか、ブレない。今回は監督としてでしたが、彼女のスタンスは変わらないと感じましたね」
“りりこの部屋はまるで蜷川監督の家みたい”だとか。
「私も監督の家に遊びに行ったことがあるんですけど、本当にりりこの部屋みたいなんです。壁が真っ赤だったり、私だったら怖くて置けないようなドクロの置物とかがあって。監督はりりこのセットですごく居心地よさそうにしてましたね(笑)。うちですか? 私の部屋は、監督に比べたら子供部屋みたいなメルヘンさです(笑)」
実はメルヘン?な素顔の水原。こずえと違う、こんな弱点も…。
「食べ続けないとやせてしまう体質で、とにかくきちんと食べることをいつも心がけてます。最近はよく料理もしていますね。朝ごはんとか自分でいつも作ってますよ。私、ピーマンやニンジンが苦手なんですけど(笑)、あえて苦手な食材を買って、自分で作って食べてます。キャロットスープとか、ピーマンの肉詰めとか。あと痛そうなことがダメです。ホラー映画も苦手なんですよね。でも好きな人から一緒に見ようと言われたら頑張ります(笑)。ただ、自分が演じるのだったら、やってみたいんですよ(笑)」
ヴァンパイアとかあこがれますね、と目を輝かせる。この後は藤原竜也と共演する『I’M FLASH!』(9月1日公開)も控える。その天然の輝きに、ますます磨きをかけていくに違いない。
(本紙・秋吉布由子)
監督:蜷川実花 出演:沢尻エリカ、大森南朋、寺島しのぶ他/2時間7分/アスミック・エース配給/丸の内ピカデリー他にて公開中 http://hs-movie.com/http://hs-movie.com/