ニュースの焦点 オスプレイ12機の岩国搬入完了 試験飛行にも反発強まる
米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ12機を積載した輸送船は23日、一時駐機のため山口県の米軍岩国基地に到着し、全機の搬入を完了した。米軍は4月のモロッコ、6月の米フロリダ州での2回の墜落事故の原因調査で安全性を確認した上で試験飛行を行い、普天間飛行場に配備する。10月初旬からの本格的な運用では、本州、四国、九州など7つのルートを設定し、低空飛行訓練を行うことにしている。
防衛省は4月にモロッコで起きた墜落事故の調査結果の説明を受けるため、防衛省や国土交通省の担当者、航空工学の有識者らによる専門家チームを米国に派遣する。6月の米フロリダでの事故調査結果は8月に公表の見通しで、その際も訪米させる。森本敏防衛相は23日のフジテレビ番組で、オスプレイの運用の安全を確保するため、離着陸にはできるだけ海上のルートを飛行するよう米側に要請する考えを示した。
訓練計画では、普天間飛行場のオスプレイを月に2、3回程度、2〜6機ずつ岩国基地とキャンプ富士(静岡県)に移動。高度150メートル付近での飛行訓練を実施する。
だが、全国知事会は19日、オスプレイが危険であるとして「自治体や住民が懸念する安全性の確認ができていない現状では受け入れることができない」と反対の緊急決議を採択するなど、飛行ルート下の自治体で反発が強まっている。
オスプレイは開発段階や今年2回の墜落事故によって、その危険性ばかりが強調されているが、10万飛行時間当たりの重大事故の件数を示す「事故率」は、海兵隊が所有する固定翼や回転翼の航空機の平均事故率より低いのが実態。
オスプレイの事故率は1.93。海兵隊の垂直離着陸戦闘機AV8Bハリアーの事故率は6.76で、海兵隊全体の平均事故率は2.45だ。普天間飛行場の現行機CH46ヘリコプターは1.11だが、むしろ「老朽化し使い続ける方が危ない」(森本防衛相)状態という。米軍関係者も、日本側で反発が出ていることについて、「実戦配備した2005年以前のテスト飛行段階の事故ばかりが問題にされているが、飛行データを見る限り、少なくとも老朽化したCH46より安全」と説明。操縦が難しいのは確かだが、機体の構造に問題があるという証拠はないとしている。
オスプレイの搬入を受けて在日米国大使館は23日、声明を発表し、「日本での配備は日本防衛のための米国の関与に極めて重要な要素」などと指摘した上で、墜落事故の原因調査結果が出るまで「飛行を控える」ことを改めて強調した。