政府原発事故調 最終報告「安全神話とらわれた」

 東京電力福島第1原発事故に関する政府の事故調査・検証委員会(畑村洋太郎委員長)は23日、最終報告書をとりまとめ、野田佳彦首相に提出した。報告書では「東電と国は原発で過酷事故が起きないという安全神話にとらわれた」と指摘。畑村委員長は同日夕の会見で「想定外の事故に対応するには、柔軟かつ能動的な思考が必要」と総括した。報告書は「災害大国を肝に銘じる」「全容解明は国家的責務」などとする25項目の提言を盛り込んだ。

 事故調は政府のほか国会、民間、東電と計4つあり、今回の政府事故調の最終報告で全ての報告書が出そろった。今月5日に報告書をまとめた国会事故調が、東電や規制当局、政府による「人災」と断じたのに対し、政府事故調は「複合的要因」との表現にとどめた。畑村委員長は「レッテルを張ると理解しやすいが、本当に起こっていることはもっと難しい問題だ」と述べた。

 報告書では、津波に襲われた直後に冷却が中断した2、3号機について、第2原発の対応と比較。第2原発では冷却が停止した事態に備えて代替冷却の準備をしていたが、第1原発では代替手段の準備が不十分など「適切さに欠ける」と指摘した。

 東電の全面撤退問題については「考えていたとは認められない」とし、「なぜ誤解が生じたのか十分に解明するに至らなかった」とあいまいな部分を残した。官邸による現場や東電本店への過剰介入についても「弊害が大きい」と述べるにとどまった。