「原発ゼロ」を柱としたエネルギー戦略の閣議決定見送り

 政府は19日、「2030年代の原発稼働ゼロ」を柱とした革新的エネルギー・環境戦略の閣議決定を見送った。「不断の見直しを行う」といった今後の大まかな対応方針のみを閣議決定し、戦略そのものは参考文書にとどめた。政府の重要政策は文書全体を閣議決定するのが通例だが、脱原発路線に強く反発する経済界や労働界、原発立地自治体などに配慮した。

 戦略自体の閣議決定を見送ったことで戦略の拘束力は弱まり、原発稼働ゼロの実現性は大幅に低下した。
 閣議では、「(今後のエネルギー政策は)エネルギー・環境戦略を踏まえ、関係自治体や国際社会などと責任ある議論を行い、国民の理解を得つつ、柔軟性を持って不断の検証と見直しを行いながら遂行する」と決定した。原発ゼロ目標など新戦略の内容にはまったく触れなかった。

 今回の決定に対して、経団連の米倉弘昌会長は19日の会見で「閣議のなかで30年代とか、ゼロとかを論議されたふうには見えないので、(原発稼働ゼロの閣議決定は)一応回避できた」と評価した。

 なおこの日は原子力の安全規制を一元化する原子力規制委員会と事務局の原子力規制庁が発足した。野田佳彦首相が委員5人を任命。委員会は初会合を開き、議事を原則公開するなど運営方針を確認した。

 福島第1原発事故を反省に発足した規制委には、再び原発事故を起こさぬよう事故の徹底した検証と、厳格な安全規制を世界に発信する姿勢が求められる。

 政府の原子力政策は揺らいでいるが、規制委は政策の決定の場ではない。規制委は政治の思惑に左右されず、山積する難題に粛々と取り組み発信していく強い自覚が求められる。