オリンピック・パラリンピック招致が日本の閉塞感を打ち破る!!
TOKYO HEADLINEは今年10周年を迎えました。そこで今週は10周年企画として「これまでの10年、これからの10年」と題して、各界の著名な方、最前線で活躍している方などにお話をうかがいます。ここでは現在、2020年東京オリンピック・パラリンピック招致委員会でで副理事長/専務理事を務め、招致活動真っただ中の水野正人さんにお話をうかがいます。(聞き手・一木広治)
一木(以下、一)「これからの10年を語る上で、2020年オリンピック・パラリンピックの招致は欠かせないと思っています。まずは2020年に東京に五輪が来たら、東京はこうなるんだ!というところをお聞かせください」
水野(以下、水)「一言で言うと、これでいいのか日本というのが今の日本の現状です。経済も閉塞感があって日本の存在感がどんどん落ちている。若者も元気があまりない。内向き思考になっています。この状況が続くと日本はホントに大変なことになる。再び浮かぶことはできないんじゃないかっていう危機感があるんです。私たちはスポーツの力を信じています。スポーツだけじゃなくて、ほかのものも力はありますよ。でも我々スポーツに携わるものとしては、ホントにスポーツの力を信じているんです。この間のオリンピックでも38個のメダルを取ることによって国民が元気を共有しました。去年の3月11日にあれだけの震災があったんですが、JOCやIOCをはじめとしたスポーツ界が被災地支援ということで、スポーツイベントのみならず、スポーツのクリニックとか、いろいろなプログラムを組んで、子供たちと一緒にいろいろな交流をする場を作ってくれました。私たちもみんなが元気を取り戻す様子を目の当たりにして元気をもらいました。そういう元気、勇気、夢を共有する場を経験して、ホントにスポーツには大いなる力があると実感しました。オリンピックは世界の平和の祭典として今回で30回目を数えます。1964年には東京でやりました。そのときも素晴らしいオリンピックで、発展途上に対してインパクトがありました。今は21世紀、時代は変わりました。しかし時代が変わったなかで、私たちは21世紀型の素晴らしいオリンピックをやることで日本のみならず世界を魅了する、元気を共有する、そういうことをやらなければいけないと思うんです。2020年には復興した日本で、素晴らしいオリンピックを開催したい。そして日本の元気になった姿を見せるということを実現したいと思っています」
一「東京がより優れているところはどんなところでしょう?」
水「基本的には、まず安全、安心ということ。日本人というのは口約束でも守るという国民性を持っています。また日本人は組織力があって、いろいろなイベントをやるにあたっても、しっかりと最初に持った目的を達成できます。そういったところが私たちのセールスポイントになります」
オリンピックを経験してもらいたい
一「水野さんのオリンピックの思い出は?」
水「私は昭和18年生まれですから東京オリンピックがちょうど21歳。学生真っただ中でした。私はミズノスポーツの創業者の孫として生まれました。それも男の初孫でしたから、大事にされて育ってきたんですね。いよいよ東京でオリンピックがあるというので、関西から一族郎党が新幹線に乗って胸を躍らせて東京に来ました。開会式の日は抜けるような青空でした。あの青空は大きな思い出として目に焼きついています。そういう私が体感したオリンピックの興奮というか思い出を経験のしたことのない人には、どうしても経験してもらいたいんです。特に若者にはですね、このオリンピックを契機に、もっと国際感覚を身につけたり、チャレンジ精神をつけたり。そういうことでまた自分の大きな夢というものを持ってほしいなと思います」
一「僕は東京オリンピックの年、1964年3月に生まれました。当然ながら東京オリンピックは記憶にないんです。48歳以下は経験がないですよね。やっぱり多くの人が経験したいですよね。ところでオリンピックもそうなんですが、ミズノの会長もおやりになっているなかで、これからの10年。日本の経済や東京はどうなっていくと思いますか?」
水「今のこの閉塞感を打ち破る大きなインパクトはオリンピック招致だと思います。ですので、やはりオリンピック招致が大きなキーになるんですね。招致できれば、“いよいよオリンピックをやるんだ”ということで、まず気持ちが盛り上がります。それから経済効果も3兆円。雇用もだいたい15万人の機会ができるということで大きなインパクトがあります。そういったことからさまざまな連鎖が起こりますから、経済に間違いなくプラスになりますし、気持ちもより朗らかに明るくなる。日本全体がホントに明るくなる」
一「ではスポーツ界は?」
水「ロンドンでのメダル38個というのは世界で6位だったんですね。これを2020年には3位にもっていきたいと思っています。開催国は全競技出場権があるんですよ。だからそういう意味でも当然、招致が決まったら強化はめちゃくちゃやりますよ。招致したのに強化をしなかったとしたら、どうしようもない国です(笑)。となると確実にスポーツ振興が進みますので、スポーツ業界は何もかもがいい方向に回ると思っています」
夢を持って活動的になってほしい
一「オリンピックを呼ぶのに、なぜ東京なんだ?という意見もあります。これは立候補するためには一定の条件がなければいけないんですか」
水「どこでも立候補できるわけではありません。IOCには立候補都市に課す条件がいろいろあります。例えば“ホテルの部屋は4万室以上のベッド数がなければダメですよ”というものがあります。でも東京には14万あります。競技会場にも規格があって、それをすべて満たすことのできる街かどうか、それから運営のためにどれだけのお金がかかるかどうか、それをまかなうだけの力があるかどうか、そういう条件もあります。例えば“仙台でやればいいじゃないか”と言う人もいますが、では仙台に4万室のホテルの部屋がありますか? あるいはスポーツ施設がそれだけ整えられますか? オリンピックというのは28競技を一度にやりますから、それだけの競技会場を準備しないといけないんです。それなりに人も来ます。メディアもいっぱい来ます。それをきちっとまかなえるかということになると、日本では東京がベストなんですね」
一「2016年は東京と福岡で争って、東京になりましたね」
水「私も評価委員として福岡にも行きました。福岡でやってほしいという気持ちは強かった。しかし見ていくと、やっぱりホテルの数とか、クオリティーとか、ここにどういう競技会場を置くんですかというときに、相当無理があるなという感じがしました。それでやはり日本でやるならまず東京、ということになりました」
一「来年の9月7日に招致が決まるわけですが、水野さん自身のこれからの10年の目標を聞かせてください」
水「私自身いろいろな責任があると思いますが、基本的には来年の9月7日で私の招致委員会としての役割は終わりますから、その後は国際交流がより盛んになるような仕事ができればと思っています」
一「最後に人生の先輩として、読者のみなさんにこれからの10年をどういうふうに生きていくべきかお聞かせください」
水「まあ、人生の先輩といわれるほど偉くはないんで、大したことは言えないんですが、やっぱり夢ですよ、夢を持つということ。今ね、夢がないんですよ。だからそれが閉塞感につながっている。やっぱりみんな夢を持って、もっと活力というか活気を出せば経済は良くなるんですよ。経済が良くなったら、どんどんそれに弾みがついて人がもっと動くようになる。そしてまたもっと夢を持つようになる。夢を持って活動的になれば、挑戦する力を出せば日本はいい国になりますよ」