ニュースの焦点 北朝鮮ミサイル発射 射程距離1万キロ!? 米国に新たな脅威

 北朝鮮は12日午前9時49分ごろ、北西部・東倉里(トンチャンリ)の「西海衛星発射場」から、「人工衛星」と称する長距離弾道ミサイルを発射した。4月の発射(失敗)に続くもので、北朝鮮が1年に2回発射するのは初めて。「テポドン2号改良型」(射程1万キロ以上)とみられる。ミサイルは11日に撤去されたが12日に新たなミサイルを設置し直して発射した可能性が高い。
 同国の朝鮮中央通信は12日、「(「人工衛星」が)極軌道を周回している」と伝え、北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)も米国時間11日、「ミサイルの搭載物が軌道に到達したとみられる」と発表した。
 4月の発射失敗から一転しての「成功」(米情報当局者)は、北朝鮮の弾道ミサイル能力が格段に向上したことを意味する。米本土を射程に収める大陸間弾道ミサイル(ICBM)の保有も現実味を帯び、その脅威は新たなステージに入ったといえる。
 韓国の金寛鎮(キム・グァンジン)国防相は記者会見で、今回のミサイルについて「射程1万キロとみられる」と述べた。これが事実なら、北はロサンゼルスなど米西海岸の主要都市を射程内に収めたことになる。
 発射前日には「撤去」情報が流れた。発射は日本にとって「寝耳に水」との感が強いが、水面下では日本政府は「発射近し」との情報を得ていた。一方、「ミサイルを発射台から一時撤去」とみていた韓国政府には、米政府が不信感から詳細な衛星情報を提供していなかったという。玄葉光一郎外相は12日の記者会見で、「近日中(の発射)はなさそうだとの報道が流れていた。警戒レベルを下げなかったのはさまざまなインテリジェンス(機密情報)によるものだ」と情報を遮断された韓国とは異なり、日本政府には米側から時々刻々と発射施設の動きが伝わっていたことを示唆した。
 北朝鮮としては国威発揚という当面の目標を達したが、経済問題や軍部の統制など国内的には不安定要素を抱えているとされ、国民向けには「成功」するまで報道も控えられた。一方で米本土を脅かす大きな“外交カード”を握ったことになり、国際社会からは3度目の核実験を含めた金正恩(キム・ジョンウン)政権の次の一手に関心が集まっている。
 また今回の発射について国連の潘基文事務総長は声明で、「(発射は)明確な安保理決議違反。地域の平和と安定に対する挑発だ」と強く非難した。