新春から気になる!女優たち 橋本愛
昨年は『貞子3D』『桐島、部活やめるってよ』など、声優含め8本の出演映画が公開され、若手女優の中でもダントツの存在感を示した橋本愛。そんな彼女だけに2013年も注目必須。今年の橋本愛は“音楽ミステリー”から幕を開ける!
2011年に公開された映画『告白』以来、彼女のまなざしが忘れられない人も少なくないはず。昨年は出演作が多数公開され、中でも『桐島、部活やめるってよ』では、TAMA映画賞・最優秀新進女優賞、第34回ヨコハマ映画祭・最優秀新人賞を受賞するなど、実力も評価された。まさに波に乗った2012年だが、本人はいたって自然体。
「私としては、用意してもらった坂の上をコロコロ転がってたような感じでしたね。それを、途中からちゃんと二足歩行をしようとして、今は必死に歩いているという状況です」
そんな中で、改めて気づいたことがあるという。
「やっと役者をやっていくうえで、自分のやりたいことや、好きなものが分かったんです。だから、ちゃんと自分が好きで選んだことを、頭からつま先まで通していきたいと思ってます。後はやっぱり、私は“映画”が好きだなってことですね。好きな理由はいろいろあるんですけど、まずは“お金を払って見る”ところです。映画館という空間自体も好きなんですけど、わざわざ映画館に行って、身銭を切るというか、自分のお金や時間を差し出すわけですよね。役者って、人が生きていくのに絶対的に必要な仕事というわけじゃない、ある意味“余計”なものかもしれないけど、そうやって映画を見るのにお金を払ってくれる人たちのおかげで“余計”だとしても“無駄”ではなくなる。自分たちがやったことに意味が生まれるのはうれしいし、そんなところに引きつけられるのかなと思います」
今、どんな作品、役どころに興味が?
「今は、振り切ってる役が好きかも。極限まで汚れた人間とか、逆に何の汚れもない存在とか、極端な役ってけっこう好きなんです」
本作『さよならドビュッシー』で演じた主人公・遥も例にもれず。火事により、双子のようにともに育った従妹を亡くし、自分も重度のやけどを負いながらピアノコンクールを目指す少女だ。
「この子をやってよかったと思うのは“落ちずにいられない”ほどの役を演じられたという点です。本作をやっている間、精神面でも身体面でも、役をコントロールするのにすごく苦戦したんです。自分のあらゆるパワーを上げたり下げたり、保ったりということが必要だったんですけど、その作業がすごく難しくて。落ちていくというか、悩まずにはいられなかったし、自分の中に余裕がまったく無かったんですよね。また、この役は演じながら同時に客観的に自分を見る必要があったので、それも大変でした。ときどき混乱しそうになることもありましたね(笑)。そんな状況だったんですけど、だからこそお芝居は面白いというか。悩めない現場ほどつまらないものはない、と思うんです」
原作は「このミステリーがすごい!」大賞受賞作。ヒロインの抱える“秘密”が明かされたときに、橋本が演じた役の複雑さ、壮絶さに改めて気づくことになるので、お楽しみに。橋本の存在感はもちろん、本作で本格俳優進出を果たしたピアニスト・清塚信也が演奏するクラシックの名曲も見どころ。
「見てよかったと言われる作品を作っていけるように頑張りたい」と語る橋本。今年は、堤幸彦監督作『くちづけ』(5月公開)、堤真一と共演する『俺はまだ本気出してないだけ』(6月15日公開)といった映画に加え、4月からは朝の連続テレビ小説『あまちゃん』もスタート。“やっと歩き出した”という2012年。今年は、力強く駆け出す年になりそうだ。
(THL・秋吉布由子)
原作:中山七里 監督:利重剛 出演:橋本愛、清塚信也他/2時間11分
/東京テアトル配給/1月26日より新宿ピカデリー他にて公開
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