ニュースの焦点 アルジェリアの外国人人質事件で日揮の邦人死亡

 アルジェリア南東部イナメナスで起こった外国人人質事件で、日本人17人が事件に巻き込まれ、9人の死亡が確認された。1人が安否不明となっている(ともに24日現在)。死亡したのはプラント建設大手「日揮」(横浜市)の社員。

 今回の事件で、同国のセラル首相は21日、首都アルジェで制圧作戦終了後初の記者会見を行い、8カ国の外国人計37人が死亡したことを明らかにした。

 イスラム過激派武装勢力について、首相は「32人が隣国マリから来た」と指摘。アルジェリア人のほか、マリやエジプト、ニジェール、モーリタニア、チュニジア、カナダの出身者がいたという。
 首相は犯行目的に関し、外国と交渉するため「外国人をマリへ拉致することだった」と述べ、軍の制圧作戦で29人を殺害、3人を拘束したことも明らかにした。

 また首相は制圧作戦を実施する前に「犯行グループとの交渉を試みた」と述べた。しかし、犯行グループが自らの要求に固執したほか、現場の天然ガス関連施設を爆破した上で逃亡を図ろうとしたことなどから、制圧作戦に踏み切らざるを得なかったという。

 一方、アルジェリア捜査当局は21日までに、犯行グループに情報提供していた疑いがあるとして、日揮のアルジェリア人従業員2人を含む11人の取り調べを始めた。容疑がもたれているのは日揮従業員のほか、アルジェリア国営エネルギー企業の5人と、施設を運営する英メジャー(国際石油資本)BPの4人。携帯電話の記録から、マリやリビアに国際電話をかけていたことが裏付けられたという。

 これについては英紙デーリー・テレグラフは23日までに、現場となった天然ガス関連施設を運営するBPの上級幹部が事件発生の当日、施設を訪問したと報じた。同紙は犯行グループのイスラム過激派武装勢力が事前に内部情報を得ていた可能性を示唆するものとしている。

 このほか、事件当日、施設内では共同事業者の要人らが集まり、幹部会合の開催が予定されていたとの情報もある。
 日揮の前副社長も当日施設を訪れて、事件に巻き込まれた可能性が出ており、犯行グループは、会合当日を狙って犯行に及んだとの見方が浮上している。

 日本国内では、在アルジェリア大使館をはじめ日本政府がほとんど独自情報を得られなかったことについて21日、与党内から問題視する発言が出た。政府は中国による資源外交の活発化に対抗するためアフリカ外交の充実を図ってきたが今回の事件では十分に機能しなかった。

 自民党外交部会で警察官僚出身の平沢勝栄衆院議員は「日本政府は結局、英国から情報をもらった。何で英国大使館でできることが日本でできないのか」と指摘した。17日のアルジェリア軍の攻撃開始も、アルジェ政府ではなく英国大使館から伝えられたものだった。