SPECIAL INTERVIEW 演劇×音楽≒劇団鹿殺し!?
劇団鹿殺しが2月15日から池袋の東京芸術劇場で音楽劇『BONE SONGS』を上演する。情熱というには熱すぎる、独特なんて言葉には収まりきらない彼らの舞台を語る適当な言葉はなかなか見つからない。その中心で強烈な個性とカリスマ性を発揮する主宰で演出家の菜月チョビと作家の丸尾丸一郎にちょっと話を聞いてみた。
彼らは2005年、劇団員全員で丸ごと大阪から東京にやってきた。当初は音楽も使用していたのだが、今ほど作品の大きな部分を占めるようなものではなかった。
菜月(以下、菜)「東京では私たちのことを知っている人はほとんどいなかったので、とにかく私たちのことを知ってもらおうと、路上でパフォーマンスを始めたんです。そのうちに自分たちでオリジナルの曲を作るようになりました。そして2006年に古典の『サロメ』をモチーフとした『SALOMEEEEEEE!!!』という作品を上演するときに、自分たちの一番得意なもの、他ではできないことをやろうということになって、たくさんの音楽を入れて、ラストシーンにも歌を持ってくるということにも初めてトライしました」
以降、彼らの作品には多くのオリジナルの楽曲が盛り込まれる。今では1公演で劇中歌5〜6曲、BGMも含めて20〜30曲のオリジナル曲が舞台を彩る。
菜「『SALOMEEEEEEE!!!』をやってみて、出演者の人間性なども、歌を通したときが一番しっかり出せているな、音楽で体を動かした時に一番物語が伝えられているなって思いました。なので、ここぞという場面で音楽を使うことが多くなりました」
丸尾(以下、丸)「2006年にライブハウスツアーをしたことがあったんです。そこで40〜50分の作品を上演していくうちに歌とお芝居を融合させることができるようになりました」
菜「ライブハウスのお客さんというのは演劇を見慣れていない人たちなんですけど、音楽としても聞けるものにすると、スッとストーリーを分かって感動して泣いてくれたり拍手をしてくれたりしました。そのときに他ジャンルのお客さんと演劇をつなげられるという自信のようなものがライブハウスと劇場を行き来することによって芽生えたような気がします」
路上から始まってライブハウスツアーをやるという行動力はすごい。
丸「路上をやっていてよくおまわりさんに注意されていたんです。あるおまわりさんに“道は公共の場だからライブハウスとかでやりなよ”って言われて“確かにライブハウスという手はあるな”と思ったんです。当時の…というか僕たちは頭は悪くはないと思うんですけど、良くもない。良すぎると先を想像して動かないという場合があると思うんです。僕らは動かないアホではないんですけど先を考える頭の良さはなかった(笑)」
音楽劇も進化する。今回は新人の劇団員全員が楽器を弾く。
丸「2008年の『電車は血で走る』という作品でキャストオーディションをした時に、“トランペットが得意”“サックスが得意”という人が3〜4人いたんです。その特技披露を見ているうちに、青山円形劇場の中で管楽器隊をグルグル回したくなった。そのあたりから菜月が新しい子が劇団員に入った時に、“管楽器が吹けると舞台に立ちやすいよ”って言うようになった(笑)」
菜「役者の人が吹く楽器のほうが、気持ちが入ってきてテンションが上がると思うんです。いくら演出をつけて衣装を着ていても、ミュージシャンがぽつんと入るとそこだけ空気が変わっちゃう。だけど役者がやっていればそこも完全にワンシーンとして見ることができるんです」
今回は音楽劇として現時点での最高到達点の作品になるという。
丸「縦横無尽にロックと管楽器とお芝居が行き来する作品になります」
菜「今は音楽の必然とか、音楽を使った表現を一番やれている、体現できている劇団になれてきているなって感じています。今回の作品を見てもらえたら、鹿殺しの音楽劇というのはこういうものだよって分かってもらえると思います」
今現在の音楽劇の最先端ともいえそうな彼らの舞台がもうじき幕を開ける。
(本紙・本吉英人)