ニュースの焦点 日銀総裁候補、黒田氏が所信でデフレ脱却への強い決意を表明
政府が次期日銀総裁候補として提示した黒田東彦アジア開発銀行(ADB)総裁は4日、衆院議院運営委員会の所信聴取で、「やれることは何でもやる姿勢を明確に打ち出す」とデフレ脱却への強い決意を表明。安倍晋三首相の要請で、日銀が1月に導入した2%の物価上昇率目標の達成時期について、「2年くらいを念頭に置く」とした。
所信聴取では黒田氏から、経済再生の三本の矢の一つとして、大胆な金融緩和を掲げる安倍首相に「忠誠」を誓う発言が次々と飛び出した。当初、黒田氏は円高是正に効果のある日銀による外債購入に否定的で、緩和姿勢が弱いとの見方があった。為替政策を所管する財務省出身であることが否定的にとらえられ、国会同意を得る上での懸念材料になる可能性もあった。
だが、2月の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議声明を受け、安倍首相が円安誘導策ととられかねない外債購入を封印したことで、黒田氏の重しははずれた。
ただ、金融市場は、黒田氏がデフレ脱却にやみくもに突き進むとは見ていない。具体的な緩和策を問われると、株式などに比べて損失リスクの小さい国債で「より長期のものを買っていくのが自然」とも発言。リスクを嫌う日銀の政策委員に配慮する理性的なリーダーの顔をみせており、金融政策も現実路線に落ち着くとの見方が多い。
5日には副総裁候補の岩田規久男学習院大教授と中曽宏日銀理事が衆院議院運営委員会で所信聴取に臨んだ。岩田氏は、日銀が1月に導入した2%の物価上昇率目標について「日銀は達成の責任があり、これは義務だ」と強調。達成時期については「遅くとも2年で達成できるし、しなければならない」としたうえで、未達成だった場合は「最高の責任の取り方は辞職することだ」と決意を示した。
岩田氏は、大胆な金融緩和を通じてデフレからの脱却を目指す「リフレ派」の代表的な論客。物価目標の達成に日銀が責任を持つことを日銀法に明記すべきだとして、同法改正が必要になるとの認識も示した。金融緩和の手法については「5年以上(の国債)を買っていく」と指摘。日銀は現在、償還までの期間が3年以内の国債を購入しているが、緩和効果を高めるために、国債の買い入れ対象を広げる必要があるとの考えを述べた。
中曽氏も、「(2%の物価目標の)実現に向けて、前例にとらわれることなく、常に新しい発想で政策を実行したい」などと述べた。