小池百合子のMOTTAINAI
中国の高度成長の負の面として、環境問題が深刻化しています。
最近の話題はPM2.5。髪の毛の太さの30分の一、直径2.5マイクロメートル以下の微小粒子物質で、日本にも飛来して健康被害をもたらすとして問題となっているのはご存じのとおりです。
北京オリンピックが開催された2008年頃にも、北京の大気汚染が問題となり、マラソンなどへの影響が取りざたされました。対策として、北京市内、近郊の工場を遠方への移動や、自動車については、ナンバープレートの末尾数字によって、偶数は偶数日、奇数は奇数日のみとする交通規制が敷かれました。オリンピック期間中はなんとか凌いだものの、さらなる高度経済成長が続き、元の木阿弥どころか、状況は悪化。さらに、自然現象が加わり、今回の事態となったとみられます。
私が環境大臣在任中には、日中関係が今ほど悪くはなく、日中韓三か国環境大臣会議や数々の国際会議などの場で、中国のカウンターパートとの接点が多数ありました。人間関係も良好で、家族の話などを交わすなど、楽しい思い出もあります。
日本から中国への政府開発援助(ODA)は中国経済が拡大するにつれ、徐々に分野が変わり、規模も縮小し、残ったのが環境協力分野でした。1996年に北京で設立された日中友好環境保全センターがその象徴であり、大気や水質汚染など、環境問題研究の拠点となっていました。日本の環境、省エネ技術、モニタリングの手法だけでなく、水俣や四日市などの経験を中国語版のDVDを制作して伝えるなど、技術、法整備協力を真しに行ってきたつもりです。
日本の高度成長期には、コストのかかる環境対策よりも経済を優先した結果、人々の健康を害し、結局、高いツケを今も払うことになったことを、伝えたのです。その度に、中国は「後発優位」と言って、先進国の失敗を学び、同じ過ちは繰り返さない、と胸を張っていました。
実際、中国の環境に関する法制度はさほど劣っているとはいえません。問題はそれらの法律が遵守されていないことです。
中国は「法治国家ではなく、人治国家だ」といわれるように、さじ加減でどうにでもなることが、最大のネックです。
逆に、ひとたび問題が起これば、原因とされる素材や化学物質を使用していない日本企業や日系企業を標的にし、操業停止を迫られるなど、法律を逆手に取るケースもあります。実際、賄賂を渡すことで、操業停止を免れたという経験談を聞いたこともあります。
中国共産党の権力を持続させたいのなら、軍事費よりも環境対策を優先させたほうがおよろしいのでは…。さもなければ、近隣諸国への迷惑も続きます。
(衆議院議員/自民党広報本部長)