〈新企画〉二十歳の視点Vol.3
学生フリーペーパーの現場!「Seel」

学生フリーペーパーの限界 kawa_CIMG0412.jpg このサークルに入るには、まず面接があり、そこをパスしなければならない。その後、希望の部署に配属される。入ったはいいものの、あまりにも芳しくないと辞めてもらうこともあるという。だが、サークルとしての活動なので、義務が発生するということでもない。しかも、相応の「見返り」が期待できないとなれば、足並みを揃えることすら難しいようで、『Seel』代表の江辺くん、苦悩の表情。
 全国のフリーペーパーを作る学生を支援する学生団体があり、そこが主催する講演などで、業界関係者の話が聞ける機会もあるという。アンケートに、ここで話されたことに影響を受けたと書いたメンバーもいた。また、そこでは年に1度、学生フリーペーパーの日本一を決めるイベントを企画するなどしている。だが、これらを積極的にやったところで、メディアへの就職で有利になるといったこともないようだ。
 記者を含め彼らより上の世代では、メディアで仕事をしたいと思った場合、出版社にバイトで入って、そのまま社員として採用されるケースもあったらしい。こうしたサークル活動だけでは、「セミプロ」感覚に陥ってしまう可能性もある。
 また、自分たちの「面白い」と思っていることが、読者には「伝わらない」ということに「割に合わなさ」を感じるとアンケートに回答したメンバーもいた。自分たちのスタイルを追求すればするほど、彼らとメディア、あるいは読者との距離は、近づいているようで遠くなっているのか。
 最後に、この記事のテーマでもある「何でフリーペーパーを作っているのか」と聞くと、「結局、紙が好きだからとか、実際に手にとれるものを作るのが好きなんですよね」と話す。ウェブにアップする場合、1人でもパソコン1台あればできるが、紙媒体となると、「営業」「デザイン」「印刷」「ラックに配置」と、人の介入があってこそ。こうして手間暇かけることで、愛着に似た「温かみ」が生まれるのかもしれない。
 毎回、彼らはミーティング後、いったん外へ出て、必ず一本締めで締める。この光景もまたどこか、互いを労っているようで、温かい。
 よぉ~、パンッ!
『Seel』最新号は4月2日発行。配置場所についてなどの詳細は、サイト(http://seel-magazine.jimdo.com/)で。 (本紙インターン・川合健悟)
【アンケート内容】

 Q. 将来はメディア志望か?   YES(10人)・NO(5人)/15人回答


 ◇上の質問にYESと答えた人、そのきっかけは?
 →小さいころから、漫画が大好きで、でも漫画家にはなりたいと思えず、そうなると漫画の編集かな…という感じ。など
 

 ◇同様、NOと答えた人、なぜフリーペーパーを作ろうと思ったのか?
 →姉が持って帰ってきたフリーペーパーを読んで、私もこういうのを作ってみたいと思ったから。
 →単純に新しいことを始めたかったから。

 →メディアの厳しさを知った今、迷ってます。
 →フリーペーパーってどうやって作るのか気になって調べていたら、SeelのHPが出てきて、かっこいいなと思ったから。など


 Q. フリーペーパーを作っていて、割に合わないと思うことはあるか?    YES(6人)・NO(9人)/15人回答


 ◇上の質問にYESと答えた人、その具体的な事例は?
 → 自分たちが“面白い”と考えていることが伝わらず、「よくわからない」となることが多いので。
 →カッチョイイものを作っていても、裏方は地味で大変…。チャラサーに憧れる…。など


 メディアへの就職を望みながら、その実「割に合わない」現状。取材中、記者は数人に「インターンってお金もらえるんですか?」と聞かれた。「見返り」については、切実な問題のようだ…。


 一方、メディアへの就職については考えていないメンバーは、フリーペーパーを作ろうと思ったきっかけは?という問いに対し、「SeelのHPを見つけて…」などという回答。一見、例外的な彼らは「メディアの厳しさ」というものに触れたうえで、ここでの活動をそうした憧れに自分なりの踏ん切りをつける場として考えているのかもしれない。


 ちなみに「チャラサー」とは「チャラいサークル」の略称。