ニュースの焦点 福島第1の原発汚染水漏洩問題で移送先地盤からも放射性物質
東京電力福島第1原発の敷地内にある地下貯水槽から放射性物質に汚染された水が漏れた問題で、東電は10日、水の移送先となっていた1号貯水槽でも、防水シートの外側で1立方センチメートル当たり0.11ベクレルの放射性物質濃度が検出されたと発表した。
東電によると、東隣の2号貯水槽から汚染水が移送されていた1号貯水槽では、9日に汚染水漏れが発覚。3層構造のシートのうち、一番外側のシートと内側のシートの間で、1立方センチメートル当たり1万ベクレルの高濃度の放射性物質が検出されたが、外側と地盤の間ではこれまで放射性物質は検出されていなかった。
汚染水の漏洩は5日、2号貯水槽で最初に判明。敷地内に7カ所ある地下貯水槽の防水構造はすべて同じで、2号と3号でも地盤への放射性物質漏洩が見つかっている。
漏洩のたびに貯水槽への信頼性が低下している状況だが、そもそも、同貯水槽は産業廃棄物の処理に使われる技術といい、汚染水をためる十分な能力を備えていたかについて、疑問が生じ始めている。
地下貯水槽を手がけたのは前田建設工業(東京)で、仕様は東電が作成した。地面に掘られた穴の上に、粘土質のシート1枚と、ポリエチレンシート2枚を重ねて漏水を防ぐ構造になっている。粘土質のシートは水分を含むことで膨張し、水を通さなくなる仕組みで、ポリエチレンシートは厚さ1.5ミリの丈夫な素材だという。
使用前には、シートに穴があいていないかを電流を流して調査。建設後も貯水槽に真水をためて、漏水を調べる検査を最大で2週間実施した。
だが、実際は3カ所の貯水槽で漏洩が見つかった。
汚染水はどこから漏れているのか。東電は当初、漏洩を検知するために設置された「漏洩検知孔」を原因の一つとして挙げていた。漏洩検知孔はポリエチレンシートからの漏洩を検知するために設置されたパイプ状だが、東電は検知孔が貯水槽上部で2枚のポリエチレンシートを貫通している点に注目。汚染水を入れた重さでシートが伸び、生じた隙間から汚染水が入り込んだ可能性があるとした。
しかし、1号槽では水位が半分程度しかない時点で漏洩が見つかった。少なくとも1号に関しては、貯水槽の上部から水が入ったとは考えにくい状況だ。
もう一つの可能性は、ポリエチレンシートの接合部からの漏洩だ。貯水槽を覆うような大きなシートがないため、ポリエチレンシートは複数のシートを熱で圧着して作られており、接合が不十分な場所から漏洩した可能性があるという。
貯水槽に、そもそも水をためる十分な能力がなかった可能性も浮上している。