小池百合子のMOTTAINAI 「サッチャー元首相から学んだこと」
「鉄の女」と呼ばれたイギリスのマーガレット・サッチャー元首相が8日、87歳の生涯を閉じられました。
私は幸運なことに、サッチャー元首相とは二度、直接お会いすることができました。自伝出版の際の来日での講演会では、格調高い英語による20分ほどのスピーチを聞いた後、会場との自由な質疑にてきぱきと応じておられました。時折、ユーモアを交え、「鉄」というよりはしなやかな「竹」のような方でした。
今でも心に焼き付いている言葉があります。それは、「これからは、コンセンサスからコンヴィクションの時代ですよ」という指摘です。
今の時代、みんなの意見を聞いて、足して二で割る「コンセンサス」の政治ではない。リーダーたる者は、時代が求める方向性を定め、信念をもって決断し、そのことを説得「コンヴィクション」せよという指摘です。
郵便スト、清掃ストなど、かつての大英帝国の機能と誇りをマヒさせた国営企業や国営産業を次々と民営化したこと。シティーに代表される金融の窓口を閉じるのではなく、世界に開くウィンブルドン現象を容認したこと。そして、何よりも戦後の冷戦構造を同盟国アメリカとともに打ち破ったこと。偉業の数々です。
なかでもアルゼンチンとの領土紛争では、多くの犠牲者を出しながらも、自らの領土を守るため、軍事的な挑戦に乗り出しました。メリル・ストリープ演じるサッチャー首相の生涯を描いた映画では、イギリス軍の責任者から戦況を伝えられた後、「沈めよ」(sink it!)と指示する最高指揮官としてのシーンは印象深いものがありました。
今もサッチャーリズムの是非については賛否両論がありますが、数々の偉業は、信念をベースに自らが困難な課題に結論を出し、議会、国民を説得しながら、実行していったものばかりです。
サッチャー自伝によると、ヒラの一議員であったころから、英国をどのような国にすべきかを考え、そのためにさまざまな対処策や方針を書き綴っていたといいます。私なら、ああする、こうするといった具体策です。
よくイギリス初の女性首相として、サッチャー元首相をどう思うかとの質問を受けますが、陳腐な質問だと思わざるをえません。男であれ、女であれ、なすべきことは同じです。要は、なすべきことをし、結果を出すこと。それにつきます。
多くを学ばせていただいた偉大な指導者のご冥福を祈ります。
(衆議院議員/自民党広報本部長)