「ただ目の前のことをやっていく」TRFの拡張拡大、そして進化
ボーカリストのYU-KIと、SAM、ETSU、CHIHARUのパフォーマー、そしてDJ KOOからなる、TRF。1993年に華々しいデビューを飾り、プロデューサーの小室哲哉とともに多くのメガヒットナンバーを生み出してきた。誰もが一度は耳にしたことがある楽曲とともに、その圧倒的なパフォーマンスで多くの観客を喜ばせてきた彼らは、今年2月、デビュー20周年を迎え、さらにTRFのパフォーマンスを突き詰めようとしている。そのモチベーションはどこに? そして、これから彼らが向かうところとは?
インタビューは、ツアー「TRF 20TH Anniversary Tour」が折り返しを迎えたころ行われた。しとしとと雨が降るなか、メンバーが三々五々とスタジオに集まり、軽く手を挙げてあいさつを交わす。とてもリラックスした雰囲気だ。
「ツアー、楽しんでますよ。たくさんの方が見に来てくれてうれしいですね。なかには、全部の会場を回ってくれているファンの方もいるんですよ」とSAM。今回のツアー、どの会場にもたくさんのファンが駆け付け、ファンなら絶対聴きたい!と思うであろう名曲から新曲まで網羅したTRFサウンドで最初から最後まで盛り上がっているという。年季の入ったファンはもちろん、デビュー当時には生まれてもいなかったであろう小さな子供たちまでが一緒になって歌う姿も見える。YU-KIは言う、「すごくいい楽曲を歌わせてもらっている、自分たちはいい曲に出会えたんだってすごく感じます。新曲もそうですが、昔から歌ってきた曲を今聴いてもすごくいいと思える。だからこそ、大事にしてきたし、これからも大事にしていきたいって思うんです」
ずっとTRFとともに歩んできた。小室哲哉プロデュースの下で数々のメガヒットを生んでひとつの時代を作り、小室が離れた後もTRFサウンドとTRFならではのパフォーマンスを突き詰めてきた。そして、この2月、20周年を迎えるにあたり、16年ぶりに小室のプロデュースでミニアルバム『WATCH THE MUSIC』を出した。“音楽を見て!”とは、5人のパフォーマンスで圧倒してきたTRFらしいタイトルだ。
「試行錯誤したよね」と、DJ KOO。「すごいキーが高くてびっくりした(笑)」「音もすごく早い!」と、ダンサー面々も、ストレートな感想をこぼす。でも最後には「勉強させてもらっているよね」と5人でうなずいた。
「本当にたくさんのことを勉強させてもらっているなって思います、自分が思っている以上に。最新ミニアルバムで小室さんのプロデュースの下で音を作ったりするなかでも再確認したことです」と、YU-KI。「小室さんからいただくデモは、素晴らしいんだけれども、それを自分たちでどうやるかって考えるとき、すごく勉強になる。キーを半音下げたり、全音下げたりしてやってみたりもするんですけど、結局は、小室さんが持ってきてくれたキーが、楽曲に一番合っている。小室さんに直接聞いたことはないけれど、このメロとこの歌詞だったらこのキーっていうのがあるんでしょうね。楽器の鳴り方と同じように、このキーが一番聴こえ方がいいっていうのが分かっていらっしゃるんだと思います。本当に小室さんとのセッションは勉強になります」
ダンサーも思いは同じだ。「20年も前の曲を喜んで聴いてくれる人がいる。ただ、そのままやり続けていただけだったら、今のようにはならなかったと思いますね。時間を重ねながら、楽曲と一緒に自分たちも少しずつ成長してきたからこそ。変わらずに楽しんでもらえるために変化をしてきたんだと思う」と、CHIHARU。ETSUも「そんなこと、5人で話したこともないけど、それぞれが自然な流れで自分たちを変化させてきたんだろうね」。
最新ミニアルバムでもTRFのパフォーマンスを突き詰めて、変化、成長した。「攻めてます」と、SAMは言い放つ。「例えば、『PUSH YOUR BACK』とか『Because of U』、音も尖がっているし、歌詞もいいので、そこにどうやって乗っかっていくかが課題でした。音も早いから大変なんですけど、そこに最先端のダンスを散りばめていくことで体もついていこうとし、勢いもつくんです」
楽曲でも、歌唱でも、ダンスでも、キャリアを通じて、それぞれが最高の楽曲の見せ方を追求、今もその作業を怠らない。だからこそ、今もなお、単独ライブのみならず、a-nationのような大きなイベントでも最高にして最大の盛り上げ役であり続けている大きな理由だろう。
20周年ではまた、TRFの拡大拡張の方向が“見える化”“聴ける化”された。アニバーサリー記念企画として、東京女子流、Dream5、BiS、iDOL StreetというTRFをリスペクトするアイドルたちによる『TRFリスペクトアイドルトリビュート!!』、TRFと親交の深いアーティストらによる『TRF TRIBUTE ALBUM BEST』、さらには人気ボカロPたちによる『VOCALOID3 meets TRF』もリリースされた。
「自分たちがTRFをやり続けてきたっていうこともあるけれど、TRF の楽曲、そしてTRFそのものが一人歩きしてくれた部分が大きいと思うんですよ」と、DJ KOOは考察する。「時代もありますけど、アイドル、ボカロと、いろいろやっていくなかで、世代の違う人たちと関われたし、プロジェクトに関わることになって親に電話しましたって喜んでくれたボカロPもいました。この人たちが新しいTRFを作っていってくれるんじゃないかとも思えましたし、TRFがやってることに意義も感じられました。今までずっとa-nationやライブで、新曲ではなく、昔のヒット曲をやってきたなかで、考えることもあったんですけど、TRFは音楽をやっていく意味で常に真ん中にあって、そっからいろんなところに広げていけるって思えるようになりました」
「最近は、自分たちのTRFっていうよりも、みんなが望んでいるTRFを常に考えちゃうんです。それは、なかなかヒット曲が出ない時代にありながら、ヒット曲に恵まれたTRFとしての使命なのかもしれないです。でも、そのなかで守るところは守りながらも、進化していく。そういうスタンスでやっていけたらいいなって思いますね」と、SAMも言う。
20周年というひとつの通過点を経て、TRFはさらに先へ向かう。目標や予定は立てず、これまでやってきたように「目の前のことをちゃんとやる」。それが、次の10年、20年につながっていく。
(本紙・酒井紫野)
20日にフィナーレを迎えた『TRF 20TH Anniversary Tour』。往年のヒット曲の数々と新曲が織り交ぜられたステージは、各会場に詰めかけたオーディエンスをヒートアップさせた。そのライブ会場で販売されたツアーグッズで、ライブそのものを盛り上げるアイテムとなった「マフラータオル」を抽選で5名にプレゼントする!(係名:「trf」)
ライブ会場で買い忘れた方、ライブに行けなかった方にも、記念品として、まもなくやってくる暑い夏に大活躍しそうだ。