本田の究極PKでザックジャパンがW杯決める

 やはり本田圭佑は“持っている”男だった——。サッカーワールドカップ(W杯)アジア最終予選B組の「日本代表(ザックジャパン)vs オーストラリア代表」が4日、埼玉スタジアムで行われ、81分に先制された日本はロスタイムに本田がPKを決め1−1で引き分けた。この結果、日本は勝ち点14となり、5大会連続5度目のW杯出場を決めた。3大会連続で世界最速の決定となる。

 引き分け以上、敗れても同日に行われたオマーンvs イラク戦でイラクが敗れれば出場権獲得という絶対的有利ななかでの戦いだったが、サポーターにも楽観的な空気はなかった。

 なぜならその5日前に行われたブルガリアとのテストマッチが不安を増幅させる内容だったから。ザッケローニ監督がオプションとして何度も試してきた「3−4−3」のシステムが機能せず、0−2で敗戦。今年3月のW杯予選ヨルダン戦に続き、ザッケローニ監督就任後初めての連敗となっていたからだ。おまけに故障明けの本田は3日に帰国し合流という強行日程。長友佑都もヨルダン戦を左ひざの半月板損傷で欠場し、ブルガリア戦で途中出場したもののベストコンディションとはいえない状態とあって、不安は募るばかりだった。

 しかし本田をトップ下に据え、結果を出してきた「4−2−3−1」のシステムでスタートした日本はブルガリア戦とは見違える動きを見せる。本田が加わったことでマークが薄くなった香川真司は左サイドで何度もチャンスを演出。本田との華麗なパス回しではオーストラリアのDF陣を翻弄した。
 しかし予選突破へ、もう負けられないオーストラリアも前半から仕掛ける。FWケーヒルにロングボールを合わせ、日本ゴールを脅かす。日本戦では6試合で4得点と、ここ一番というところでケーヒルにやられてきた日本だったが、この日はDFの今野が徹底マーク。ケーヒルに仕事をさせない。それでもオーストラリアは左サイドのオアー、右からはウィルクシャーがチャンスメイク。ゴール前ではFWのクルースが顔を出し、DF陣をヒヤリとさせた。
 本田と香川もFW前田遼一やMF遠藤保仁、長友とのコンビネーションでペナルティーエリアに迫るものの、やや真ん中にこだわりすぎ、密集地帯でラストパスを通せず、なかなかフィニッシュに持ち込めない。ボールを支配しながらも、オーストラリアのカウンターとロングボールで何度かピンチも迎えるなど、もやもやした前半が終了する。

 このハーフタイムでザッケローニ監督は相手のカウンターに対して「DFラインを下げて、サイドバックの一人が残ってリスクマネジメントをするように」と指示。オーストラリアが前半飛ばしすぎ、ややガス欠状態だったこともあり、後半は日本がペースを握る。香川も中にはこだわらず縦の突破からクロスを上げ、ゴールを脅かす。59分に放ったループシュートは惜しくもバーに阻まれた。しかし得点は入らない。

 そろそろドローも脳裏をよぎり始めた79分。ザッケローニ監督は1トップの前田を下げ、DFの栗原勇蔵を投入。両サイドの内田篤人と長友が上がり、3バック、「3−4−3」の形となった。しかしその2分後に悲劇が…。左サイドを駆け上がったオアーがペナルティーエリア外から上げたクロスがそのままゴールに吸い込まれる。スタジアム中が「まさか…」とあっけにとられ、やがて悲鳴があがる。

 残された時間はわずか9分。パスを回して攻撃のポイントを探る日本だが、シュートまでには持ち込めない。85分には内田を下げ、FWハーフナー・マイクを、87分には岡崎慎司を下げMF清武弘嗣を投入し、とにかく1点を取りに行く日本。直後に清武からのパスを受けた本田が倒され、FKを得るがゴール左上へ大きく外れる。しかしなおも前に出続ける本田のシュートからコーナーキックを得たのが88分。清武のショートコーナーから本田が入れた速いクロスがマッケイの左手に当たりハンドでPKを得る。

 PKを蹴る時点で3分のロスタイムに突入しており、これがまさに最後のチャンスとなった。6万2172人の観衆が見守る中、本田が放ったキックはど真ん中。左に飛んだシュウォーツァーは懸命に右手を残そうとしたが、ボールはゴールネットを揺らし、日本が同点に追いつき、W杯出場を決めた。
 本田はPKの場面を「みなさんがかなりプレッシャーをかけてくれたので緊張していたけど、真ん中に蹴って取られたらしゃーないと思いながら蹴りました」と振り返った。そして続くコンフェデレーションカップについて「みなさんは期待していないかも知れませんが、僕は優勝するつもりでいるので、また応援してもらえるように頑張ります」と優勝宣言。

 ザッケローニ監督は「わたしが日本に来て、課せられた使命は、W杯出場に導くことが最低限の宿題だった。それを果たせてホッとしているが、世界を驚かすためにも今後やらなければならないことはたくさんある」と語った。さて「世界を驚かす」こととは…。

 日本代表は11日のイラク戦(ドーハ)で予選を終えると、ブラジルで開催されるコンフェデレーションカップ(15〜30日)に出場する。